決着
金、土、日は更新したいよね??だって伸びるもん!!
お待たせしました!第13話です!!技名少し凝ってみたよ??
「――影狼ッ!」
その声と同時に、リィナさんの姿がまた揺らいだ。
けれど今度は、さっきとは違う。
身体強化の出力を上げたおかげで、ギリギリで捉えられる。
踏み込みの前に沈む重心。
空気を裂く気配。
揺さぶるように散らされる視線。
(……すごい)
素直に、そう思った。
「姉さん、右に誘う!」
「了解っ!」
次は――僕と姉さんが、食らいつく番だ。
さっきまでは、僕も姉さんも近接でぶつかっていた。
でも、それじゃ押し切れない。
だったら。
「姉さん、前お願い!」
僕は一歩引いて、姉さんが前へ飛び出した。
氷華細剣。
手のひらから生み出した氷の刃を細剣みたいに握り込み、そのまま懐へ飛び込む。
近接用に圧縮された魔法刃だ。そう簡単には壊れない。
「っ!」
リィナさんが、それを拳で弾く。
――そこだ。
閃光魔法。
弾かれた氷刃の陰で、僕は光を弾けさせた。
「うわっ、眩しっ!」
リィナさんが身をひねる。
そこへ姉さんが追いすがる。
氷の細剣を握り直し、今度は真横から斬りつける。
ギィンッ!!
高い音が響いた。
またしても、リィナさんは腕を差し込み、刃筋を逸らしていた。
まともには入らない。
「まだ……!」
姉さんは止まらない。
距離が開いた瞬間、5本の炎の矢が姉さんの背後から射出される。
炎矢魔法。
細く鋭く、けれど一直線ではなく時間差をつけて放たれた。
「炎まで飛ばすッスか!」
リィナさんが笑う。
そこに、さらに僕が風を重ねた。
旋風魔法。
炎の矢に横風を絡ませる。
回転しながら、軌道をぶらし、角度が変わる。
「うわわ、避けづらいッス!」
リィナさんがそう言いながら身を沈めた、その足元へ――
風霧魔法。
薄く広げた水霧に風を絡め、まとわりつくような拘束力を持たせる。
まともに縛れるとは思っていない。
でも、体勢を崩せればそれで十分だ。
「アトラ、ナイス!」
姉さんが笑う。
次の瞬間、その指先に雷が収束した。
雷弾魔法。
打ち出し速度だけを重視した、細く鋭い雷の弾丸。
姉さんが腕を振るうと、紫電が一直線に走った。
バシッ!!
乾いた音とともに、リィナさんが拳で雷弾を弾き、マナが霧散する。
(これも相殺してくるのか……!)
思わず息を呑む。
「まだまだッス!」
リィナさんはそのまま踏み込んでくる。
でも、こっちも止まらない。
赤、青、緑、様々な色の魔法が拳とぶつかり、マナの残滓となり、見ている人たちを魅了する。
「お、おい……」
「なんで新人が、あそこまで魔力操作うめぇんだよ……」
「身体強化しながら複合属性まで使ってるぞ!?」
「しかも、連携前提で魔法を組み立ててやがる……!」
「普通、片方だけでも十分おかしいだろ……!」
ざわめきが、今度は明らかな驚きに変わる。
僕たちが連携の密度を上げれば上げるほど、
その全部を受けて、流して、ずらして、笑っている。
「ふふっ……」
リィナさんが、打ち合いの最中に笑った。
「ほんと、最高ッスねぇ……!」
その目が、さっきよりずっと熱を帯びている。
楽しくて仕方ない。
そんな顔だった。
「……っ!」
姉さんの氷刃が頬を掠める。
僕の風刃が袖を裂く。
さらにその先、僕が置いた霧の壁へ追い込まれた瞬間、
「今っ!」
「うん!」
姉さんの足元で、紫電が弾けた。
バチッ――!
石床を蹴った足元から雷が走り、姉さんの身体を一気に前へ押し出す。
その瞬間、僕も掌を振り抜いた。
追風魔法。
姉さんの背を押すように吹く追い風が、踏み込みをさらに半歩だけ伸ばす。
「っ……!」
リィナさんが反応する。
でも、今度は完全には間に合わなかった。
ギィン――ッ!
氷刃が、リィナさんの肩口を浅く裂く。
「……おっ」
初めて、リィナさんに確かな一撃が入った。
観客席から、どよめきが爆ぜた。
「おい、今……!」
「入ったぞ!?」
「拳聖に一撃入れたのか!?」
「マジかよ……!」
僕は息を詰める。
姉さんも、目を見開いたまま笑っていた。
「アトラ!」
「うん!」
まだ届ききってはいない。
でも、確かに今のは入った。
リィナさんは下がった先で、肩口に触れた。
――そして。
口元が、ぐっと吊り上がった。
今までで一番楽しそうで獰猛な笑みだった。
「……いいッスね」
その声は、弾んでいた。
心底嬉しそうにそう言ってから、リィナさんは拳を握り直す。
「じゃあ――」
「こっちも、ギアを上げるッス」
「……っ」
僕は小さく息を呑む。
さっきまでの第一脈動でも、十分すぎるほど速かった。
あれについていくには、こっちももう一段、力を見せるしかない。
できれば、それはまだ避けたかったけど――
隣で、姉さんがにやっと笑った。
「いいじゃない」
氷の細剣をくるりと回し、構え直す。
「こっちだって、まだまだこれからよ」
「姉さん」
「分かってるわ。一瞬で決めましょ。」
その言葉に、僕は頷いた。
やるなら、一瞬一撃で決めるしかない。
姉さんと何度も練習した、あの魔法を使うしか――
リィナさんが、嬉しそうに目を細めた。
「そういうの、待ってたッス」
一歩、踏み込もうとした――その時だった。
「――そこまでだ」
低く、よく通る声が修練場に落ちた。
ぴたり、と空気が止まる。
「……え?」
姉さんが、不満そうに声を漏らした。
「なんでよ、これからじゃない」
「そうッスよ! めちゃくちゃいいところだったじゃないッスか!」
リィナさんまで抗議する。
キースさんは額を押さえながら、深く息を吐いた。
「いいから、よく見ろ」
そう言って顎で示したのは、修練場を覆う結界だった。
僕はそちらへ目を向ける。
そして、息を呑んだ。
「……ひび?」
結界の表面に、細い亀裂がいくつも走っていた。
一本や二本じゃない。
さっきまで見えていなかっただけで、もう限界に近い。
「これ以上やられたら、結界ごと吹っ飛ぶ」
キースさんが淡々と言う。
「そうなりゃ修練場だけじゃ済まねぇ。ギルドごと被害が出る」
観客席がざわっと揺れた。
「マジかよ……」
「そこまでだったのか……」
「いや、結界張ってこれって、おかしいだろ……」
冒険者たちも模擬戦に釘付けになっていたようで気づいていなかったらしい。
姉さんが唇を尖らせる。
「むぅ……」
リィナさんも、心底残念そうに肩を落とした。
「もっと戦いたいっスけどねぇ……」
「無理だ。」
キースさんが即答する。
…
しばしの沈黙のあと、姉さんが大きく息を吐いた。
「……まあ、ギルド吹っ飛ばすのはまずいわよねぇ」
「そうッスねぇ……」
リィナさんも名残惜しそうに頷く。
「じゃあ、今回は引き分けってことでいいっスか!」
その一言に、修練場がどっと沸いた。
「引き分け!?」
「拳聖と!?」
「新人が!?」
「いやもう意味わかんねぇって!」
興奮とどよめきが、さっきまでとは比べものにならない勢いで広がっていく。
そんな中で、姉さんは氷の剣を消して、リィナさんに向かって笑った。
「楽しかったわ!」
「こっちこそッス!」
リィナさんがぱっと顔を明るくする。
「めちゃくちゃ良かったッス! 2人とも最高だったッス!」
「リィナこそ!!まだまだ全然本気じゃないじゃない!」
「ウヘヘ、お2人こそまだまだ余裕ありそうッスけどね!」
「七聖英雄ってほんっとに強いのね。あたし達もまだまだだわ!」
きゃっきゃと話し始めた二人を見ながら、僕は小さく息を吐いた。
さっきまで本気でぶつかり合っていたのに、もうこんな調子だ。
でも――
その横顔は、二人とも本当に楽しそうだった。
出先でちょっと編集できないので帰ったら手直しします。




