13 今日に限って
それは、まだ夜が明ける少し前の事。
昨日兄様達に言い負かされた私は、少し、いや、かなり焦っていた。
(もうこの際腕枕でも、抱き枕でも何でもこいっていうのよ。)
そう昨日の晩開き直った私は、ヴォル兄様に腕枕をされ、ヴァン兄様に抱き枕として使われていた。
動けない-っと最初こそ思っていたが、今はもうなれたもの。
三つ子かっ!と突っ込みたくなるようなシンクロ率で、寝返りだってうてるようになっている。
…って、そんな事言ってる場合じゃないのだ。
「にいさま、そろそろおきてください」
「……んー?」
「にいさま、あさになってしまいます!」
「…………んっ」
んっ、んんー、など息を漏らすが全く起きる気配がない兄様達。
ちょっと、ちょっと、寝る前の昨日の約束は一体どこ行っちゃったんですか?!
もうっ、最悪起きなくっても良いんで私だけでも離して下さい!
…それにしても、何だこの腕力は??
兄様、実は起きてるんじゃないですか?!
そう疑いたくなるようなこの拘束具合。ちょっと、ちょっといつもは私より二人とも早起きでしょーに!
「にいさまっ、はやくおきないと、とうさまたちがかえってきちゃいますよ!」
何故、私が二人を必死に起こそうとしているかと言うと、話は昨日の晩に遡る…
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「じゃあ、父さん達が帰ってくる前にルーナの事は部屋に送ってやるよ」
「そんなことしなくっても、わたしがひとりでねればいいのでは?」
「それはダメ。僕達末端冷え症だから、ルーナが居ないと寒くって寝られない」
「…にいさまたち、8さいですよね?」
「ルーナは子供体温で本当温かいよ。僕、毎晩熟睡だもん」
「そういや、俺も。ルーナと一緒に寝てからは寒くって目覚めることないわ」
いやいやいや、あなた達も十分子供ですよ!
というか、私の事湯タンポとして使わないで下さいよ!!
「いままでと、おなじにもどるとおもえばいいじゃないですか」
今は、三人同じ部屋に寝ているが、ここは元々ヴァン兄様の部屋だ。
因みに、ヴォル兄様の部屋は隣にちゃんとある
「…ルーナ、人間は一度知った幸福はそうそう手離せないんだよ?」
「そうそう」
そうそう、じゃないんですよ!
今は私も3歳ですから良いですけど、これからの事を考えると状況は変わってくるんですよ。
いやね、これからもずっと一緒に寝ようねとか、そんな事言われた訳じゃないですけど、こういう事はきちんとしておかないとですね?
じゃなきゃ、この兄弟は幾つになっても私と一緒に寝たがりますよ。
それこそ年頃になっても、兄妹じゃないと私に言ってからも。
えっ?
流石にそんな事ないと思うでしょ?それが、あるんです。
彼らの性格を考えると、外堀から埋められて逃げ場を無くして、パクり。
ああぁっ、恐ろしい…!
こんな可愛い顔の二人が…
二人の将来が私はとことん不安ですよ。
っと、話が逸れてしまったけど、私が兄様達をこんなにも起こそうとしているのは、父様の設定を知っているから。
昨日、レティーシャと兄様が話していたように父であるレインは、一人娘の私を溺愛している。
そりゃあもう、目に入れても痛くない程。
まだまだ先の話だが、私に来た縁談の申し入れの手紙を笑顔で握り潰すっと言う場面もあるほどにだ。
それほどまでに溺愛している娘が、他の男(まだ子供だが)と同じ布団で寝ている場面に遭遇したら…
普通だったら微笑ましい位だろうが、父様は違う。
それこそレティーシャが言っていたように発狂するだろう。
普通の家の子供なら多少発狂しても良い。いや、あまり良くはないがまぁ良い。
しかし、今家に居るのは現在の国王の息子であり、次期国王の二人だ。
流石にフェルト・レィリレース家に息子として預かってるとはいえ、他人は他人。
王家に家の父様の失態をあまり見せる訳にはいかない訳。
うん、貴族って難しい。
それに、私に不利になりそうなことは、どんな些細な事でも早いうちに芽を摘んでおかないと。
「にいさまっ、いいかげんおきてくださいよ!」
「んんっ、ルーナ、まだ早いよ…」
「はやくありません!ほらっ、ヴォルにいさまもおきてください!」
「んーーー?」
「ほらっ、にいさまおきておきて!」
本当、今日に限って何て寝起きの悪さかしら?
早くしないと父様達が帰ってきちゃうじゃない!!
「にいさま、はーやーくー!」
…
……
………ギギギギギギギッ
『お帰りなさいませ、旦那様、奥様』
波乱の足音がすぐそこまで迫っていることを、私はまだ知らない…




