第5話 名領主決定戦
夜会から一か月後。二人に、王宮から同じ日に同じ内容の呼び出し状が届いた。
『グラウスト公爵家嫡男ルシアン、およびベルナード辺境伯家嫡男カイルの領地経営の手腕を称え、国家最高の栄誉たる「聖王の盾」勲章を授与する』
ルシアンは書状を三度読み返した。
「……ベルナードの仕業だな。陛下にまで手を回したか」
カイルは使者が帰るなり、書状を机に置いた。
「ルシアン、貴様……どんな策略を使った?」
二人が恐れていたのは、勲章そのものではない。受章すれば、名君としての評判が確定してしまう。だが辞退すれば、相手だけが受け取るかもしれない。どちらも、相手に先を越されることだけは避けたかった。
授与式の日。王の間は、貴族と市民代表で埋め尽くされていた。
王は玉座から二人を見渡し、満足げに頷いた。
「そなたら二人のおかげで、王国は大いに豊かになった。ベルナード領では街道の盗賊が減り、商人の往来が増えた。グラウスト領では農業生産が伸び、飢えが減り、学校と療養所が増えた」
二人は微動だにしなかった。自分の領地が褒められるたび、隣の男が何か企んでいるのではないかと疑っていた。
「しかも、二つの領地の施策は見事に補い合っておる。片方で流通が整い、もう片方で生産が増える。聞けば、そなたらは学院では互いを高め合う好敵手だとか。美しい友情であるな」
「友情ではありません!」
二人の声が、見事に重なった。
だが王は、照れ隠しと受け取ったらしい。王の間には笑い声が広がり、やがて割れんばかりの拍手が起こった。
け取った。拒む理由を説明するには、あまりにも多くの人々が喜んでいた。




