♤ 大阪特区防衛戦 4
「なるほど、状況は大体理解した。」
『土御門 影』と名乗った少年から現在の状況を聞いた。
先ほどの大規模呪術は彼らが起こしたものだという。土御門家の直系ならばあの規模の呪術も納得出来る。
また、討伐隊の到着が1時間ほど掛かるということ、戦況は芳しくない事も聞いた。
「特区との契約に基づき加勢しよう。俺の名前は『真』だ。それと…、」
ゲートを飛び越えてきた乙型屍の頭がいきなり吹き飛ぶ。
「俺の仲間も狙撃で援護してくれてる。伝心を繋いでいいか?」
「はい」
双子の姉の『土御門 明』が答える。
先ほど、命の危険があったなか、戦う意思は衰えていないようだ。
「サラ、先行していた陰陽師たちと伝心をつなぐぞ。」
『オーケー。』
サラから返答をもらい、双子の陰陽師と伝心を確立する。
「『土御門 明』です。」
「『土御門 影』です。よろしくお願いします。」
『2人とも見えてるよー。あたしは『見上 サラーサ』。サラでいいよー。』
「自己紹介は済んだな。まずは数を減らそう。」
そうして呪術を行使するために、呪力を足へと集め、練り上げる。
「陰の相『影砕き』」
呪力を纏った足にて地面を踏みしめる。
『影砕き』感知範囲にいた『影鰐』と、その周辺に強烈な圧力を頭上に掛ける。その圧力は『影鰐』を中心にし、複数の屍もまとめて地面へと押し付ける。
足は一瞬の抵抗の後、地面を踏み抜く。
その足の動作に呼応するように、『影鰐』たちはそのまま霊子の塊に身体を上から下へ踏み砕かれて消滅する。
「さっきので分かったと思うが、二人とも気をつけろ。『影鰐』が多い。」
「分かりました。」
多少呆気に取られた表情をしつつも、メイがしっかりと答える。
それから双子同士で頷き合い、戦線の維持を再開する。
「注ぐは水相!糸水刃!」
メイが呪術を行使し、糸状の水圧カッターで複数の屍を切り裂く。
「育むは木相!雷貫針!」
エイは無数の針状の雷で的確に屍の頭部を穿っていく。
2人はその若さからは想像出来ないほどの腕前で呪術を行使していく。
◇
『シン…さん。聞こえますか?』
「ああ。聞こえてる。」
エイから伝心が入る。
防壁の近くまで前進し、抜けてくる屍を刀で次々と斬り伏せながら答える。
『陰陽寮の僕たちが言うのも、まずいんですがこの戦線は討伐部隊が到着する1時間は持ちません。』
「だろうな。それで、どうする?」
防壁の防衛部隊の人数が明らかに少ない。呪術師3人が加わってもこのままではジリ貧なのは変わらない。
『防壁外の奥に、大きい怪異がいる可能性が高いです。そいつが屍を呼び寄せてるんだと思います。』
「同感だ。どこかで攻勢に出ないとな。君等の余力はあるか?」
『申し訳ありません。僕たちの呪力はもうそんなに多くはありません。そこで、怪異をシンさんにお任せしたいんですが出来ますか?』
一瞬、返答に悩む。だが、この局面を切り抜かなければいけないのは変わらない。ならば…。
「可能だ。」
『ありがとうございます!そこまでの露払いはこちらで引き受けます。お願いします。』
すると、双子が俺の左右の全面に駆けてくる。双子だけあって息の合った動きだ。
一点突破で進撃しようかというところで、サラから伝心が入る。
『真。悪い知らせがあるんだけど聞きたい?』
「サラ、勿体付けずに言ってくれ。」
『『鴉』が新しい屍の群れを捉えたよー。防壁の穴に向かってる。』
その知らせを聞いた双子が顔を険しくさせる。
すぐにエイの方は、別の人間と伝心で新たな屍の襲来を伝えているようだ。
双子たちはまだ先程の大規模呪術による疲労が見て取れる。それなら…。
「ここは俺が受け持とう。サラは援護を頼む。」
サラからは『オーケー』と返事が返ってくる。
双子たちは俺の申し出を飲んでくれたが、どの程度の受け持ってくれるのかを測りかねているようだ。
崩れた防壁から新たな屍が一体、また一体と姿を見せ始める。
それはまたたく間に数十、数百と増える。受け持つと言ったからには、可能な限り受け持とう。
俺は眼前に迫る屍の、その先まで捉えて刀の柄を握る。鞘に血印による呪式をめぐらし呪力を汲み上げる。
「相反律して理となす。…陰陽剣。双刃陽炎!」
抜刀術からの初撃。刀を返してからの袈裟斬り。
超高速の二連斬りは陽炎の如く、音もなく刃の残像だけを残す。
しかしその技、陰陽剣は空間中の霊子へと呪力を伝播し、広範囲に高密度な高次元の刃を形成しながら屍共の身体を紙細工の様に切り裂く。
『双刃陽炎』は防壁に新たに侵入してきた屍の殆どを殲滅した。
残りも土御門の双子、サラ、防衛隊に駆除されていく。
残すは本命。大型の怪異だ。




