表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/37

いざグランバルドへ

昨日更新できなくてごめんなさい。あと下書きに残したままだったの忘れてました。

モチベ上げてくぞおおおおおおお


王都を出たその日は、まだ見慣れた景色が続いていた。広い街道の両脇には草原が広がり、荷を積んだ馬車や旅人の姿も多い。けれど日を追うごとに、周囲の様子は少しずつ変わっていく。




 先へ行くほど荒れが目立つようになった。石畳はところどころ欠け、土の道と混じり、馬車の揺れも大きくなる。窓の外に見える木々は減り、代わりに岩肌の目立つ地形が増えていった。




 それでも、人の流れは案外絶えない。




 荷を運ぶ商隊。旅装の一団。僕たちと同じようにどこかを目指して進む馬車。その多くに、剣や槍を帯びた人影が混じっていた。




「やっぱりみんな冒険者を連れてるんですね」




 向かいに座るアリシアさんが頷く。




「ええ。護衛をつけるのが当たり前ですから。出発地が目的地から離れるほど、それは顕著ですね」


「なるほど……」


「へぇー」




 姉さんは窓の外を見たまま相槌を打つ。




 その隣で、リィナがぐったりと背もたれに体を預けていた。




「でも、何も起きないっスねえ」


「ほんとよね」


「起きない方がいいんです」


「それは分かるっスよ? 分かるっスけど」




 リィナが身を乗り出す。




「せっかく四人いるんスよ? 一回くらい、こう……道中で魔獣とか出てきてもよくないっスか?」


「よくないです」


「あたしたち4人なら一瞬で片付けられると思うわよ?」


「だとしてもです」


「キャトラちゃんと一緒に戦いたいっス!!」


「あたしもリィナと肩を並べて戦ってみたいわ!」


「だめです」




 アリシアさんがぴしゃりと言う。




「はぁ。物騒なことばかり言わないでください」


「でも退屈っス」


「退屈ね」


「意気投合しないでください」




 姉さんとリィナが顔を見合わせて吹き出した。




 三日目の夕方、小さな村で一泊した。




 宿場というには少し小さい。けれど広場には旅人の馬車が何台も止まり、武器を帯びた人影もちらほら見える。




「ここにも冒険者がいるんですね」


「辺境寄りの村には、こうして各地から冒険者が回されるんです」




 アリシアさんが答える。




「週替わりで派遣される依頼があって、危険な時期ほど人数も増えます。魔獣の討伐だけじゃなく、周辺の見回りや村の護衛も兼ねています」


「へぇ……」


「その方が街道に人を立たせるより効率的なんですね」


「そういうことです」




 広場の隅では、槍を立てかけた連中が食事を取っていた。王都で見かける冒険者より装備が重々しい。それだけで土地の空気が違うと分かる。




「料理は普通っスね」


「リィナは何を期待してたの」


「もっとこう、前線メシみたいなやつっス」


「前線メシって何」


「知らないっス!」




 知らないらしい。




 その夜は村で休み、翌朝また出発した。




 四日目、五日目と進むうちに、街道の空気はさらに変わっていった。すれ違う馬車の数は減る。代わりに、城塞都市へ向かうらしい冒険者の姿が増えた。4人組、5人組、それにもっと大きなパーティ。みんな無駄口は少なく、周囲への警戒を怠らない。




「なんか、王都の冒険者と雰囲気違うね」




 窓の外を見ながらそう呟くと、リィナが頷いた。




「こっちは実戦寄りっスからね。王都は人も多いし、仕事の幅も広いっスけど、グランバルドに集まるのはもっと露骨っスよ」


「露骨?」


「戦うための冒険者って顔してる人が多いってことっス」


「顔で分かるもの?」


「分かるっス」


「ほんとに?」


「たぶん」




 たぶんだった。




「でも、そういう人が多いのは本当です」




 アリシアさんが引き取る。




「城塞都市は本部があるだけでなく、周辺の依頼も危険度が高いですから。自然と、そういう者が集まります」


「Aランクの昇格戦を受ける場所としては、ちょうどいいってことか」


「ええ」




 それからもしばらく馬車に揺られた。何度か休憩を挟み、小さな集落を通り過ぎ、また進む。空はよく晴れているのに、風だけが少しずつ乾いていく。




 六日目を越えたあたりから、姉さんとリィナの退屈はかなり限界に来ていた。




「ほんとに、何も起きないわね」


「ここまで来ると逆にびっくりっス」


「もういっそ、自分から何か探しに行く?」


「やめてください」


「冗談よ」


「半分くらい本気だったでしょ」


「どうかしら」




 どうかしら、じゃないと思う。




「リィナもそう思うでしょ?」


「思うっス!」


「仲良くしないでください」


「アーちゃんまた怒ってるッス!」


「怒っていません」


「怒ってるわね」


「怒ってません」




 七日目の昼を少し過ぎた頃だった。




「そろそろ見えてきますよ」




 アリシアさんの声に顔を上げる。




 前方へ目を向ける。霞んだ影がみえはじめ、さらに進むとその輪郭ははっきりしていく。




「……でか」


「何回みても大きいっス!」




 リィナが嬉しそうに身を乗り出す。






 高い。王都の外壁も十分大きいと思っていたのに、それとはまた別の風格がある。厚く、重く、近づくほど空を塞いでくるみたいだった。壁の上には人影が並び、その奥にはさらに塔が覗いている。




「これが、グランバルド……」


「ほんとに城塞って感じね」




 姉さんも窓の外から目を離していなかった。




 馬車の列は、そのまま大きな門へ向かって進んでいく。手前には検問があり、騎士たちが通行証と荷を確認していた。並んでいるのは僕たちだけじゃない。商隊も旅人も、みんな同じように順番を待っている。




 ようやく番が回ってきて、馬車がゆっくり門をくぐる。




 石造りの建物が並ぶ広い通り。兵士の姿が多い。冒険者も多い。荷を運ぶ人、声を張る商人、武具を背負ったまま歩く者。王都より少し硬く、少し荒く、それでいて妙に活気がある。




「うわ……」


「面白そうね?」


「うん」




 思わず頷いていた。




 城塞都市グランバルド


 長い道のりの先で、ようやく辿り着いた場所




 馬車はその喧騒の中を進んでいく。Aランク昇格戦が待つ街。窓の外から、しばらく目を話せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ