闘技大会 その2
商業組合の会議室。
初めて入る建物だが、この建物も街の広場に面したところにある。広場の周りには、ギルド本部、憲兵本部、市役所などの大きな建物が並んでいるが、商業組合というのもそういった街に関係するような仕事をしているところなのだろうか。
会議室には人間が16人も集まっている。知っているのはエルナ、レブラン、カイだけだ。
他の13人は、商業組合の人間が3人、エルナのような出版社の人間が2人、レブランと同じギルド本部の人間が2人、カイのような剣士が2人、憲兵本部の人間が1人、市役所の人間が2人、それと魔物の研究をしている学者が1人だ。名前も紹介されたが一度聞いただけでは覚えられない。
同じところから来た人間は並んで座っており、私はカイの隣の椅子というか椅子の上に置かれた木の箱の上に座っている。この並びからすると、私は剣士としてここにいるということか。
「揃ったようですし、始めますか」
商業組合の年取った男はそういうと、隣に座っている商業組合の女の方を見る。ちょっと太ったそれほど若くはない女が立ち上がる。
「こんにちは。本日お集まりいただきましたのは、50日後に迫った収穫祭での闘技大会について説明するためです」
闘技大会は白兎亭でも噂になっている。
「出版社の皆さんからの提案から始まったものですが、街の拡大やゴブリン騒ぎ以降の人口拡大を受け、さらなる街の発展につながるものと考えています」
出版社の3人がにこやかだ。いや、商業組合と市役所の人間もにこやかだな。
「この街はご存じのようにダンジョンで知られています。これまで冒険者や剣士の皆さんのご活躍もあり街は発展してきました。街の拡大も進んでいますし、ここで更なる街の発展に向けた取り組みの一つが闘技大会です」
商業組合と市役所の人間がうなずいている。
「それでは、闘技大会について、エルナさん、よろしくお願いします」
商業組合の女がエルナの方を見る。
「はい」
エルナは返事をすると立ち上がる。
「闘技大会が目指しているものは、街を訪れる人を増やすこと、商業の発展はもちろんですが、この街に有名人を作ることです」
「有名人?」
剣士の一人が質問する。
「はい。剣士の皆さんのダンジョンでのご活躍を、魔物との戦いを、市民に見せたいんです」
エルナは質問した剣士の方を見ながら説明する。
「つまり、俺たち剣士を見世物にしようってことか?」
さっき質問した剣士の隣に座っている剣士がいう。なんか不機嫌な感じだな。
「皆さんは、様々な依頼を受けて仕事をし報酬を受け取っています。市民の前で魔物を倒すのも、その仕事の一つと考えていただければ、と思います」
「報酬はどうなる?」
カイが質問する。剣士が順に質問しているようだが、私も何か質問しないといけないのだろうか。
「報酬は、闘技場の入場料や大会を支援する会社からの資金を元に支払われます」
入場料、支援、資金、よくわからない言葉だ。
「金額は戦いの難易度や注目度によって決める予定です」
商業組合の女が説明を追加する。
「大会でのご活躍は私たちの出版物でも大きく取り上げます。強い剣士さんを一目見ようと大会を見に来る方も増えると思いますよ」
エルナがさらに説明する。
「それに、有名になれば大会やみなさんへの支援も集まりますから、より活動もしやすくなるでしょうし、この街を訪れる人が増えれば街の発展にもつながります」
剣士の男らがうなずいているところを見ると納得したのだろうか。
「で、その戦う魔物についてだが」
学者が立ち上がる。顎の髭が特徴的な男だ。年を取っているが、老人というには若いか。
「まずは大サソリの相手をしてもらいたい。大サソリは繁殖方法も確立済みでな。すでに手に負えないほどの大きさのものが8匹もいるのだ」
「ダンジョンに捕獲に行くという話があったが?」
剣士の一人が学者に質問する。
「闘技大会の人気が出て、今後も続くならそういう依頼も出るだろう」
学者がこたえる。
「闘技大会の相手は大サソリだけなのか?」
「同じ相手だけだと、見る方も飽きるんじゃないか?」
「大サソリは見た目は強そうだが、大して苦労せず倒せるぞ」
「ゴブリンはいないのか。でかいのがいるだろ」
剣士は戦う相手が気になるようだ。大サソリは私も相手にしたことはあるがそれほど苦労はしなかった。カイは一撃で倒していたくらいだ。
「大サソリは育つのもはやいし、1人で10匹くらい相手にしてもらえば見る方も飽きることはないだろう」
楽しそうな表情の学者。
「それと、大サソリの他に、クリムゾン・毒ムカデは卵から繁殖できている。火蜥蜴ももうすぐできるはずだ」
満足そうにうなずく剣士ら。そういえば、毒ムカデは苦労したな。
「ムカデは動きも速いし、塀を乗り越えてしまうのではないかな」
これはカイ。
「そうだな。動きは速いし広場だと追いつけないかもしれない」
「一対一で戦うのか?」
「観客席に逃げ込まれた場合の対策は?」
剣士から次々と質問が出てくる。
「そのあたりは、警備を担当する憲兵本部の方々との打ち合わせの場を設けます」
商業組合の女がこたえる。
「あと、闘技大会への参加者募集を始めます。応募多数の場合は予選会を行うんですが、その方法についても別途打ち合わせの場を設けます」
これはエルナ。
「予選?」
「はい。剣術の練習で木刀を使うことがあると思うんですけど、木刀を使った模擬戦のようなものを考えています。まだ、どう勝負をつけるとかのルールはないようなので、そのあたりを明確にして競技として確立できれば、きっと大人気になりますよ」
「剣士の皆さん、どうですか? 市民の前で魔物と戦うというのは?」
エルナが剣士の方を見る。
顔を見合わせる3人の剣士。私の方を見ている剣士は誰もいないが。
「そうだな。まあ、興味深いな」
一番年上の剣士がいう。他の剣士もうなずいている。
「確かに、試す価値はありそうだ」
もう一人の剣士も関心があるようだ。
「木刀を使った予選も興味深い」
これはカイ。
3人の剣士が発言したことになるな。私も何かいわなくては。
「私は、興味はないな」




