Sランク冒険者 ニック
仕事と両立しながら書いてる人たちすごすぎでしょ
次は久々の戦闘回!!!
馬車を降りたところで、リィナたちとは別れた。
「じゃあ、あたしたちはこっちっス!」
「また後で会うかもしれませんね」
リィナが大きく手を振り、アリシアさんは静かに会釈する。
「会議、頑張ってください」
「昇格戦も、どうかご無理はなさらず」
「うん」
「そっちもね」
そう返すと、二人は人混みの中へ消えていった。
残されたのは、僕と姉さんだけだ。
「じゃ、あたしたちはギルド本部ね」
「うん」
城塞都市の中央へ伸びる大通りは、王都より幅が広い。その代わり、歩いている人たちの雰囲気が違った。冒険者が多い。誰もが自然に武器を携え、大きな傷跡を残している人までいる。
「ほんとに、戦う人が集まる街って感じ」
「だね」
案内板に従って進むと、やがてひときわ大きな建物が見えてきた。
「あれか」
石造りの重厚な建物だった。王都のギルドより明らかに大きい。外には武装した冒険者たちが出入りしていて、ただ立っているだけでも空気が張っている。
「本部ってだけあるわね」
「ちょっと緊張するな……」
「今さら?」
姉さんが笑う。
けれど扉をくぐると、その気持ちも少し分かった。中は広い。受付の数も多いし、行き交う人の足取りにも迷いがない。騒がしさはあるのに、王都のギルドよりずっと引き締まっていた。
受付で名前を告げると、すぐに奥へ通される。
「昇格戦の件で伺ったアトラとキャトラです」
「把握しております。こちらへどうぞ」
案内された部屋には、年配の男が一人いた。役人に近い雰囲気だけど、机の向こうからこちらを見る目は鋭い。
「来たか」
「はい」
「王都からの通達は受けている。ヴァルフェニア討伐、青晶洞での件、それらを踏まえての特例だ」
机の上の書類を軽く叩く。
「通常、Aランク昇格には相応の実績と盗賊討伐等、段階を踏む必要がある。だが今回は、すでに十分それに値すると判断した」
「それで特例ってことですね」
「そうだ」
頷いてから、男は一枚の紙を取り上げる。
「本来であれば、指定魔獣の討伐か、あるいは本部規定の模擬戦になる。だが今回は特例につき、試験内容も変更される」
「変更?」
「対人戦だ」
姉さんが少し口元を上げた。
「そっちの方が分かりやすくていいわ」
「相手は本部選定の試験官役。二対一で行う」
「二対一……」
そこで一拍置かれる。
「試験官はSランク冒険者だ」
「いいじゃない!!!」
「Sランクですか?」
姉さんは置いといて、さすがに聞き返した。
男は顔色一つ変えない。
「あぁ。ヴァルフェニアを倒したやつらだからな。並のAランクでは相手にならんと思った」
「昇格の条件は?」
「Aランクに相応しいかどうかだ。実力、判断、連携、生存力……総合して判断する」
「つまり、そいつに認めさせればいいってこと?」
「端的に言えばそうだ」
姉さんはむしろ面白そうだった。
「余裕ね!」
「姉さん……」
「Sランクが相手なら、ちょっと本気出してもいいでしょ」
そういう問題だろうか。
「試験は明日だ。」
「明日?」
思ったより早い。
「早い方がいいだろ?」
「それもそうか……」
「詳しい条件は、試験官本人から聞け」
その時だった。部屋の外で足音が止まる。
次いで扉が開いた。
「お、この子たちが特例組?」
年はレオンさんより少し上くらいだろうか。長身で、無駄のない体つき。片方は細めでもう片方は少し幅広い剣を2本背に負った男だった。
男は部屋の中を見回し、最後に僕たちへ目を向ける。
「若いねぇ。ほんとにヴァルフェニア倒しちゃったの?」
「……倒しました」
「あたしたち二人でね」
姉さんが答えると、男は目を丸くしたあと、楽しそうに笑った。
「ははっ、そりゃすげえわ。受けてよかったわ、この仕事」
「ニック」
机の向こうからジュードさんが低く呼ぶ。
「分かってるって」
軽く手を振ってから、またこっちを見る。
「俺が今回の試験官役、ニック。Sランク冒険者だ」
「アトラです」
「キャトラよ」
名乗り返すと、ニックさんは頷いた。
「いやでもさ、あの不死炎鳥倒せるなら、試験なしでAランクでやれる実力は十分だろうって、俺は思ってるけどね?」
「じゃあ、試験いらないんじゃない?」
「それは駄目だ。」
姉さんの言葉を、ジュードさんが即座に切る。
「ですよね」
「だよねえ」
ニックさんは苦笑した。
「まあ、せっかくなら面白そうだし、俺が試験官役に立候補したんだ」
「立候補?」
「あぁ。ヴァルフェニア倒した特例組って聞いて、ちょっと戦ってみたくなってさ」
そこで少しだけ笑みを深くする。
「試験官やるからには手は抜けないぞ?」
「抜かなくていいわよ」
「お、いいねぇ」
「その代わり、つまんない試験にはしないでね」
「そこは安心していいよ。俺も退屈なのは嫌いだし」
ニックさんの目が光る。
「じゃ、明日はよろしくな」
「……はい」
「ええ、よろしく」
ニックさんは満足そうに頷いて、壁際へ寄りかかった。
「話は以上だ」
ジュードさんが書類を机へ戻す。
「今日は体を休めておけ。長旅の疲れが残ったままで来られても困る」
「わかりました」
本部を出たあと、そのまま近くの宿を取った。
荷物を下ろして、ようやく一息つく。
「明日が楽しみだわ!」
「姉さんはいつも通りだね」
「アトラもでしょ?」
楽しそうに笑う姉さんを見て、少しだけ肩の力が抜けた。
明日になれば、いよいよ昇格戦が始まる。




