6. 分からないままではいられない
そこから三回目までは、妙に順調だった。
順調、という表現が正しいのかは分からない。
少なくとも大きな事故は起きなかった。
未知との遭遇もせずに無事解散した。
それだけだった。
会話の内容は、ほとんど覚えていない。
覚えているのは、穏やかな空気と、自分が失言をしていないかという恐怖だけだ。
気づけば三回会っていた。
(なぜ三回も成立した?)
嫌ではなかった。
だが、楽しんでいたかと言われると自信がない。
端末が震える。
画面を見る。
【交際継続の意思が未入力です】
理解するまで数秒かかった。
(……は?)
もう一度読む。
【交際継続の意思が未入力です】
未入力。
催促がチカチカする。
(継続……?)
三回会った。
それは事実だ。
だが、それは――
何の回数なのかが分からない。
端末は淡々と追撃してくる。
【一定回数の面会が実施されました】
【交際継続の可否を入力してください】
可否。
やめてほしい。
急にそこだけ手続きになるのはやめてほしい。
(早くしろってこと?)
事務的な文章なのに、
鳩尾をどつかれたような衝撃を受ける。
本当にやめてほしい。
(継続って何を)
会うのを続けるのか。
交際するのか。
将来を見据えるのか。
そもそも――
(私は、あの人をどう思っている?)
そこで初めて、何も答えられないことに気づいた。
穏やかな人。
礼儀正しい。
無理に踏み込まない。
それ以上が出てこない。
(私、何見てた?)
思い出されるのは、自分の失態ばかりだ。
相手のことが、ほとんど残っていない。
(最悪では?)
三回も会っておいて。
メッセージの末尾にこう書いてある。
【一定期間内に回答がない場合、自動的に見送りとなる場合があります】
見送り。
それはつまり、終わるということだ。
想像してみる。
もう会わない。
通知も来ない。
名前も見ない。
胸の奥が、少しだけざわついた。
理由は分からない。
嫌だとも言えない。
平気だとも言えない。
ただ、落ち着かない。
(どうすればいいの)
好きでもない。
嫌いでもない。
分からない。
だが、終わるのは――
(困る)
理由は説明できない。
端末を握りしめる。
はい/いいえ。
たった二つの選択肢が、異様に重い。
しばらく固まったあと、私は恥も外聞も捨てた。
泣きの四回目のお茶会を、申し入れたのだ。




