表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙に放り出されたくないので婚活したら、うっかりプロポーズした  作者: サク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

7. 大胆すぎるはじめの一歩を

「分からないんです」


四回目のお茶会を申し入れておいてこれである。


何を言っているのか、自分でも分からない。

だが口は止まらない。


彼が静かにこちらを見る。

沈黙のまま、続きを待っている。


「三回会って、嫌ではなかったです。でも楽しかったかって聞かれると、正直よく分からなくて」


指先が覚束ない。

触れているはずのカップの感触が、自分のものではないように遠い。


「何を考えればいいのかも分からなくて。継続って何なのかも分からなくて。好きとかそういうのも全然分からなくて」


言葉が崩れていく。


「でも――」


喉が詰まる。


胸の奥が強く締めつけられる。


「……このまま会えなくなるのは、困る気がしていて」


言ったあと、言葉がどこにも着地しない。


三回も会っておきながら、何も考えていなかった。

流されるまま時間だけが過ぎた。

答えを出さないまま、今日を迎えてしまった。


向き合うべきだったのに。

判断するべきだったのに。


曖昧にしていたのは私だ。

逃げていたのも私だ。


その重さだけが胸の中で渦を巻く。


「……そうですか」


彼の声は穏やかだった。


責める響きはない。

それが余計につらい。


「無理をさせてしまったなら、申し訳ありません」


その一言で、内側の均衡が崩れた。


違う。


謝るべきは私だ。

何も決めなかった私だ。

何も示さなかった私だ。


このまま終わるなら、それは当然の帰結だ。


だが。


それでも。


終わらせたくない。


胸の奥が大きく揺れる。


挽回しなければ。


何か言わなければ。

誤解を解かなければ。

ちゃんと考えていると伝えなければ。


思考が一気に回り始める。


まず謝罪。

それから理由の説明。

続けたい意思の表明。

順序を間違えるな。

言葉を選べ。

失敗するな。


口を開く。


「――」


だが出てきた言葉は、準備したものとはまったく違った。


「……結婚してください!」


空気が凍りついた。


自分の耳を疑う。


今、何を言った。


求めていたのは弁明であり、謝罪であり、意思表示だったはずだ。

なぜ最終段階を飛び越えた。


挽回どころか状況を悪化させている。


彼は完全に固まっている。


当然である。


沈黙が落ちる。


重い。

痛い。

逃げ場がない。


店内の音が遠くなる。

食器の触れ合う音だけが妙に大きい。


時間がどれだけ進んでいるのか分からない。

自分の呼吸がやけにうるさい。


撤回したい。

だが、今さら何を言っても取り繕いにはならない。


完全な事故だ。


ようやく彼が動いた。


「……まず、交際から始めましょう」


落ち着いた声だった。

驚きはあっても、拒絶はない。


終わらない。


「……はい」


反射だった。


少なくとも、ここから始まるらしい。

よりにもよってこの始まり方で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ