↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

怖かったのか

「それで、坂入さんとは仲良くしているのかい?」

「はい!って言っても、仕事は仕事ですから、駄目な事は駄目だ、って言います!それが、編集者としての仕事だと思ってるので、恋人だからって、贔屓しちゃいけないと思うんです。」

「そうだね、その通りだ。その言葉が無かったら、本格的に坂入さんの編集になる前に、それを降りてもらう事になっていただろうね。でも……。そうだね、長年の想いが伝わった、と言うのは嬉しい事だね。坂崎君、君は素直で良い子だから、きっと坂入さんも想いに応えたいと思ったんだろうね。」

「あはは……。そうですかね?僕、それなりにひねくれてると思いますけど……。」

 悠介と浩介が付き合う、という話になってから一週間、素直に吉野にその事を伝えた浩介は、吉野から課題を出されていた。

 それは「編集者としての矜持を取るか、それとも人間として恋人を優先するか」どちらかを選べ、という課題だった。

 浩介は、その答え如何で悠介との仕事的なかかわり方が変わってくるだろう、と正しく理解していた、だからこそ、自分がやりたいと願っていた、編集としての道を選んだ、という話。

「坂崎君はとても素直な子だよ、私から見たら、だから他の人が何と言うかはわからないけれどね。さ、そろそろ一人前として活動を始めるんだから、他の作家さんの担当も考えないとね。坂入さんだけの担当、ではいられない事はわかっているね?」

「はい、勿論です!」

 浩介は、そろそろ研修が終わり、一人前の編集としての道を行く事になる、そうなった場合、今までは研修として悠介の作品にだけ携わっていたが、それが多人数の編集として関わっていく事になる、悠介を特別視していたら、という事は、浩介が一番よくわかっていた。

 だからこそ、悠介の編集でもありたいから、と浩介は特別視しない事を決めた、それは悠介の為にもならない、私情を挟んで編集に携わる事を、悠介は望んでいないだろう、と浩介はわかっていた、だから、それをしようとはしなかった。

「それじゃあ、私の担当の作家さんを何名か預けるかな。勿論、私の様にわざわざ出向いて、という事はしなくても大丈夫だからね?あれは私の宗教であって、仕事ではないのだから、坂崎君が無茶をして真似る事はない、何、皆さんわかって下さる、私がおかしいだけだといつも言っているしね、それは作家さん達の中では共通項だろう。」

「そんな事無いと思うんですけどね……。吉野さんがおっしゃられてる、作家さんにとって作品は子供だから、預かるのには面と向かって、って言うのは、素晴らしい信念だと思います。確かに、それを真似るのは難しいですし、僕は多分そう言う事をしないんでしょうけど……。でも、吉野さんのお考えが、作家さんにとっては助かる事だ、って悠介も言ってましたよ❓吉野さんで二人目だから、まだ担当編集って言う人種の事は理解しきれてないけど、でも吉野さんがそうする理由もわかる気がする、って。言ってましたよ?」

「そう言ってもらえると、嬉しいけれどね。私は先代に似た思考を持っていたというだけで、全員が全員そうするべきだとも思っていないんだよ。それに、私の個人的な出張は自費だからね、経費で落ちる範囲では落としてくれるけれど、それ以上をしたいのであれば、自費で行け、という通達を受けたのが何年前だったかな。」

「それでも、作家の生み出した子供だから、ですよね。吉野さんのお気持ち、は皆さん理解されているんじゃないでしょうかね?基本的に人間関係が苦手な悠介でさえ、吉野さんとの仕事は心地が良いって言ってましたしね。あの悠介がそう言うんだから、吉野さんは凄い先輩ですよ。」

「そうかい?そう言ってくれると嬉しいな。」

 そんな話をしながら、吉野は浩介に誰を任せて、誰を引き継いでもらうか、他の編集から引き継がせる相手はいるか、そう言った類の調整をしている。

 浩介は浩介で、これから先担当になっていくのであろう作家達の作品の原文に目を通していて、これをどうすればより良い作品にしていけるのか、どうやってプレゼンすれば編集会議を通して出版に持っていけるか、それを考えていた。


「ふー……。」

 浩介と付き合い始めた、って言っても、俺の普段の生活はそこまで変化はなかった、って言うか、まだ一週間しか経ってないんだから、そんなに劇的な変化をする程の時間を過ごしていない、が正解かな。

 不摂生はやめようね、って言う話を浩介にされて、俺の朝飯のルーティーンなインスタントラーメンとバナナ、って言う組み合わせから、バナナとグラノーラとヨーグルト、それにゆで卵を一つ、って言う風にし始めてから、少し腹持ちが良くなったんだか悪くなったんだか、ただ、今までより胃腸の調子が少し良くなった気はする、ちょっと胃が痛い、って言う事がなくなってきた、それが朝飯を変えたからなのか、それとも別の理由なのか、はわからない。

「……。」

 今は編集さんに原稿を渡して、それが赤ペンで帰ってくる前に、別作品の書き始めに入ってる。

 今編集に出してるのが、前編後編の二部構成になる予定で、前編を提出した訳だけど、そこまでに関しては、過去に書いた物事のリテイク、だったからそんなに時間もかからなかったけど、ここから先は、まっさらな状態から書き始めて、前編と矛盾が発生しない様に、って言うケアも含めてやっていかないといけない、その為に編集さんがついてるっていうか、編集さん達も読んで赤ペンを入れてくれるから、それに対するケアをすれば良いんだろうけど、俺の信条として、最低限の修正で済ませたいって言う感情がある、最低限の修正って言うのは、作品に関しては妥協をしない、作品に関しては他者の手をあまり入れたくない、って言う意思表示でもある、編集さんを信頼してたとしても、校正さんを信頼していたとしても、そこに関しては妥協したくない、言い回しから文章のリテイクから、俺は自分自身の想いを伝える為に作品を書いてるんだから、そこに茶々をいれられるのは、些か嫌ではある。

 些か、って言うのは方便と言うか、基本的に絶対に嫌だ位には拘りが強い方だったんだけど、それは園枝さんが担当だった二年間でへし折られた、抵抗はしてたけど、あの人がいなかったら、今でも俺は拘りで我儘を言ってた、困るタイプの作家だったんだろうし、そこに関しては、園枝さんに感謝しなくもない。

「ふー……。」

 今日は煙草を変えてみた、ジタンカポラルって言う、黒煙草に位置する煙草、普段吸ってるハイライトとは趣がだいぶん違う煙草なんだけど、とあるアニメの主人公が吸ってるって言うもんで、そのアニメ自体は俺が生まれる前からやってたんだけど、それが気になって一回吸ってみたら、意外と美味かった、って言う事で、たまに吸ってる。

 元々は安煙草だったゴールデンバットを吸ってて、それが両切り煙草だった頃、から吸ってたんだけど、何年か前に、旧三級品の特別税率が撤廃されちゃって、それからすぐに廃版になった、それ以来、ハイライトを吸ってる。

 煙草の値段も、ここ何十年かで倍以上になった、俺が吸い始めてから十年ちょっとでも、百五十円から二百円くらいは上がってる、それだけ税金が必要とされてるんだろうけど、ヘビースモーカーである俺からしたら、たまったもんじゃない、とは思う。

 煙草に掛ける金額、って言うのも、俺が吸い始めた頃から比べると、大体三倍くらいはなった、吸う本数の問題もあるけど、まぎれもなく税金が上がった結果ではある。

 今じゃ加熱式たばこ、が主流?なのかな?って言う噂は聞いた事がある、ヤニが壁に染みつかない、匂いが部屋にこべりつかない、紙巻きたばこに比べて健康的に害がない、なんて言われて、それを信じて吸ってる人達がいるんだろうけど、俺から言わせるのなら、紙巻きたばこじゃない煙草は煙草じゃない、とも思ってる、古いので言うとシーシャだとか、パイプを吸ってる人なんて今どきいるんだろうか、噂程度にパイプを売ってる店がある、とは聞いた事があるけど、実際足を運んだ事が無ければ、興味もないからいかない、それが俺のスタンスだ。

「ふあぁ……。」

 煙草の火を消して、そろそろ夕飯時って言うか、今日は浩介と一緒に飯を食いに行く日だ。

 車を出して東京の方まで出ようか?って聞いたら、お酒を飲むかもしれないし、そうなった場合俺一人が飲めないのは悲しいから、って言ってたから、電車で東京の方に出る予定だ。

 あれから一週間、一応土日を一緒に過ごしたり、毎日なにがしかの連絡を取ってたりするけど、未だに慣れない、慣れないって言うか、そう言う関係値になった事が信じられない、夢か何かでも見てて、目が覚めたら全てが幻だった、って言われた方がまだ現実味がある、と思う位、現実味のない現状だった。

「煙草はっと。」

 浩介が気を使って、喫煙できる場所を選んでくれるらしい、東京の方って、もう禁煙が進んでて喫煙所もほとんど残ってなさそうなイメージがあるけど、でもまだ吸える場所がある、って言うのは、有難い話だ。

 そろそろ二月になる、冬の終わりは近いけど、春の訪れはまだ遠い、そんな気温だ。

「行くか。」

 デスクトップをシャットダウンして、着替えを済ませて、煙草と家の鍵とスマホを持って、家を出る。

 ジタンカポラルを持っていこうか、なんて思ってたら、普段使ってる煙草ケースには入らないもんで、ポケットにそのまま入れて、ぐしゃっとならない様に気を付けないとだ、でも、ハイライトと違ってハードケースだし、大丈夫かな?

 兎にも角にも、浩介の仕事終わりからちょっと時間が経つか経たないか位に着く様に、と思って、寒空の下家を出る。


「悠介!待った?」

「いや、今来た所だよ。」

 上野駅の浅草口で待ち合わせをして、そこから少し行った所にある店に行こうって言う話だった、浩介がそう言うのに詳しくて、外食には拘りがあるんだ、って言ってた、だから、デートプランは浩介に任せてある。

「悠介、バーにはいくんでしょう?でも、ゲイバーって行った事ある?」

「行った事はないな、ゲイだっていう自覚はずっとあったつもりだけど、そう言う所には縁が無くてな。」

 ゲイバーって言うのは、俺達みたいなゲイが集まる居酒屋って言うか、簡易的なバーって言うイメージ自体はあった、そう言う噂を聞いたこと自体はあった、でも、俺自身が他人との縁を云々でそう言う場に行った事がなかった。

「浩介はバーにはいくのか?」

「クラシックなバーって行った事ないかも、それこそゲイバーにはよく顔を出すけど、クラシックなバーって、どうやって行けばいいのかがわからないから。」

「じゃあ、今日行ってみるか?」

「良いの?」

「俺の行きつけの場所で良ければな。」

「嬉しいな。」

 浩介にリードされて飯を食いに行くんだから、これ位はしておかないと、後々禍根を残しそうな気もする、俺が人間関係を構築するのが苦手なりに構築した相手、って言うか、常連として顔を覚えてもらってるバーが、丁度上野にあったから、飯の後そこに行こう、って言う話をする。

「ご飯、悠介は気に入ってくれるかな?」

「ん、豆以外だったら基本的に何でも美味いって食うよ。」

「あの頃と変わらないんだね、悠介は本当に。あの頃も、納豆が苦手だ、って言って、僕に寄こしてきてたよね。」

「そうだったか?」

「うん、僕は納豆が好きだったから良かったけど、嫌いだったらどうしようか、って思ってたよ?」

「なんだか申し訳ない事をしてたんだな、俺は……。」

 浩介と手を繋ぎながら、先週の土日を一緒に過ごして、手を繋ぐ事には少し慣れた、泊っていくか?って聞いたら、まだ俺のペースもあるだろうし、って言って断られたから、泊まりのデート、って言うのはまだだけど、手を繋ぐ事には慣れてきた。

「こっちこっち。」

「はいよ。」

 ちょっと路地の方に入って行って、浩介が行った事があるって言うレストランに入る、幸いな事にドレスコードはないみたいで、俺がパーカーに上着って言う格好でも、別段気にする人もいないみたいだ。


「美味しかったね。」

「そうだな、美味かった。」

 浩介が行った事があるというレストランでの食事を終えて、今度は悠介が行きつけだ、というクラシックバーに向かった二人、バーテンダーは悠介の顔なじみのマスターで、浩介の事を説明するまでもなく、どういった関係値なのか、を理解した様子だった。

 そもそも、十年間通い続けている悠介が、誰かを連れてくるという事はそう言う事だろう、とマスターは感じていた、浩介との距離も含めて、悠介が恋人を作ったのだろう、という事はすぐに理解していた。

「この前いらっしゃった青年が、こうして想い人を連れて来るとは、私も年を取ったようですな。老齢には些か眩く見えますよ?」

「あはは……。俺自身、恋人なんて出来るとも思ってませんでしたから、いつか恋人が出来たらここに連れていらっしゃい、を実践する事になるとは思わなかったですよ。」

「それはずっと仰られてましたな。それでお連れ様、お名前を拝聴しても?」

「あ、坂崎浩介です!悠介とは、施設が一緒で……。」

「左様でしたか、そう言えば悠介君は施設の出身だ、と仰られていらっしゃった、その縁でしたかな?」

「はい、今は出版社で悠介の担当編集をしてます。」

 マスターはカクテルをシェイクしながら、浩介に話を振っていた。

 悠介君、とマスターが呼ぶ理由は、親子以上に年が離れている事と、苗字で呼ばれる事をあまり好まない、という悠介からの依頼だった、こういう場でまで、そう言う呼ばれ方をしたくない、と悠介が飲みながらぼやいて以来、マスターは「悠介君」と悠介の事を呼んでいた。

 何故苗字で呼ばれる事を拒むのか、と言われたら、悠介からしたら、思い入れがまったくないから、が正解なのだろう、吉野からは坂入さんと呼ばれている悠介だったが、それ以外の人間からは名前で呼ばれたい、友好の証だとかそう言う話ではなく、「そう呼ばれたくない」が強いのだろう。

「さ、こちらチャイナグリーンで。」

「ありがとうございます。」

「お連れ様はモスコミュールでよろしかったですかね?」

「はい、どんなお酒かって、気になるので!」

 今はまだ開店直後で、他の客の姿は見えない、バーテンが奥で控えてこそいるが、まだマスターだけで回している、他のバーテンは休憩しながら、混んでくるのを待っているのだろう、マスターの拘り、という事なのだろうが、マスターが基本的に出て、手が足りない時にバーテンに手伝ってもらう、それがこの店のやり方だ、とは悠介は認識していた。

「それじゃ、乾杯。」

「うん、乾杯。」

 悠介は煙草に火を点けて、普段とは違う煙草なジタンカポラルとカクテルの組み合わせを楽しんで、浩介は初めて体験するバーという場所に、目を輝かせていた。

「悠介君、普段と煙草が違いますかね?」

「さすがマスター、そう言う事にはすぐに気づくって言う所、相変わらず凄いですね、ジタンカポラルですよ、いつもはハイライトなので、趣がだいぶ違いますかね。」

「ジタンカポラル、悠介君の年代で吸われる方がいる事には驚きですな、私のような老齢の吸うものだと思っていましたし、吸われる方も妙齢の方が多いですからね。そうですな、妙齢の方にとっては、懐かしい銘柄だとも言えるでしょう、私の師匠である先代のマスターも、ジタンカポラルを吸われていましたね。」

「そうだったんですか、じゃあ、マスターにとっても懐かしい銘柄なんですかね?」

「はい、師匠の事はとても慕っていましたので。私がこの店に立ち続ける意味、も先代の事が忘れられないから、かもしれませんな。」

 酒の席、まだ他の客は来ていないから、悠介とマスターは世間話をしている、そんな悠介の横顔を見ながら、浩介は少しだけ疑問を持っていた。

「ねぇ悠介、悠介はさ、対人関係を築くのがとても苦手だ、って言ってたよね?でも吉野さんとも、マスターさんとも、僕とだって、普通にお話出来てるよ?」

「苦手って言うのは、そういう意味じゃないんだよ、浩介。友達を作れない、一定以上の関係値になれない、そういう意味なんだ。俺が避けてたって言うのもあるかな、そうだな……。例えば、俺は豆が苦手だ、浩介が覚えてる通り、納豆が苦手でたまらなかった。それと一緒でな、人間関係を構築するのが苦手、って言うのは、ある意味生理的な言葉なんだよ。だから、一定値までの関係値なら出来る、大人になってから出来る様になった、が正解かも知れないけどな、って言っても、吉野さんとマスター位だよ、こうして話が出来るのは。」

「そうなんだ……。じゃあ、マスターは悠介のお友達じゃないの?僕からしたら、そう言うやり取りって、友達がするものだと思うんだけど……。」

「どうなんだろうな?どうでしょう、マスター?店と客の関係だと俺は思ってますけど、どうですかね?」

 マスターは、薄暗がりの中で少し困った様な顔をしている、悠介からしたら、そうではないという回答が返ってくる、客と店の関係だという答えが返ってくると思っている、浩介からしたら、友達だという答えが返ってくると思っている、だから、その答えを濁したところで難しい、と。

 そんなマスターの心情を知ってかしらずか、悠介は煙草の煙を吐きながら、少しだけ悩んでいた。

 実際の所、友人だとは思っていなかったマスターの事を、友人関係とし手見た事はなかった、それが正解なのだろう、ただ、浩介からしたら、それをするのは友人の役割で、そう言った関係値の事を友人と呼ぶのだろう、と。

 ただ、悠介としては、友人であるつもりはなかった、それが正しい感情だろう。

「そうですな、友人とも、そうではないともとれる関係かもしれませんな。悠介君がここに通い出してからかれこれ十年になるでしょうかね、覚えていますとも、担当編集に連れてこられて、それはそれは嫌そうな表情をされていて、しかしカクテルを飲むと嬉しそうにされていて、何処か不思議な感覚になったものです、あの時の悠介君の表情と言うのは、後にも先にも見た事が在りませんので、そうですな、そう言った意味合いでは、友人関係だと思っていた節はあるかもしれない、とは思いますな。ただ、それも客商売、それがバーテンダーとして覚えておかなければならない最低限の事、でもありますので、そう言った意味合いでは、店と客の関係値だ、と言えるのかもしれませんな。」

「どっちともとれる、って言う感じなんですかね?でも、悠介が言う程、わるい関係じゃないんじゃないかな……。」

「どうなんだろうな?あんまりマスターを困らせちゃいけないぞ❓マスターからしたら、俺も他のお客さんも、等しく客なんだ。覚えてるから友達だ、って言う認識は、客商売としては致命的だと思うからな。」

 次のカクテルを頼みながら、悠介は浩介を窘めた、浩介からしたら、そういう場に来た事がないのと、ゲイバーでは皆友達感覚でいる、という経験から、バーテンダーとゲイバーのママ、を同じ類の人間だと認識して、それで友達だと発言したのだろうが、悠介からしたら、それでマスターを困らせるのは本意ではないのだろうし、今の関係が気に入っている、という感情もあってか、浩介にそこまでは踏み込んでほしくなさそうにも見えなくはない。

 ただ、浩介がちらりと悠介の方を見ると、ずっと見た事が無かった、悠介の笑顔、と言うのが、とても素敵に見えた、普段見せない、普段は笑う事はあっても笑顔になる事はない悠介が、酒が入って笑っている表情、それが、眩く見えたのだろう。


「それじゃ、また来ます。」

「飲みすぎにはお気をつけて下され、まだまだ冷えておりますし、体にも気を付けて下さいね。」

「ご馳走様でした!」

 浩介が行きつけのバーに連れて行ってくれるって事で、他のお客さんが来た位でバーを出て、浩介の案内で歩いて行く。

 上野の中から動かない、って言う話では合って、浅草で夕飯を食べた後上野に移動して、って言う事をした後だから、ある意味有難いっちゃ有難い、でも、どんなバーなのか、については気になってるけど内緒だって言われた。

 ゲイバー、っていう場所、自分がそういった類の人間である事、男に欲情する男、である事に関してはわかってたけど、そういうコミュニティに顔を出した事が無かったから、ある意味新線と言えば新鮮で、緊張すると言えば緊張する。

「悠介、ママ見たらびっくりするかなぁ。」

「どうなんだろうな?ママって、マスターの事だろ?ゲイバーじゃマスターって言わないのか。」

「そうだね、皆ママって言ってる、どこどこさんのママ、とかそういう感じかな?スナックに近い感じだよー、って、僕が行き始めた頃に言ってたかな。」

「スナックか、俺は苦手な類だったけど、浩介が楽しいって言ってるなら、楽しいんだろうな。」

 スナックが苦手、って言うよりは、スナックに連れていかれた時の感覚が苦手、って言うのはあった、園枝さんが担当だった頃、場末のスナックに連れていかれて、ママさんが気に入ってるんだか何だか、自分の自慢を延々とし続けて、そんな事をしてた人と一緒に言った場所、だったから、苦手だって言う感情が強い。

 ただ、ゲイバーとスナックはまた違うだろう、って言う予感はあった、浩介が楽しんでるって事はもう少しライトって言うべきか、フランクな場所なんだろな、って。

「こっちこっち!」

「はいはい。」

 上野駅から少し歩いた所、にあるそのバーは、名前的にはバーなのかどうなのかが判断しづらい場所だった、ただ、会員制バーって書いてあって、成る程そう言う避け方をして世間との距離を取ってるんだな、って言うのは参考になる。

「こんばんはー!ママ、やってますかー?」

「あら浩ちゃんいらっしゃい!そちらの方はご新規さん?浩ちゃんがお友達を連れてくるのなんて、珍しいねぇ。」

「えっと、恋人出来たんです!だから、連れてきたくて!」

「あらあらあら!浩ちゃんに恋人が出来たのかい?そりゃ皆みたいだろうねぇ、浩ちゃんの色恋で来てた人もたくさんいるからねぇ。あの誰にも靡かない浩ちゃんが靡いた相手、って言うのは、そちらの人だね?」

「初めまして、坂入悠介です。」

 バーに入って、カウンター席だけの店、って言うのはさっき行ってた俺が通ってるバーと一緒なんだけど、置いてる酒の種類が違う、そもそもカクテルを作る目的のアルコールが置いてない、基本的には焼酎がずらっと並んでる印象だ。

 そんなカウンターに立ってるママさん?は、恰幅が良くて髭が生えてて、こういう人はゲイの中ではモテる、って言われる類の人だろうな、って言うのはわかる。

 声からして五十くらいか四十後半、恐らくは老け顔って言われてて、今では童顔になった類の人、酒焼け煙草焼けしたタイプの声の持ち主が、俺の事を値踏みしてる気がする。

 周りの目線が痛いって言うか、浩介もモテるタイプなんだろうし、って言う意味で、色恋?って事は、つまりは恋人になりたい人が多いって言う意味だろうし、そういう人達からしたら、粉掛けてた子に恋人が出来て、それを連れて来たって言うのは、大きなトピックになり得るんだろうな、俺が知らない世界なだけで。

「悠介君ね、悠ちゃんって呼んでも良いかな?どうにも、フルネームで呼ぶのは堅苦しいと思っちゃうんだよ。」

「はい、大丈夫ですよ。」

 距離の近い人だなって言うか、そういう場なんだろうな、とは思うから、別段何と呼ばれたとて問題はない、それ位の許容は出来る、そこまで心が狭いわけでもない。

 と思って返事をして、端の方に空いてる咳があったから、そこに座って、こういう場に来るのが初めてだ、って言うのを改めて考える。

 ゲイバー、って呼ばれる場所があること自体は知ってた、知識として、そういう寄り合いの場がある事に関しては知ってた、ただ、俺にとっては合わないんだろうな、とも思ってたから、関わり合いになる人物の属性だと思ってなかった、それが正解だ。

 新参者二十何じゃない気配はする、浩介がいるから受け入れられてるけど、これは独りで来てたら多分つっぱねられてたんだろうと思う、そんな空気だ。

「それで、浩ちゃんはいつもので良いかな?悠ちゃんはこういう飲み屋には来た事があるかな?」

「クラシカルなバーは通ってるんですけど、こういった趣のバーは初めてですね。」

「そうかいそうかい、じゃあ、今日は浩ちゃんのボトルで飲むので良いかな?浩ちゃんはそれで良いかい?」

「はい、僕はそれで大丈夫ですよ!悠介は焼酎は飲まないんだっけ?何割りが良い?」

「割りものか……。じゃあ、オレンジジュースでお願いします。」

 酒には強い方、じゃないけど、一般的に言えば飲める方だ、焼酎は普段は飲まないけど、缶チューハイは飲む程度、って言うか、基本的に飲みたくなったらいつも行くバーに行っちゃうから、それで家では基本的に酒を飲まないって言うだけで、世間的に見たら酒飲みの類なんだろうな。

「悠ちゃん、煙草は吸うかい?」

「吸ってよければ、はい。」

「そうかいそうかい、じゃあ、灰皿これね。」

「ありがとうございます。」

 煙草の匂いはするから、煙草がすえないって事はないんだろうな、とは思ってたけど、まあ吸えるのなら有難い、と思って、煙草に火を点けて一服する、こういう一服できる場所って言うのも、年々減ってきてるし、煙草の社交場、って言うのもなくなって来たとは吉野さんが言ってたし、吸う人は少ないのかもしれない、世間的に見たらマイノリティなのかもしれないけど、でもまあ、吸える内は吸ってる、って言うのが俺の考え方だ。

「はい、オレンジジュース割りね、浩ちゃんは緑茶割りね。ん、悠ちゃん、珍しい煙草だね?俺、見た事ない煙草だよ。」

「はい、ジタンカポラルって言って、アニメか何かでアイコニックに使われてる煙草ではあるんですけど、あんまり吸ってる人はいない煙草ですね。ラッキーストライクと一緒で、黒煙草って言われる類です。普段はハイライト吸ってるんですけど、たまに気分を変える為に。」

「ジタンカポラル、へー、そんな煙草があるんだねぇ。俺も三十年位この業界にいるけど、吸ってる人を見た事がないなぁ。」

 周りの人達が、俺とママさんの会話に耳を立ててる気配がする、そう言う気配に関しては、敏感すぎる位に敏感だ、って言っても昔は気にしなかった、誰が何を思ってようが、俺には関係ない事だ、って思って生きて来たけど、社会人になって、作家になって、そう言う無関心でいられる場所って言うのは少ない、作家だって誰ともかかわらない訳じゃないから、そういう意味では、最低限そう言う事には気を使える様にならないといけない、とは思ってて、それを気にするようになってから、返って敏感になった、そんな詰まらない話だ。

 だからわかる、今この場にいる人達は、俺とママさんの一挙手一投足を気にしてる、浩介に対して粉を掛けてたからなのか、それともただ単に新参者としてどういう人間か、なのかを確認しようとしてるだけなのか、そこまではわからない、俺には人間の心までは読めない、そこまでの域には達してない、だから、場の空気から推察するしかないわけだけど、少なくとも、耳を澄まして俺達の会話を聞いてる空気はある。

「悠介、普段は違う煙草吸ってるんだっけ?」

「そうだな、ゴールデンバットがあった頃はそれを吸ってたけど、何年か前に廃盤になってな、それ以降は、ハイライトユーザーだよ。」

「ゴールデンバットだなんて、悠ちゃんは古い煙草を吸ってたんだねぇ。俺のお父さんの世代の人たちが吸ってた様な煙草だよ?あれ。」

「そうですね、俺のじいちゃん世代が吸ってたか、それ以上の方が吸う事が多かった、とは聞いた事があります。なんでそれを、って言われたら、安煙草だったから、ですかね。安煙草の中で一番うまかったのがゴールデンバットだった、って言うだけの話です。色々と試したんですけどね、俺にはあの煙が合ってたらしくて。」

「ゴールデンバットって、おじいちゃんが吸ってたなぁ。って言っても、おじいちゃんが死んじゃったの、僕が五歳の頃だったから、あんまり覚えてないけど……。でも、緑のソフトケースの煙草でしょ?名前だけは覚えてるんだ。あの煙草、なくなっちゃ手たんだね。」

「そうだな、何年か前だったか、北海道限定になって、そこから生産終了になったな。北海道限定だった頃は、紫色のソフトケースになってたりしたんだぞ?」

「そうなんだ、知らなかったなぁ。おじいちゃん、今も生きてたら吸ってたのかなぁ。天国で吸ってるのかな?どうなんだろう?」

「……。きっと、天国で煙草を楽しみながら、転生を待ってるのかもしれないな。浩介をう産み育てた御仁の父なんだ、それ位のご褒美があったとしても、誰もばちなんて与えないだろうよ。」

 浩介が、少し寂しそうな顔をする、おじいさんが吸ってたのを覚えているって事は、それだけおじいさんと仲が良かった、って言う証左にもなるだろう、それが分かったから、俺はそれ以上の事を言えなかった。

 俺の親みたく放任主義じゃなくて、ちゃんと愛されてきた家庭の出の浩介からしたら、それは懐かしくて、少し寂しい事柄にもなってくるんだろう、俺だっていっぱしの作家をやってるんだ、それ位の人間の感情の変化位はわかってる。

「悠ちゃんは詩的な言葉を使うんだね、お仕事は何をしてるんだい?浩ちゃんと一緒で、出版社の編集さんとか?」

「いえ、俺自身が作家です。僕はここにいるよ、って言う作品聞いたことありませんか?一応ドラマ化もしてたりする作品ではあるんですけども。」

「え?あれ原作君なのかい!?それは驚いた、って言うより、有名人が目の前にいるって言う認識が出来なかったなぁ。そっかそっかぁ、あのドラマ書いた人が、浩ちゃんの彼氏かぁ。それなら、皆納得するしかないんじゃないかな、だって、浩ちゃんはここに通い出してからずっと、その人と仕事をするために頑張ってる、恋心もあるけど、それ以上に恩人だから、って言ってたからねぇ。そんな人と恋人だなんて、浩ちゃんも良い人捕まえたねぇ。」

「ママ、それは言わない約束だって言ったでしょう?もう、恥かしい……。」

「浩介でも恥かしい事があるんだな、それは意外だ。」

「悠介まで……、もう!今日は飲む!」

 周りの感覚、空気が少し変わった気がする、俺が職業を明かして、浩介の反応を見るに、それをここでも言ってたんだろうな、だから、そんな相手が付き合ってるのなら、俺達の出る幕はない、って言う空気って言うのかな、そう言う感じだ。

「ママ!もう一杯下さい!」

「はいはい、浩ちゃんは飲みすぎないようにね?この前ボトル空けたばっかりなんだからね?」

「わかってますよー!」

 浩介は一気飲みして、次を注いでもらってる、ボトルって言う事は、ボトルキープって言うやつなのかな?たしか、ボトルを買い取って置いておいてもらって、それを来た時に飲む、って言うシステムだったか、何だったか。

 それなら俺があんまり飲みすぎるのは良くないな、と思って、控えめにしようかなんて考えながら、浩介とママさんのやり取りを眺める。


「もういっはい!」

「浩ちゃん、飲みすぎだよぉ?」

「いいんれすよ!ね!ゆうすけ!」

「俺はおススメは出来ないぞ?浩介は若いって言っても、肝臓が傷んじゃったら大変だし、明日が休みだからって、羽目を外しすぎるのは良くないからな。」

「んもー……。」

 一時間でボトルを一本空けた浩介が、酔いつぶれてろれつが回ってなくて、隣に座ってる俺の体にもたれかかりながら、少し黙ったと思ったらすやすやと寝息を立て始めて、寝ちゃって。

 あらま、そうなる前に帰るべきだったかな、なんて思いながら、こういう時の起こし方を知らないから、何ともしがたい。

 浩介が俺にもたれかかって寝てる、って言うこと自体は別段いやでも何でもないんだけど、ママさんにとって、飲まずに寝てる客って言うのは、迷惑じゃないかなって。

「すみません、俺が抑えさせとけば良かったですね。」

「良いんだよ、浩ちゃんはまだまだ若いんだし、お酒との付き合い方も覚えてる最中だろうからね、ここに通い始めてから四年位になるかな?でも、ずっと憧れてた人と来れて、嬉しかったんだろうねぇ。普段ならこんなに酔いつぶれるまで飲まないんだけど、まあそういう日もあるって言う事だね。悠ちゃんは次何飲む?グラス、空いてるよ?」

「じゃあ、ミルクティーを。酒は結構飲んだので、ちょっとチェイサーが欲しいですね。」

 グラスを変えてもらって、ミルクティーを入れてもらって、それを飲みながら浩介の寝息を聴く、すーすーって静かに寝息を立ててる浩介は、そう言えばうろ覚えだけど、昔からいびきはかくタイプではなかったと思う。

「悠ちゃん、悠ちゃんって、人付き合い苦手でしょ?」

「ん、藪から棒ですね、そうですよ?」

「やっぱり。人慣れしてないって言うか、なんていうんだろう、こういう場に来慣れてない人って、人付き合い苦手な人が多いんだよね。でも、悠ちゃんの小説のドラマって、人間模様が素敵だなーって思ってたんだよね。ほら、映画もやってたでしょ?あれの地上波での放送見たんだけど、義理人情に厚いって言うのかな、そう言う人が沢山出てくるから、そんな事を書いてる悠ちゃんが人付き合いが苦手って言うのはなんだか意外だねぇ。」

「あれは単なる理想やら想像の産物ですからね。だからこそ、ファンタジーとしては受けがいい、ファンタジー要素を加える事で、そう言った逃げをしたとも言えますかね。」

 逃げ、って言うよりは、俺はずっと想像で物事を言ってる、想像して、人間関係が幸だったらこう、ああだったらこう、なんていうシミュレートをずっと続けてる、ある意味、人間関係を構築するのが大の苦手なのも、壊滅的に下手くそなのも、そのシミュレートが原因なのかもしれない。

 昔からそうだった、相手の顔つき、服装、表情、顔の印象、そう言った諸々を加味して、最初からこの人はこういう人間だ、って言う風にラベリングして、それで、俺とは合わないから、って言って遠くなっていって。

 それが原因なのかもしれない、なんて浩介を見ながら思う、じゃなかったら、浩介がいくら好みだったとしても、悪感情を抱いてお終い、だったはずだから。

 まあ、吉野さんの事前の言葉があったから、何とかその偏見の目で見ずに済んだ、って言うのもあるんだろうけど、その前、根幹的に、俺は他人を判断する機能が発達しすぎてるんだか、それとも衰えてるんだか、そもそも未発達なんだか、わからないけど、ある意味「人をパッと見の情報だけで判断する」って言う事をしてきたんだろうな。

「浩ちゃんはさ、ずーっと悠ちゃんの事が好きだったんだよ。ここに通い始めた頃、まだ浩ちゃんは通信制の大学に通ってたかな、施設を出て、独りで生きていかなきゃならなくて、寂しいから仲間が欲しい、でも、お付き合いしたい人はずっと心の中にいるから、その人以外と付き合うつもりはないんだ、ってね。その相手が悠ちゃんだったとしたら、それも納得かな。浩ちゃんがこんなに安心して潰れられる相手、って言うのは、他にはいないと思うしねぇ。それに、僕はここにいるよ、の作者さんとはずっと前に一緒だった、って言ってたから。」

「浩介がそんな事を……。……、俺って、鈍感なんでしょうね。自分でも呆れる位、他人との距離感がわからないから、鈍感なふりをし続けるしかなかった、とも言い換えられるかもしれませんけど、浩介がずっと想いを寄せてくれていたのに、それに気づかないで施設を出て、それから十二年経って、まだ浩介は俺の事を好きでいてくれて。まったく、遠回りにもほどがあると思いませんか?人さまには恋愛描写で脚本を書くくらいには言ってるのに、いざ自分がそう言う目で見られてる事には気づかない、なんだか話しててあほくさくもなってきましたよ。」

「まあ、そんな事も人生の中にはあるんだろうさね。……。浩ちゃん、幸せそうだね。きっと、ずっと会いたかった悠ちゃんに出会えて、幸せなんだろうね。今までもずっと笑ってた、笑ってたんだよ、浩ちゃんは。ただね、悠ちゃん。こんな事を付き合いたてのカップルに言うのの違うのかもだけどさ。浩ちゃんは、ずっと寂しがってた、友達がじゃない、恋人がじゃない、悠ちゃんじゃないと、その穴は埋められなかったんだろうね。」

「そう言うママさんも、浩介に惚れていたか何か、って言う感じですかね?」

「そこに関してはシークレットだよ、悠ちゃん。でもね、浩ちゃんが寂しがってるのは、ずっと変わらない事実だった、生涯変わらなくて、俺が死んだ後も、浩ちゃんが生きてる限り、ずっと付きまとってるものだと思ってたんだ。でも、教の浩ちゃんは違う、幸せに満ち足りてる?っていうのかな?作家さん的にはどういうのかはわからないけどね、とっても幸せそうだよ。」

「俺に作家的表現を求められても出てきませんよ、祝福に満ちていたとしても、哀愁は必ずやってくる、ただ、その先にはきっと、幸福が待ってる、それが俺の宗教です。どんな人生だったとしても、どんな苦しい事があったとしても、必ず何処かで帳尻合わせが来る、わるい事をした人間には相応の罰が与えられて、努力をした人間には幸福が訪れる、そう信じてるから、俺はそれを書き続けてるんです。……。きっといつか、前を向いて歩いて行こう、それが俺にとってのすべて、俺にとって、作家としての坂入悠介のすべて、それが伝わった時点で、俺はもういらない、それを成せた時点で、その人の人生の色には俺は必要なくなる、そういうものなんですよ。それを悲しいとも思わない、それを虚しいとも思わない、俺にとって、俺の作品って言うのは、前を向く為に必要なパーツであればいい、それ以上でもそれ以下でもない、それだけなんです。浩介にとって、俺の作品って言うのがどういう風に映ってて、浩介にとって、俺がどんな存在だったか、についてはわかりません、俺も再会してからちょっとしか時間は経ってませんし、今では担当編集と作家って言う立ち位置でもある、それを私的に利用したら、浩介の業績にも響いてくる、だから、俺が浩介にとってどういう存在か、については熟考に熟考を重ねないといけないんでしょう。ただ、そうですね。恋人が幸せな顔をしてる、それが嬉しい事だ、とは知ってましたけど、実際にそう言われると、悪い気はしませんね。」

「素直なんだか素直じゃないんだかねぇ。嬉しい事は嬉しいって言って良いんじゃないかな?自分がいらないだなんて、そんな事を言ったら浩ちゃんは悲しむよ?」

「……。それだけ、人間との関りが少なかった、って言う事でしょうね。見てくれと目つき、表情で相手を判断して、それで勝手に関わらないでいて、俺は人間関係を構築するのが苦手だから、って逃げて。そんな人間なんですよ、俺は。だから、俺がいたとしてもいなかったとしても、前を向いてくれればそれで良い、前を向いて、きっと幸せになれるんだって、そう信じて歩いて行ってくれれば良い。俺にとって、それが俺の人生の意味なんですよ。」

「人と関わるのが怖かった、とかそう言う話かい?」

「……。怖かった、と言えば違うと言えるでしょうし、怖くなかった、と言えば嘘になるかもしれないですね。俺は、どうしても人間関係を構築するのが苦手で、って言うのはずっと思ってたことですし、それに関しては生涯変わらないんでしょう。でも、浩介みたいに、それでも見放さないでいてくれる人がいる、それでも、関わろうとしてくれる人がいる、そんな人、今まで独りもいなかったんですよ。吉野さんって言う編集さんは、仕事として関わってましたし、作品のサイン会に毎回来てくれる方もいらっしゃるにはいらっしゃったんですけどね、でも、浩介みたいに、俺を俺としてみてくれる人、俺を俺として認識し続けて、苦手だ、無理だって言っても、それでも尚関わろうとしてくれる人、って言うのがいるとは思ってもいませんでしたから。……。怖かったのかもしれませんね、人間の底を知ってるつもりになって、人間の本性を知ってるつもりになって、勝手に怯えていたのかもしれませんね。」

 浩介の頭を撫でながら、俺は今までの事を思い出す、思えば、俺は自分から壁を作ってた、って言う自覚はあったんだけど、他人の感情が透けて見えるって言うのかな、他人の勘定の機微に敏感だった方で、それに合わせる事が出来ないってずっと思ってたのかもしれない、それこそ、幼稚園時代なんかは友達がいてほしい理由が無かったから、かもしれないけど、物心ついたころから、ずっと俺は人間の底を見ようとし続けていたのかもしれない。

 それで、他人の底を知ったつもりになって、関わる価値が無いって決めつけて、それを繰り返してきたのかもしれない。

「……。浩介がいてくれなかったら、俺は孤独でも構わなかったんでしょうね。孤独でも良い、独りでも良い、小説を書いて、作品を生み出して、それで一人で死んでいく、それでいいって、ずっと思ってたんですよ。ただ浩介はそうじゃなかった、浩介は、俺と同じで家族を失っていたとしても、絆を信じ続けた、だからこそ、出版社って言う道にたどり着いた。絆があるって、ずっと信じてたんでしょう、ずっとずっと、小さな細い、か弱い絆を信じ続けて、俺を追いかけてくれていた。それが、俺にとってはどういう事なのか、ここ最近は、それを考える日々でした。浩介が俺を慕い続けてくれていた事の意味、俺と浩介が結ばれた意味、俺と浩介が再会した意味、そう言う事を考えてたんです。」

「それで、答えは出たのかい?」

「……。俺も、独りじゃ嫌だった、それが俺の出した答えでした。孤独は隣人のつもりだった、俺には、孤独が似合ってて、孤独に生きる事が正解だと、ずっと思ってました。でも、いざこうして浩介と話をして、付き合って、ってなった時、俺は独りじゃいたくなかったんだ、人と触れ合いたかったんだ、って、思い至ったんです。……。長い旅でしたよ、本当に。長い旅路を辿って、長い道を歩いて、独りで歩き続けて、最後には愛する人を見つける、なんだか、まるでそれを追い求めてたみたいに、それに焦がれてたみたいに、それが当たり前みたいに。」

「悠ちゃんは三十歳だったっけ❓小さい頃からそうだったのなら、確かに長い旅だったねぇ。ただ、俺からしたら、まだまだ未来のある若者だ、と思うけどね。」

 気が付けばミルクティーがなくなってた、俺はオレンジジュースを入れてもらって、他のお客さん達が帰った後で、俺達しかいない店内を眺める。

 今日はママさんだけが出勤らしくて、他のバーテンダー?確か、店子さん、だったかな

?はいないらしい、浩介がそんな事を行ってた気がする、今日はママ一人の営業日だから、って。

 そんな浩介は、相変わらず俺の方に寄りかかって寝てる、店が閉まる時間までには起きてほしい所だけど、起こすのはちょっと忍びない、とも思わなくはない。

 ただ、店として営業してる以上、閉店時間って言うのはあるはずだし、それまでには浩介を起こして帰らないとだ。

「ママさんは何か飲まれます?俺だけ飲んで、って言うのは忍びないですし、浩介はママに一杯!ってさっき言ってましたし、そう言うのも俺達客が出すのがこういう場のルールでしょう?」

「ん、じゃあ頂こうかな、初見さんにそう言う事を言われるのは珍しいねぇ、まあ、悠ちゃんはクラシカルなバーでは飲みなれてるんだっけ?なら、そういうシステムがあったとしてもおかしくはないのかな。」

「どっちかって言うと、無理くり連れていかれたキャバクラでそう言うシステムに出くわした、ですかね。でも、別段いやな感情でもないですよ、話を聞いてもらって、話し相手になってもらって、それが客商売をしている人なんだから、そこに対価を払うのは当たり前だと思いますから。」

「それじゃあ、一杯頂こうかな。」

「はい、どうぞ。」

 ママさんはそう言って、焼酎を緑茶で割って一口飲む、緑茶割りって言うのは、浩介もがぶがぶ飲んでたけど、おいしいんだろうか、焼酎と緑茶の組み合わせって言うのが少し想像つかなくて、飲んでみようか悩むけど、これ以上飲んだら潰れそうな気もしてる、ある程度ほろ酔いは過ぎてる位には酔ってる気がする。

「それで、悠ちゃんの昔話は、どうして施設に入ったんだい?」

「施設に入ったのは、単純に両親が事故で死んで、親戚関係もいなくて引き取り手がいなかったから、ですね。幸いな事に保険やら試算やらは没収されなかったので、施設を出てからすぐに家を立て替えて、今は実家があった場所に独り暮らしですよ。」

「ご両親が事故で……。そこに関しても、浩ちゃんと一緒なんだね。浩ちゃんは、弟君も一緒に失ってしまったって言ってたけど、悠ちゃんは兄弟なんかはいなかったのかい?」

「はい、一人っ子でした。って言っても、教育らしい事をされた覚えもなければ、必要最低限以上に育てられた覚えもないんですけどね。だから、浩介みたいに家族の絆が、って言われても、はてさてって言う感じです。」

「なんだか寂しいねぇ。」

「そうですかね?俺からしたら、それが当たり前だったから、別段何かを思う事もなく、何かを憂う訳でもなく、ですけどね。親子の愛情、って言われても、わからない人間ですよ、それはそれで悲しいのかもしれない、ですけどね、俺は、そういう形の家に生まれた、ただそれだけの話だと思ってます。」

 ミルクティーを飲みながら、浩介を何処で起こそうか、なんて考えつつ、ママさんと話をする。

 俺にとって家族って言うのは、血の繋がタだけの人達、別段特別でもなければ、特例でもない。

 ただ、浩介からしたら、大切な家族だった、って言うのは覚えてる、浩介はそれで夜泣いてたんだから、それを思い出した今、それに意味が無いとは思わないし、家族の形もそれぞれだと思うから、俺の家族の形が正解だとも思ってない。

 ただ、俺は、って言う話だ、俺の家族は、って言う話だ。

 親戚付き合いがあったわけでもない、じいちゃんばあちゃんが生きてるのか死んでるのかもわからなかった、引き取り手がいなかった俺は、だから施設に入った、ある意味、遺産相続で誰かともめなくて良かった、とまで思ってる、それ位、俺にとって血縁って言うのは何でもない関係で、両親が死んだとて心がピクリとも動かなかった、親戚がいないから、って言う理由で喪主を勤めたけど、高校生なのに可哀想ね、って言われてまったくピンとこなかった位には、血の繋がりに興味がない。

「悠ちゃんのご両親は、悠ちゃんをどう思っていたんだろうねぇ。浩ちゃんからは、悠ちゃんのご両親のことまでは聞けなかったから。」

「……。何も思ってない、が正解なんだと思います。お互い、何も思ってない、そこに愛が無ければ情もない、それが俺達親子の在り方だったんだと思いますよ。対外的に視れば、悲しいし哀れな存在なのかも知れませんけどね、それでも、俺達親子にとっては、それが当たり前で、それが在り方だったんです。俺の在り方、なんて話をし出したらきりがないですけど、俺は吹いて涙を拭い去る風で良い、その後に何が残らなかったとしても、俺という在り方を忘れられたとしても、涙さえ拭えればそれで良い、それが、俺って言う人間の存在意義だと思ってますから。」

 存在意義、なんて誰も考えやしないんだと思う、俺みたいなのにとっては必要で、誰かにとっては邪魔な思考で、多くの人にとっては不要な思考なんだと思う。

 ただ、俺は在り方を定めた、定めてしまった、適性があるからって言う理由で書き始めて、それから十五年、その中で構築された¥俺の中での答え、それがそうだった。

 最初はそんな事も考えてなかった、ただ、俺の想像する人間模様って言うのはどういうもので、俺にとって他人との関りって言うのはどういう事で、そんな事を確かめる為に書き始めた、書きたいから書いてただけ、って浩介には説明してたけど、実際の所は、小学生だった浩介にこの話は早かったかな、と思って話さなかっただけで、俺は俺なりに社会との向き合い方を確かめたくて小説を認めてた。

 結果として、俺は社会には迎合出来ない、どうしたって、俺は社会からしたら外れ者、はぐれものの類で、って言う事を自己認識して、そこからはならどうすればその考えに納得出来るか、って書いて、そこから先、プロの作家になった頃に、誰でも良い、誰かの涙を拭いされる風になれたら、って思ったんだ。

 人間関係を構築するのが苦手、名だけであって、人間が嫌いなわけでもない、人間が疎いわけでもない、だから、俺はそれをする事で、社会と向き合う道を選んだ。

 社会からはぐれて、人間という集団生活から逸脱してた俺は、それならそれなりに出来る事があるはずだろう、そんな俺だからこそ、出来る話があるはずだ、と思って、今は小説を執筆してる。

「んー……。」

「浩介、そろそろ帰る時間だよ。」

「んー、ゆうすけー。」

「はいはい。」

 浩介が体を震わせて起きて、寝ぼけ眼でこっちを見てる、俺はそろそろ閉店時間じゃないかと思って、会計を済ませて店を出よう、って浩介を席から立たせて、上着を着せる。

「それじゃ、お会計お願いします。長居してすみません、他のお客さんは帰られたのに。」

「いえいえ、まだ営業時間内だからね、またおいでよ、悠ちゃんのお話、もっと聞きたいな。」

「あはは、それはまた今度で。」

 店を出る、二月の寒い空気の中、でもアルコールが入って体が火照ってて、フラフラと歩いてる浩介と手を繋いで、一緒に歩く。

「ゆうすけー、だいすきだよー?」

「……。俺もだよ、浩介。」

「にしし、やったー!」

 駅の方に向かいながら、浩介は嬉しそうに笑う、こういう時には言えるんだろうな、普段だったら言えなさそうな言葉、気づかせてくれた浩介に対する感謝って言うのかな、そう言うのもあって、今浩介がいてくれる事が、俺にとっては嬉しい。

 それが一時の感情だったとしても、それが浩介が焦がれ続けてきた感情だったとしても、俺が今まで持ちえなかった感情だったとしても、今はそれが心地良い。

「さ、終電が行っちゃう前に帰ろう。」

「おとまりするー!」

「はいはい。」

 駅に入って、ぎりぎり終電に間に合いそうだ、終電で帰って、明日が休みで良かった。

 そんな事を考えながら、俺は浩介と一緒に家に帰る、一緒に家に帰るだなんて、ちょっと照れくさいな。


「悠介、新刊出るってよ?」

「お、会議通ったか。ありがとう、浩介と吉野さんには頭が上がらないな。」

「僕はまだまだ新人だからね、吉野さんの力の方が全然大きいよ。」

 浩介と付き合い始めてから二か月、恋人が出来た事がなければ、夜の営みも未経験だった俺は、浩介の手ほどきを受けて、童貞を卒業した。

 って言う話は余談として置いて、今日は新刊を出すかどうかの編集会議の結果が出る日、俺達作家にとっては、売れるか売れないかよりも最初に、出してもらえるか出してもらえないか、を決める大事な日だ。

 今は、浩介と出会った日に吉野さんに渡したデータの後半を書いてる、一旦別の話を挟んで、ちょっと気分転換にファンタジーを書いて、それで後半を書き上げて、それを提出して、ファンタジーの方は無料公開のウェブサイトに上げてるんだけど、そっちも書籍化しないか、って言う提案は貰ってて、ただ、俺の中では息抜きだから、って言う理由で、ちょっと保留にしてもらってるのが現在進行形だ。

「浩介もそろそろ研修終わるんじゃないか❓一人前の編集さん、になるんだろ?」

「うん、今は担当させてもらってる人がもう一人いるから、これからその人にも伝える電話しないと。じゃあ、またあとでね。」

「はいよ。」

 今では、週の半分は浩介は俺の家にいる、だから、一緒に暮らさないかっていう話もしてるんだけど、家賃の更新時期だとか、まだ研修期間を抜けてない半人前だからって言う理由で、浩介に断られてる。

 人間関係の構築が苦手、それは今でも変わらないって言うか、俺は生涯そう言い続けるんだろうけど、ママさんとは良好な関係だと思ってる、向こうが客商売として慣れてるから成り立ってる関係値だろうけど、行きつけのバーのマスターと一緒で、ある程度は話が出来る様になってきた。

 ただ、それを友達か?と問われると、ビジネスの関係、客と店の関係だろうとは思ってる、浩介が、所謂ゲイ友を紹介しようか?って言ってくれてるけど、まだ踏ん切りが付かない、浩介と一緒に居る時間は心地が良いけど、まだそう言う関係値を築ける程人間関係の苦手意識が無くなったとは驕ってない。

 って言っても、前よりも一人の時間が好きじゃなくなった、浩介と付き合い始めて、結ばれてからっていうもの、独りでいる事が当たり前だった俺の中に、誰かと過ごすっていう選択肢が出来て、それが当たり前になってきて、独りが嫌になってきて。

 終末は飲みに行く、俺の行きつけのクラシックバーに行って、そこから浩介行きつけのゲイバーに行って、それが当たり前になってきてる、この二か月、それがルーティーンになってきてる。

 明日がその日、明日が金曜日だから、浩介が気になってる店屋さんに行って、その後バーに行って、それが楽しみだ。

「ふー……。」

 ハイライトを肺に入れて、深呼吸すると、何故か懐かしい気分になる、俺の周りで煙草を吸ってる人はいなかったんだけど、なんでか懐かしい気分になる、色々と煙草遍歴はあるタイプだけど、ハイライトとゴールデンバットは、吸って香りを感じると、なんでかホッとする。

 過去に誰かが吸ってたか、それとも眉唾な話として前世の記憶か、それは覚えていないしわからないけど、でも懐かしいって言う感覚になる、それは間違いない。

「……。」

 後編、浩介が読んだ事がある前編の続き、俺の人生の結論、なんて言ったらまだまだ若輩者だろうに、って言われそうだけど、俺が三十年間生きてきて考えて、考えて考えて出した答え、としては及第点だろうな。

 それが出版されるって言う事は、それを多くの人に読んでもらうって言う事、誰かにとって、一助になれば良い、春の風の様に暖かな、それでいて夏になったら忘れてるような、そんな風になれれば良い、その考えは結局変わらなかった。

 俺の人生の結論、それがそうなんだろう、作家って言う職業になってから十年、作家になってもう十年経つのか、そんな間、ずっと考えてた結論、出したかった結論、俺の中で、ずっと決まっていた様で、決まっていなかった結論、俺の中の、最終定理。

 それはきっと、前を向いて歩いていける様に、誰かが、誰だって良い、誰かが、俺の知らない誰かが、俺の知ってる誰かが、俺の作品を読んで、俺の作品に触れて、きっとその言葉を信じて生きてくれる事、それが俺にとっての正解、最終的な倫理観だ。

 十四年前に、その結論を出してたはずだった、その結論に至ったから、俺はあの前編を書いたんだと思う、だから、心のどこかでは、俺の結論は出きっていた。

 ただ、それを認めるだけの踏ん切りがつかなかった、って言うのが正しいのかな、人間関係が苦手な俺が、誰かの為に何かを書く事が許されて良いのか、社会に迎合する為に書き続けて、最終的にどうなるのか、それをわからないまま、結論を出して良いのかがわからなかった、だから、後半を書くまで十四年かかった。

 十四年、十四年掛けて、俺が出した答えは、誰かの為に成りたいだった、誰かであって、特定の誰かじゃないのかもしれない、けど、誰かの為に成りたい、が俺の結論だった。

 それは浩介の為であり、俺自身の為であり、大多数の誰か、俺とは違う傷を負った人達、俺と同じ逃げ方をしてしまった人達、立ち向かった人達、心を塞いでしまった人達、その人達の為の、涙を拭う風になりたい。

 それが俺の結論、何を書いたとしても、ファンタジーになっても純文学だったとしても、それが、俺の変わらない結論だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。