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視点、レティーシャ(メイド)→ルーナ→マリア(母)
ルーナが兄を必死で起こしている頃、一階玄関では…
「お帰りなさいませ旦那様、奥様」
「レティーシャ悪かったね、こんな時間に出迎えさせて」
カツカツとホールに足音を響かせる影が2つ。
この家の主人であり、ルーナの両親
レイン=フェルト・レィリレース様とマリア=フェルト・レィリレース様
「いいえ。レティーシャはお二人の無事のお帰り、大変嬉しゅう御座いますから」
「ウフフッ、レティーシャったら相変わらずなんだから」
「そんなことより、レティーシャ」
「はい」
隠しきれない喜びが、旦那様の声に含まれているのがよく分かる。
使用人の目がなければ、お嬢様の部屋へ今すぐにでも駆けていきたいのだろう。
レイン様は、一人娘のルーナ様をそれはそれは可愛がっている。
それこそ、目にいれても痛くない程に溺愛しているのだ。
年若くして、フェルト・レィリレース家に婿に入ったため、見た目はそこそこ板に付いてきたが、その幼い見た目のためか、7年たった今でも未だに威厳が…。
レイン様はとても童顔だ。
お嬢様と並ぶと、よく言っても年の離れた兄妹にしか見えない。
その童顔故に侮られる事も多いが、レイン様は能力が十二分にあるのだから、勿体ないの一言に尽きる
まぁ、それを微笑ましく(鼻息が荒いが…)奥様が見ているのだから、使用人である私達は何も言えないのだが…
「それで、私達の天使は部屋で寝ているのかな?」
「…あの、旦那様。その事なんですが…」
あのお二人を、全てをお嬢様に任せるのは流石に可哀想だ。
少し、ほんの少しだけレティーシャが口添えしておきます…
**********
「ふー、やっとぬけだせた」
私は兄様のガッシリホールドを何とか解除し、ベットの上に座っていた。
次はベットから降りて自分の部屋に帰るだけなのだが、このベットは私が一人で降りるには高いのだ。
いつもは兄様に降ろして貰っているのだが、如何せん今は私の横で夢の中だ。
…全く役に立たない。
「いっそ、とびおりる…?」
3歳にしては身長が極端に小さい私は、約80㎝程しかない。
1m越のこのベットは、私にはもう大きなモンスターでしかない。
それに、Hp10しかない私がここからジャンプして無傷でいられる確率は何だか限りなく0に近い気がしてしょうがない。
…確実にケガをする気がする。
「うん、それはなしだな」
この部屋でケガまでしてみろ、兄様達が父様に消される。
そして、その後に私達一家も…。
うん、笑えない…
「あーーー、もうっ!にいさま、にいさまったら!
ヴァンにいさま、ヴォルにいさまもおきてくださいーーー!!」
結局私には、兄様達を起こす選択肢しか残されていないのだ。
**********
「あらあら、じゃあルーナちゃんはヴァンちゃんとヴォルちゃんと?」
「はい。お止めできずに申し訳御座いません」
レティーシャは申し訳ないと私の前で深く腰を折った。
私の叱咤を待っているのだろうか、いつもより顔色が大分悪い。
しかし私は、私達が家を開けた時点でこうなることは薄々予想は出来ていたので、そこまでの驚きはなかった。
唯一驚いたのは、ルーナちゃんが駄々をこねて兄達を逆に困らせたという事だ。
…絶対、ルーナちゃんの方があの兄弟に丸め込まれてると思ってたのに
「あらあら、レティーシャったらいいのよ~。頭を上げて頂戴?
ルーナちゃんはレインに似て可愛いものね。ヴァンちゃんとヴォルちゃんが断れないのも無理ないわぁ。それに、将来の予行演習だと思えば。ねぇ、あなた?」
「いやいや、駄目だろう?!」
「あらっ、だっていつかは…」
「いつかは、ね。でも今じゃない!」
レティーシャの方をチラッと見ると、レインは小声でこう続けた。
「…それに、ルーナは一人娘なんだよ?お国にお嫁には出せないんだからあの二人には渡せないだろ?!」
「そうかしら?あの子達ならルーナの為にお家を捨てるんではなくって?」
「…だ、だとしてもっ!」
私の夫レインは些か、いや重度の子煩悩だ。
それもこれも、私とレインの良いところを足して割ったような愛娘は親の欲目を差し引いても、とても可愛らしく育っている。
きっと将来は、それはそれは美しく育ち、国の宝となるのは確実だろう。(もし、ルーナが可愛くなくとも、レインは変わらず子供を愛してくれていただろうが)
現に、ルーナには、3歳になったばかりだというのに縁談の話もチラホラ出て来ているほどだ。
今はまだ早すぎると言って、レインがほぼ全て握り潰し……断っているが、ルーナにレインが言うところの悪い虫が、それこそ大漁につくのも時間の問題だろう。
「あらあら。でもあなたにはあの子達預かるときに、再三注意しましたよね?」
「…この変な預かりも貴族の義務だって言うんだろ?」
「はい。それに、国王からの要望でルーナには本当の兄妹としてと…。兄妹が仲良く一緒に寝ていても両親は怒りませんわよ、ね…?」
「…」
「それに、一緒に寝たいと言ったのはあの子の方なのでしょう?なら、兄達には妹のお世話が出来たことのお礼を言いませんとね?」
レインが断れなかった案件は幾つかある。
その一つが今、家に居る王子達だ。
貴族からしたら、王族からの婚姻の打診はそれこそ、喉から手が出るほどに欲しいものなのだが、
家のルーナは病弱スキル持ちだ。
王族に嫁ぐのはかなりのリスクもある。
それもこれも王族は子を成すという絶対的な義務があるからして、病弱スキルを理由にその打診を断っていたのだ。
子供を成さない王配がどんなに風当たりが強いかなど、既に分かりきっているから。
王子達なら、側室など持たないだろうが、可愛い一人娘をわざわざ悪環境に送り込みたくはないと言うのが本心だ。
…が、国王にごり押しされて現在に至っているのが現状だ。
その事実をも、レインはあまり良く思っていない。
勿論、私も。
いくら王様も息子達に頼まれたからって、私達が受け入れるように『王令』まで出すなんて思わないじゃない?
「…分かったよ。レティーシャ当たって悪かった」
「いっ、いえ、そんな…!」
「うふふっ、素直になれるあなたはやっぱり素敵だわ~」
「…子供扱いは止めてくれって言ってるだろう、マリア」
「うふふっ、ごめんなさいね?」
「…それで、レティーシャ。ルーナに会いたいんだけど」
「今はお休みになられていますが…」
「寝顔だけでも良いよ。それなら良いんだろマリア?」
「えぇ。私もルーナちゃんのお顔が早く見たいのは同じですもの」
その言葉に同意して、私は愛する夫の腕をとり愛娘に会いに行く。
一週間振りに会うルーナは、一体どんな顔をするだろうか?
今から楽しみで仕方ない。




