第8話 12月7日 その五
「……初対面の挨拶でこんな返事をもらったのは初めてです。まあ、死霊相手じゃそんな態度にもなりますよね。僕らは体内の霊魔が無くなると死ぬ……そして、死霊にとっての霊魔の獲得方法は自らの手で人間にとって不幸な殺し方で人間を殺すしかない。正義の死霊狩りが見過ごすのは異常行動でしかありません。なんて、言っているところですが……」
シャルルがこちらとは逆向きの右側に振り向く。
視線の先は道路に止まる青い六人乗りの車だ。
「さあ、行きましょう。あそこにヨルルさんの弟、リミクさん。妹、ネネアさんがもう乗っています。車は自動運転で護衛対象の元へとまずは向かいます」
シャルルが立ち上がり、音無く歩くわけでもなく、降り積もる雪の音を味わうように踏みしめ、車へと向かう。
ヨルルもすぐに立ち上がり、車へと向かった。
車は自動で助手席のドアと真ん中のドアが開き、シャルルは助手席に座り、ヨルルも車の中に入る。
そして、中には後部座席の右にリミク、左にネネアが既に座っていた
リミクは身長161センチメートル、黒髪ショートヘアー、黒く眠そうな瞳、トップスはぶかぶかの黒いパーカーでボトムスはぶかぶかの藍色のワイドパンツ、美少女かと思う程かわいい上にミステリアスな感じが漂うメロメロになる人が多い15才の吸血鬼の少年。
ネネアは身長153センチメートル、銀髪ロングヘアー、宝石のように綺麗な銀色の瞳、スタイルはすごくスラッとしていて、トップスは白いベアトップでボトムスは白いスカート、とてつもなく美人な姉と姉の恋人のめちゃくちゃかわいい女性も羨ましがる可憐さを持ちつつ西洋人形のような美しさを持つ、戸籍上15才の色々あってリリノル家にやって来たアンドロイドの少女。
まずは無事を確認できた……のだが──。
「リミク、ネネア。狩人指輪になにかされた?」
ほんの少しだけだが、二人の狩人指輪に違和感を覚えたヨルル。
それに二人の表情もいつもより暗い。
すると二人より速くシャルルが口を開く。
「気付かれてしまいましたか。ちょっと仕込ませてもらいましたよ──我々にとって不都合な行動をすると内側から針が出てきて、吸血鬼でも十秒程度で死に至らしめる猛毒が出るように」
少し間を置いて、ヨルルは助手席のシャルルの右耳までゆっくりと顔を近づけ。
「お前…………殺す時は痛みのせいで本気で泣いても、泣けない程壊れても、その過程さえまだ幸せだったと思わせてやるぐらいハードに殺してやるからな……分かったか?」
と、明らかにブチギレてながらそう告げた。
「あー、こわい。後、さっきに比べて口調と声色がたくましくなってますよ? それに『お前』っていう呼び方じゃなくて、シャルルって呼んでほしいなー」
にやけながらシャルルは余裕そうに返えす。
「大丈夫だよ、ヨルル姉さん。死霊狩りになったら日常が常に命懸けだから、いつもと案外変わらない」
リミクはいつもの少しだけ口角をあげる笑顔を見せる。
「私も大丈夫。死ぬ覚悟なんてとっくに終えてるから」
ネネアはイチコロ間違いなしの笑顔で微笑む。
「リミクさんとネネアさんにも護衛依頼に参加してもらうため、お二方には気付かぬ内に狩人指輪に仕込みを入れて、監視していただけの人質から監視付き人質兼戦闘面での利用対象へ強制的にグレードアップ。もちろん、誰かに助けを呼ぼうとしたら即殺します」
完全に孤立した。
しかし、どうやって──。
「どうやって人質から解放してもらうか心配ですよね、ヨルルさん?」
「………」
コイツは心でも読めるのか?
「大丈夫です。護衛対象であり依頼主である少女がなぜかは知りませんがあなた方に協力的で、もしも僕たちが依頼を達成したにも関わらず解放しなかった場合、今回の死霊への報酬である金銭、武器、霊魔獲得元である人間等を一切出さない上に今後の関係は絶つと決められています。そもそも少女は人質には完全に反対していました。……でも、なんでそれぐらいの力を持つ人が僕たち人形死霊へ護衛依頼を……まあ、疑問に思っても仕方ないか……」




