新しい修行
短めですが!!次回ついに七聖英雄お披露目です!!1
報酬として閲覧を許された魔法書は、アトラに新しい魔法だけを教えてくれたわけではなかった。
むしろ大きかったのは、今まで記憶を頼りに使っていた魔法の中の、理論が知れたことだった。
魔女が使っていた魔法を見て、覚えて、同じようにマナを動かす。これまでのアトラは、それだけで魔法を形にしてきた。けれど魔法書を読み進めるほど、感覚で済ませていた部分に理由がつき、曖昧だった手順が少しずつ整理されていった。
だから最初は、書かれていた基礎を、そのまま実践に落とし込んだ。
依頼を受け、魔法を使い、身体強化を維持しながら別の術式を展開する。今まで当たり前のようにやっていた動きを、魔法書の理論に照らし合わせながら一つずつ確かめていく。
すると、できていると思っていたものの中に、まだ整えられる余地が見えてきた。
戦闘中、身体強化を維持しながら攻撃魔法や防御魔法を展開することは、今までもできていた。けれど理論を知った後では、その並列操作をもっと滑らかにできるのではないかと思えた。
その精度を上げるには、戦闘中だけ意識するのでは足りない。
そう考えて思いついたのが、薄い身体強化を日常的に維持する修行だった。
始めたばかりの頃は、出力を薄く保つだけでも思っていた以上に難しかった。
ふとした拍子に出力が跳ねて、曲がり角で壁にぶつかりそうになったこともある。逆に慎重になりすぎて、気づいたら消えてしまっていたり。
それでも依頼や日常の中で続けているうちに、少しずつ感覚は馴染んでいった。
「だいぶ慣れてきたわね、これ!」
安定型ダンジョンの調査依頼を終え、出口へ向かう通路で姉さんが弾んだ声を上げた。
今日、僕たちは一度も身体強化を切っていない。戦闘中は出力を上げ、日常生活では薄く保つ、最初の頃ならどこかで流れが乱れていたはずなのに、今は会話をしながらでも自然に保てている。
「うん。今日はかなり安定してたと思う」
「でしょ? これでもう壁に激突しなくていいわね!」
姉さんは嬉しそうに笑った。
魔法書で試したい魔法をいくつも見つけてから、姉さんもこの修行にすぐ食いついた。新しい魔法を扱うにしても、今まで使っていた魔法をもっと上手く使うにしても、マナの操作精度が高い事に越したことはない。
◇
そんな日々を、一週間ほど過ごした頃。
本部から回された依頼を終えて戻ってきた僕たちは、入口で待っていた職員に声をかけられた。
「アトラさん、キャトラさん。ジュードさんがお呼びです」
姉さんと顔を見合わせる。
職員の表情を見る限り、ただの報告確認ではなさそうだった。
部屋の中には、ジュードさんがいた。
机の上には、いくつもの資料が重ねられている。その前に立つジュードさんは、僕たちを見ると静かに口を開いた。
「戻ってきて早々悪いな」
「七聖英雄全員が、各地の調査から帰還した」
リィナとアリシアさん以外の、この世界で最も強い人たち。
その全員が、グランバルドへ戻ってきた。
「灰燐窟の件を含め、各地で確認された異常について情報を合わせる。お前たちにも同席してもらう」
灰燐窟で見たものが、そこで何に繋がるのか。
その答えを聞くため、僕たちはジュードさんの後に続いた。




