10 新たな試練
それから、また兄様達にルーナはLv上げなんてする必要はない。というのを永遠と力説された。
それこそ夕飯の時間までも。
また、何で兄様達が一緒の時は部屋から出られたのかと聞いてみたら、理由は簡単。
『何かあっても直ぐに回復魔法をかけられるから』
『僕らが一緒ならどこへでも行けるよ』だそうだ。
そして、この発言の裏を読めなかった私は、今まさに窮地に立たされている。
「ルーナ、いい加減に観念しろー」
「イヤです!わたしはひとりでもだいじょうぶですから」
「ほら、我儘言わないの」
「にいさまっ、ふくを、ふくをきてくださいっ!!」
「ルーナも着てないだろ?」
「ヴァンにいさまにぬがされたんですっ!にいさまはちかくにこないでください!」
そう、『お風呂』だ。
30歳の精神から見てみれば、8歳児の裸などどうってことない。
それに今は、兄様達は腰に手拭いを巻いているし…
だが、3歳児のルーナの体に入ってしまった私は、どうやら違うらしい。
自分を見られるのも、兄様達を見るのも何だか気恥ずかしいのだ。
今現在の私の体なんて、まさに『幼児体型』そのものだ。
寸胴でお腹がプックリ。短い手足にと、見られて困ること等何一つ無いのだが…。
「昨日も一緒に入ったろ?本当、今日のルーナは変だな」
「ヴォルにいさまもこなくっていいです。わたしのことはほうっておいていいです」
「こりゃ、ご機嫌斜めだな」
うずくまる私の上で頭を抱える兄様達。
このままなすすべもなく、2人でお風呂に入れば良いと思います。
それを心から望みます…!
「ほらっ、ルーナ。あと5秒以内に観念しないと強制連行するよ」
「……」
「5」
「……」
「4・3・2…」
「……」
「1」
「0。はい、時間切れー」
「!?」
「強制連行しまーす」
後ろから『抱っこ』でヴァン兄様に抱えられる私。
ちょっ、反則でしょー!?
「にっ、にいさまっ?!」
「その日のバイ菌はその日のうちに。今頭洗ってあげるからね」
「いやゃーっ!」
「はいはい」
**********
そして気がつくと湯船の中、私はヴォル兄様に抱えられ回復魔法をかけられていた。
兄様が回復魔法を使う度、湯船をキラキラとした光が包んでとても豪勢なお風呂だなぁっと、ぼーっとした頭で考える。
なぜこんな状態かと言うと、私が風呂場で転け頭を打ったから。
頭を打った瞬間、目の前が真っ暗になり『Hp1 状態危篤』と頭の中に自分のステータスが流れてきた。
…はい。私、危なく死にかけました。
別に逃げ出そうとして走ったとか、兄様達から距離を置こうとしたとか、そんなことは決してない。
…本当だってば。
「あのっ、にいさま」
「何?まだどこか痛い??」
「いいえ、もうだいじょうぶです。ですからそんなにかいふくしてもらわなくっても…」
ヴァン兄様の話だと、私は3回目の回復でやっと目を覚ましたと言う。
まぁ、正確には2人合わせて6回目なのだが。
(目を覚ました時、私に手をかざして回復魔法を唱える兄様達と目があった)
いくら回復しても目覚めない私に兄様達は焦ったのだろう、魔法の苦手なヴァン兄様まで呪文を紡いでいたときは心底驚いた。
そして今、ヴァン兄様は念のため父様に連絡をいれると言って出ていった。
転けただけで大事になってしまった…。
「ルーナは、やっぱり一人にしておけないな」
「かえすことばもございません…」
「明日からは素直に入ること。いいね?」
「……」
「ルーナ、返事は?」
「……はい。」
それから私は、ヴァン兄様が戻ってくるまでHpが戻っているにも関わらず、黙々と回復され続けるのであった。




