第7話 12月7日 その四
つーか、コイツはなんでミリアたちが自分の家族だと知っている?
まあ、それについては第一声から違和感を覚えていた。
──そんなにミリアお兄さんのことが心配ですか?
との言葉に。
15才からは家族の計らいで自分がリリノル家の人間だというのは伏せられ、リリノル家の知り合いが色々と上手くやってくれてことで、例えば自分がミリアと一緒にいれば、ミリアと一緒に居ても違和感のない死霊狩り協会の人間だとかに自分がリリノル家だと明かしていない者には見えるらしい。
もちろん監視網を駆使し、置き換わっている別の人間と鉢合わせてしまって、同じ人物が二人居るなんていう状況になるのは防げるらしいし、簡単に自分がリリノル家の人間だということをバラす者に教えてはいない。
……まあ、数は少ないが自分が出身を秘匿する14才までで普通に出身を知った者はいるし、ちょっと口を滑らすだけでアウトらしいし、秘匿しているのは本当に薄氷の上に成り立っている。
案外、奇跡みたいなものらしい。
ただ、コイツは人形死霊。
人形死霊は独自のコミュニティを築いているし、人間社会で暮らす者とは違うルートで情報を仕入れる。
なので、人間相手でさえ薄氷の上に成り立っているのに予想できない情報網を持つ相手だったら案外知っている可能性は十分にある……ってあれ?
なんか考えてみると別にコイツが自分がリリノル家だと言うのを知っているのはおかしいことではない気がしてきた……どうしよう?
「どうかしました?」
彼が微笑みながら訊ねる。
「い、いや……なんでもない……そ、それよりも君のも、も、目的は……?」
「たじたじになることは言ってないのになんか、ダメージ受けてませんか……? まぁいいです。ある護衛依頼を受けてほしいんです」
「…………うん……? …………は?」
あまりに予想していた答えと違っていたので、ポカンと思考と表情が停止する。
「護衛対象は天使の少女。と言っても他に詳しいことは僕も知りませんが。護衛にあたるのはヨルルさんだけではなく、弟さんと妹さんもです。報酬は監視の解除とヨルルさんの出身の秘匿を約束すること。護衛にあたって必要な金銭、衣食住はこちらが負担します。護衛依頼の具体的な内容はもうすぐここにやって来る弟さんと妹さんと一緒に少女が待機している場所まで行ってからお教えします」
「………」
なんか引き受ける前提になっている。
まあ、弟と妹が監視されている上に情報がバラされては非常にまずいので拒否権はないが。
というか、なぜ弟と妹が参加するのだろうか?
「……弟さんと妹さんが参加するのが謎ですか?」
「……まあ、ね」
……こっちの考えはお見通しだったようだ。
「理由はこっちが手を煩わせずに強制的に参加させられそうな人材があなたたち三人だったから、とか。にしても……ヨルルさんとコンタクトを取るため、あのクシユルさんたちへ気付かれないようにするのはホント骨が折れましたよ。今も何気にヒヤヒヤしてますが……それに天使の護衛なんて……上はなにを考えているんだか……」
ボヤキはじめた。
コイツも苦労しているようだ。
全く同情はしないが。
「……あ、そういえばまだ僕の名前を名乗っていませんでしたね。申し訳ないです。マナーだというのに」
すると彼はこちらをかしこまって見つめ。
「──シャルルです。人形じゃない死霊は名付け親の趣味でしょうが言葉の一部をもじっていたりしますが、僕は普通にシャルルという名があります。人間社会で生きていけませんからね。おそらく短い付き合いになるでしょうし、僕自身死霊狩りは大嫌いなのでいずれ敵になることも多いに考えられますが、是非ともよろしくお願いいたします」
少し、ヨルルは間を置いて。
「……よろしく。敵になっても君は死霊だし、ちゃんと殺してあげる」
とても名を名乗った相手に返す言葉とは思えない返答をした。
この作品は6話までプロットを作らず進行していたので、所々で少しの修正をしていましたが、今はプロットが完成していますので、修正は減ると思います。これからも応援よろしくお願いいたします。




