♤ 大阪特区防衛戦 5
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『土御門 明』は畏怖していた。
『シン』が放った技『双刃陽炎』の冴、その威力に。
同じような芸当を出来る人が陰陽寮に何人いるだろう?
規模はともかく、術の効率とその精度は私やエイは彼の足元にも及ばない。
こともなげに屍を殲滅したシンは、あれほどの術を行使しても疲労を感じさせずに、今も怪異を倒すために進んでいる。
刀を使っていることから、陰陽師よりも天剣の方たちに近いのは間違いない。
しかし、天剣たちのある意味尖った強さとは違い、彼は陰陽術も使う。
底が知れない。
彼の力は今後の私たち、陰陽寮にとって必要だ。
だが、それ以上に私達は敵対してはいけない、絶対に。
そして刻まなければ、遥か高みの、その強さを。
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いよいよ、防壁を超える。
屍の第2波を短時間で退けたお陰で、第3波までの時間は稼げた。
今だにビル投擲は続いている。それを追っていけば怪異へとすぐにたどり着けるだろう。
「サラ、俺は防壁外へ攻め込む。これからは防衛隊の援護してくれ。」
『オーケー。でも、あたしの方もバレットの残弾少ないから早めにたのむよー、真。』
「ああ、なるべく早く切り上げる。」
襲ってくる屍は徐々にまた数が増えてくる。土御門の双子を前衛として応戦する。
双子は発動速度重視の呪術を積極的に連続行使し、ひたすらに怪異までの道をこじ開けていく。
なけなしの呪力を振り絞り、呪術を放って倒し、倒しきれなかった屍は身体強化術で強化した体術で打ち払い、吹き飛ばしていく。
ときには交互に、時には同時にと息の合ったコンビネーションを繰り出す。
その双子の壁を抜けてきた屍の首を右足の踵で蹴り飛ばす。首を折り飛ばしながら、その勢いを利用し刀で複数の屍を切り裂く。
斬撃から蹴りを放った足を軸足に変えて、今度は左足で屍を蹴り上げる。
足を戻す反動から納刀までを一息で済まし、呪力を練り上げ行使する。
「水相剣!夕霧!」
障害になりそうな屍の頭を呪術でまとめて跳ね飛ばす。
迎撃はこれでも必要最低限。
今は一刻も早く、怪異を倒すことを優先としている。3人の連携を持ってしも容易には抜けない。
次に瞬間、ビル投擲が俺達を狙ってくる。
まだ距離があったこともあり、ある程度見切ってから避ける。
「シンさん!」
「ああ!こっちにターゲットを変えてきたな!」
2射目が投擲される。
こちらから投射元の怪異に全速で近づいているため、弾着までの時間が短くなっていく。
回避に割くための意識が増えていく。
しかしこのまま回避に専念するために、時間を取られるわけにはいかない。
「2人とも、次からは俺が投擲を迎撃していく。任せてくれるか。」
「「はい!」」
3射目がすぐに来る。
「陽の法『隔絶』」
『隔絶』は防御の呪法。不可視の衝角を形成し、向かう暴威に相応の暴威で対抗する防御特攻の呪法。
それは飛んでくる、巨大な質量の塊を当然の如く左右に寸断する。
打ち分かれていく瓦礫の向こう。
ついに怪異の姿がみえる。
崩れたビルを掴む巨大な腕。それが繋がる先の主。
ガシャガシャと鳴り響く耳障りな音がここまで聞こえてくる。
窪んだ眼窩には数多の怨念の塊を詰め込んだような漆黒。対する体躯は生命を感じさせない漂白の白。
その怪異の名前は『餓者髑髏』
双子の緊張した雰囲気が伝わってくる。
怪異が内包する霊子の圧力は決して、その怪異の身体の大きさに必ずしも比例しない。
しかし、この怪異から発する圧力は体躯同様、十分に強大だ。
「シンさん!こいつまだ完全に顕現化していません!」
◇
怪異は霊子から生まれる。
霊子とは科学では観測できない物質だが、呪力と術式を用いて指向性を与える事によって、我々の3次元に様々な現象をおこすことができる高次元物質だ。
呪術や術式はこの高次元物質に働きかけるための出力方法を定義することだ。
霊子という色のない物質に色付ける行為とも言える。
火の術式ならば、霊子は火として振る舞い。水の術式ならば、水として形を成す。
呪力とは、その術式に必要な霊子を汲み上げる能力を言う。
ある学者は霊子のことを『アーキタイプ』と関連付けた。
これは屍災害以降に発生し始めた『怪異』の存在が関係する。
屍が人の死体をベースにするのとは違い、怪異は身体のすべてを霊子にて構成していると思われている。
そして、怪異はその発生当初から妖怪や物の怪を形を取る、それはなぜなのか。
その理由のとして、人類の集合無意識の負の部分から霊子へと指向性が与えられ、疑似生命として『怪異』が発生するのではないかという仮説だ。
空間に漂う霊子を『原型』と考えれば、集合無意識の『恐怖』の共通認識が、強力な指向性となり、複雑な呪詛が組み上がり『怪異』は誕生するというのだ。
ここでの共通認識とは妖怪であり、物の怪という古からの恐怖の象徴なのではないかと言うことだ。
屍災害という人類危機がより負の一面を強くしているのも一因と言われている。
怪異が顕現するまでに幾つかの行程が存在を確認されている。
最初は怪異の起こりを言う『基相』。
この状態では我々の次元に影響を及ぼせない。
次が3次元へ影響を及ぼし始める『宙相』
最後が完全に顕現した『箔相』
この3様相のうち『箔相』はその怪異の伝説、能力を十全に発揮し大きな被害を出しかねない。
しかし、完全に顕現しているため、こちらの呪術も大きく効果を与えられる。
だが、『宙相』は存在の一部を高次元側へと置いているため、こちらの呪術の効きが悪い。
そして、『宙相』でも3次元に大きな被害を出す怪異は非常に厄介な存在と言えた。




