第11話 死階死霊
「………そっか」
モルネは笑顔で差し出された狩人指輪のサファイアを見つめながらそう呟いた。
「……どうかしましたか? モルネさん?」
「いえ、お気になさらず」
シャルルからの問いにモルネはこの場所での会話の中で……一番の優しい声と笑顔を見せた。
──同時刻。
時汐の中心に位置し、時汐で最も高いビルであり──ヨルルが昨日ここのヘリポートで戦ったが、ヨルルはこのビルがどんな施設だったかうっかり忘れていた上、ヨルルが誰にも咎められそうにないので、その事は置いておく──“死霊狩り協会時汐支部”という名の通り、死霊狩りにとって重要な施設の上層区画にある一室。
その部屋は最大三十人での会議や伝達事項のやり取りがリモートではなく集まって行われるための部屋であり、例えるなら死霊登場前に存在した刑事ドラマに出てくる捜査本部のような場所。
元々、リアルでわざわざ集まる必要のある事柄についての話が行われるので緊張感は強くなりがちだが、今日はいつもにも増して緊張感マシマシである。
この部屋の最大人数である三十人もの人間が集まり、刑事ドラマなら殺人でも起きた時の捜査会議の中で、一番奥の席に座るのは──死霊狩り協会のトップでありリリノル家の一員である吸血鬼……そして、ヨルルの実の兄、ミリア。
右斜め後ろには白髪ボブヘアー、銀色の優しい瞳、黒いスーツ姿でネクタイは青いもので、身長160センチメートルでモデルさんのような美しいスタイルで顔立ちはあまりにも綺麗で可憐……クルロの名を持った彼女がいつでもミリアを守るかのように立っている。
21才のミリアと同じくらいの年齢に見えるクルロはアンドロイドであり、死霊狩り協会のトップの座を持つ、会長ミリアを仕事でも傍に居続ける副会長で恋人である。
そして、二人はお互いにどちらかが欠けてしまったら100パーセント生きてはいけないカップル。
どちらも単独での死階死霊の討伐経験ありの経歴を持つ、オーラMAXの二人とその二人前に各々着席し、ミリアが口を開くのを待っている二十八人の種族も年齢もバラバラなヨルルのようにフリーではなく死霊狩り協会時汐支部に所属する死霊狩りたち。
ただ、一番の共通点として全員が死霊狩りとしての経験が浅く実力もまだまだである。
「今日はみな、集まってくれて感謝するよ。集まってもらったのはもちろん昨日の死霊たちがこの時汐に侵入した件についてだ」
いつもの優しい声色で話し始めるミリア。
「フリーの死霊狩りもそれぞれの依頼主から依頼を受けて参加し、その者たちと君たちによる各々の迅速な活躍により、最小限の被害で襲撃は終わったが、死階死霊でなければ、都市に入り込んだ何者かの手助けがないとバリアを突破などできない。もちろん君たちを疑っているわけではないけどね」
しれっとヨルルのようなフリーの死霊狩りについて触れつつ、話を進めいるのを見てクルロは『ミリア君、ヨルルちゃんのことを気にしてるのかな?』と考えていた。
「周知の事実だけれど、一つの天国都市に死霊が攻め込むのは平均年一度の頻度。死霊と戦うのは“堂々と”攻め込まず、天国都市で痛めつけられて殺されるだとかの“最悪で不幸な死”を遂げた者から生まれた死霊か、独自のネットワークを築き“気付かれず侵入していた”死霊との戦いだ。ま、昨日は単独でバリアを突破できる死階死霊ではなく、中階までの死霊が堂々と攻め込んできたから、裏で誰かが手をひいている……なのに裏で手をひく者は“足が付くリスク”を承知で上階クラスを一体も招かず、たったあれだけの数の中階と低階死霊しか招いていない。つまり、今回は何かの前フリとしての襲撃……と、僕は考えている」
ミリアは一呼吸置いて。
「そして、前フリ後の本命はこの時汐に年一度の襲撃なんて比にならない程の大きな出来事が起きると思っている。更にそれには死階死霊も関わってくる、と……。ここに死霊狩りとしての経験が浅い君たちを呼び出したのは近い内に起こる出来事に絡む死階死霊について改めて知り、覚悟をもう一度決めてほしいというわけだ。……まあ、これから見せるは死階死霊と言えど非討伐で記録が残っているヤツたちだけど」




