第10話 護衛達成までの道のり
家族のことはこの世で一番大好きだが……憂鬱だ。
「……姉さん?」
「……お姉ちゃん?」
弟と妹がこちらを心配そうに見つめる。
普通に二人は周りの心配などできる訳がない程、不安でしかたない状況な筈なのに不安感は少ししかなそうだ。
クシユルたちに稽古をつけられ前線へバリバリに出ている優秀な弟と妹だけある。
「心配しないで。大丈夫」
いくら家族がコンプレックスでも大好きな家族を傷つけたくはない。
だから二人にはそう言いながら、明るく笑顔を見せた。
「笑顔……見せるんですね。まあ、いいですけど。では、次に今回はモルネさんが指定した場所まで護衛する依頼な訳ですが、その場所を共有しましょう」
なんかシャルルが自分の笑顔を見て驚いていたが、すぐに自らの狩人指輪へ『マップ表示』とでも思い浮かべたのか、狩人指輪からテーブル上に時汐全体を分かりやすく表示した立体ホログラムが出現した。
「現在、僕たちが居る時汐北西にあるこの部屋はこの赤いピンの所です」
シャルルはマップへ『赤いピン出ろ』とでも願ったのか、マップに赤いピンが出て、そのピンの場所は間違いなく、この部屋がある場所だ。
次にマップ上の時汐南東に黄色のピンが出現する。
「そして、目的地はこのマップに示した黄色のピンの場所です。ここまで護送すれば依頼は完了します。モルネさん……それで間違いないですね?」
「間違いありません」
ここまで聞くと護衛対象のモルネだけでなく、人質になりつつ護衛依頼に参加するという不思議な状況のリミクとネネアの命がかかっている割には難しい依頼とは感じない。
だが、考えるまでもないことだろうが、そうではない筈。
「時汐という都市一つの中で完結する事とはいえ、時汐は荒廃し、僕たち死霊が数えきれない程暮らす現代の地球上にとっては八億人の人類のほとんどが一七安息できない天国都市の一つであり、時汐はその中でも六番目に人口が多く、人口四千万人。都市内を移動すると言ってもモルネさんはワープ設備が使えないからあまりにも時間がかかりますし──」
「待って。なんで、モルネはワープ設備が使えないの?」
時汐のワープ設備は潜伏する人形死霊に利用されるのを防ぐため、死霊なら必ず持つ霊魔を持つ者は利用できず、使おうとしたらすぐに死霊狩りがそのワープ設備の場所までやって来る。
まあ、霊魔を獲得した人間は死霊ではない証拠を得るために霊魔を獲得する前に厳正な審査を受ける必要があり、獲得後にはもっと厳正な審査を受けるので通れば普通に利用可能。
でも、そんなことは天使の少女には関係ない。
普通にワープ設備は利用できなければならない。
「それがどうやら、モルネさんを狙う犯罪組織は監視カメラやワープ設備を含め時汐全ての“足が付くもの”全てに“電子の網”をかけているようで……まあ、僕も詳しくはありませんが、監視カメラに写ったり、ワープ設備を利用して形跡が記録されればすぐに敵へと通達され、そのまま敵がやって来る……とかですよねモルネさん……?」
なんかシャルルは急に不安そうにモルネの方を見つめた。
そうか、コイツはサイバー知識は特に無しか……いい情報を知った。
……まあ、サイバー知識が皆無なことを自分も同じだという事実に気付かれないようにしよう。
「ええ、そうです。どうやら奴らには優秀なクラッカーが居るようで……ここに籠り始めたのはそのせいです……どうしたものでしょうか……」
ため息は吐き、頭を抱えるモルネ。
明らかに深刻な様子。
「いえ、それにはご心配なく。こちらが用意した狩人指輪を付けていれば“足が残らず”行動できるようです……とはいえ流石にワープ設備等は使えず、車で移動することになりますが」
シャルルが自身の狩人指輪からサファイアが付いた狩人指輪を出現させ……え?
……そのサファイアの中に『嘘つき』『ライアー』と二つの言葉が見えた……ような?
どっちも意味は同じじゃ……?




