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悪役貴族、善政で殴り合う  作者: Rien
第二部 国家危機編
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第5話 黒薔薇勲章

戦いのあとの広場に、商人、農民、役人、騎士が整列していた。


「閣下の悪の組織、ここに完成いたしました!」


ルシアンとカイルは、黙ってその列を見渡した。領民を支配しているつもりだった。商人を囲って金の流れを掌握しているつもりだった。民を甘やかして、依存させているつもりだった。


だが実際には、人々が自分たちを信じて、自分から動いてくれていた。二人が演じなくても、周囲は勝手に悪の組織を完成させていた。


二人はその事実を、正面から認めることができなかった。


「……我々の悪の組織も、ようやく形になったな」


「そうだな。少々、部下が優秀すぎるが」


周囲は感激して、さらに深く頭を下げた。


王は、すべてを知っていた。


いや、正確には「だいたい」知っていた。二人が人前で悪党を名乗るたび、その直後に領地で孤児院が増えていることを、王国一の情報網を持つ王は、とうに把握していたのである。


王は二人を王の間に呼んだ。


「そなたらは王国を救った。『救国の英雄』の称号を授けたい」


「お断りいたします。我々は悪役貴族です」


「王国を救ったのではありません。投資先を保全しただけです」


王は、ゆっくりと頷いた。


「うむ。英雄は好みではないと見える。ならば、用意してある」


侍従が捧げ持った盆には、漆黒の勲章が載っていた。黒い薔薇の意匠。その縁には、金の文字でこう刻まれている。


『王国公認 大悪党勲章』


「「感謝いたします!」」


二人の声は、これまでで一番揃っていた。目が、星のように輝いていた。


侍従長が、王の耳元でささやいた。


「陛下、よろしいのですか。国の最高勲章を、そのような名で」


「よい。あの二人が一番喜ぶ名が、これだ。二人に気を遣うのも、王の務めであろう」


授与式は、その週のうちに王都の広場で行われた。壇上で、勲章の文言が読み上げられる。


『この者らは、悪事の限りを尽くし、民を豊かにし、国を救い――』


広場は、爆笑と拍手に包まれた。

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