第14話 護衛開始
出会ってから十分間程、護衛内容について詳しく聞いたヨルルたちは車に乗り、シャルルたち死霊側とモルネが立てたルートを自動運転で進んでいく。
席はヨルルが真ん中の右側にモルネが左側に。
他の三人はさっきと同じ場所。
「……あむっ」
助手席のシャルルはよくコンビニで見かける安めのトリュフチョコレートを口に入れて、モグモグと食べている。
「人形死霊って、食事できるの?」
ヨルルは疑問に思い問いかけた。
「できますよ。まあ、味を楽しむだけであってエネルギーは補給できないんですけど」
一つ目を食べ終え、二つ目のチョコを口に入れながら答えるシャルル。
「……というか、お前気が抜け過ぎだと思うけど」
「だから、シャルルって呼んでくださいよ。それに戦うのはお三方だし、僕は万が一の時のためにモルネさんの側を離れないようにしないといけませんし」
二つ目を食べ終え、三つ目を口に入れている。
「それでもおま──」
「だから、シャルルです!」
ヨルルはため息を吐いて。
「……分かった……シャルル」
仕方なくそう呼んだ。
……コイツ、攻撃できるようになったら“もっと”覚悟しておけよ。
「……あの、お二人とも流石に喧嘩はよくないと思います」
モルネが気まずそうに口を開いた。
……気付いたらリミクとネネアも気まずそう。
「ごめん……三人とも」
三人を視界に入れながら謝る。
それでもシャルルが悪いと──。
「姉さん。喧嘩の火種になることを考えてるでしょ」
え? 我が弟も心を読める力が……?
そ、それでもシャ──。
「……お姉ちゃん。もうやめて」
え? 我が妹にも心を読める力が……?
……し、仕方ない。
「ご、ごめん」
気まずくなって窓から景色を眺めた。
「……。あ、えっと」
いつの間にかトリュフチョコレートを完食していたシャルルも気まずそうである。
「なんというか……すみません。最近、イライラしていて……つい」
その後、彼は小声でこう呟いていた。
「……死霊狩りは大嫌い……それに……せっかく人間みたいに名前があるし……」
彼の表情は悲壮感が漂っていた。
なにか、抱えているらしい。
もっとも人類の味方である死霊狩りが触れてはいけない問題のように感じたし、彼はいつか殺さなくてはいけない敵。
肩入れしないようにそっとする。
「……姉さん。あれ……」
赤信号で止まった時にリミクが窓からなにか見たようで指をさした。
そこには……本来見えない筈である体内の霊魔が水色オーラとなって目視できる一人の三十代前半男性が路地裏で五人の男と殴りあいをしていた。
「……霊魔が暴走しているんでしたっけ? そうなるのは体内の霊魔をコントロールできなかったり、霊魔がもたらす力や幸福感に溺れるからで、結果的に体が霊魔に乗っ取られているような状態になる。たまに自我を強く保っているけれど霊魔に溺れ続けることを選んでいる人もいるらしいですけど。まあ、一般人のようですし、治安を守る人たちが対処する問題ですし、無視ですね」
実際に見たことは無いのかシャルルが凝視していた。
霊魔は死霊狩りの力になるだけなく、物に使用して一度滅びかけた世界を発展させたエネルギーであり、天国都市が七つできた要因であるが、恐ろしい一面もあった。
それが霊魔の暴走。
霊魔が暴走してしまえば完治には時間がかかり、それまで霊魔を獲得したいという感情故に人を傷付け、中には死霊と同じように人を殺すものまで現れた。
そして、幸福感故に霊魔に溺れ続け、残虐非道に人を殺すものもいる。
「霊魔がデフォルトで備わっていて、コントロールすることが普通な僕たち死霊にとってはよく分からないものですけど。というか、霊魔を持っている死霊狩りって、霊魔が暴走しないんですね……」
「……まあ、ちゃんとコントロールできるように準備をしてから霊魔を体内に入れるから」
「へぇ……」
シャルルはスゴいことは分かっていてもなんとなくでしか分かっていないようである。
車の方は赤信号から青信号に変わって進み出そうとしていた。
──だが、その瞬間にさっき見ていた路地裏で銃声が聞こえた。




