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セラン・ブルーと幸福の少女  作者: Annabel
第2部 テュリエール王国編
58/143

プロローグ - はじまりの色 - ※前書きに前作(1部)まとめあり

≪前作(1部 再会編)まとめ≫

 フェルシアが十歳の時、実家のグローリーブルー伯爵領が魔獣に襲撃され一夜にして壊滅する。

 生き残ったフェルシアと姉のリーシャは救援をよそおったゾエグ公爵に囚われ、一族特有の能力の研究対象として日々を過ごしていた。


 しかし八年が経ち、公爵の悪事を追っていたライナス・オリヴィエ少佐の説得を受けて、フェルシアは彼の捜査に協力する。


 その後彼女はライナスと同じ軍部へ歩むことを決めた。







「ここに全ての領土の奪還と完全なる勝利を宣言する。テュリエールよ、永遠なれ」



 そう言って高く掲げられた金杯。ずらりとはまった大ぶりの輝石きせき

 巨大なシャンデリアの灯りを反射し輝く、その下で注目を集めるのはこの国の王だ。


 深き色をまとって立つ様は威厳にあふれ、支配者としての存在感がある。たくわえた髭の下には圧倒的な勝者の笑み。


(とりあえずは元気そうだな…)


 ワアアアッと広間の貴族や騎士が沸く中、青年はそんな感想を持った。王も一時は深手を負い危うかったが、長い時を経てとうとうここまで来た…いや、戻ったと言うべきか。

 ここからは我らの力を盤石にし、二度と同じことを起こさぬよう、未来永劫みらいえいごうの繁栄に励まねば。


 彼がそう決意し、国王の背後から広間を眺めていると。


「…ねえ、ヴァル」


「何だ」


 そっと耳打ちしてくる声。潜めたそれは血を分かち合う同胞のものだった。


「私ね、さっき面白いことを聞いたのよ。あなたも気に入るわ」


 そう言って、ふふ…と笑む唇は鮮やかな紅。


「言い切るな。それほどか?」


「だって私が好きなものって、大体あなたも好きではなくて?」


「…まあな」


 互いに視線は前へ向けたまま。


 眼下では功労者への下賜かし褒賞ほうしょうが始まっていた。王座から放たれる一言一言で巨万の富が動く。

 内容は爵位や昇任、貴金属、土地といった財産を主とし、時折婚姻(こんいん)話も持ち上がる。


 粛々(しゅくしゅく)とブルーサファイヤの首飾りが運ばれていく光景を前に二人の会話は続いた。


「私、美しいものは好きよ」


 あなたもそうでしょう、と向けられた流し目に青年も頷く。


「ああ。知っている」


 なぜなら彼女は昔からそうだ。加えて素晴らしい感性の持ち主でもある。ドレスや宝飾品、髪型、色使い、そのどれもが自分にとって馴染(なじ)み深く、好ましい。

 敵味方容赦なくふるういさぎよい刃さえも。


「ね?だから絶対に気に入ると思うのよね」


「おい。だから何の話かと聞いている。お前はいつも…」


「あら…。終わるわよ」


 毎度の小言をすげなく遮られる。まったく、この自分につれない真似をするのは彼女くらいだ。


 そうして間もなく即席の宣言式は解散した。一斉に現王政への歓声が始まり、青年も隣の彼女とともに鷹揚おうように笑んでそれらへ応じる。


(次は何を見つけてきたんだかな)


 彼女の「面白いこと」とは何か分からないが、聞いてみる価値はありそうだ。

 幼きより切磋琢磨せっさたくまし、この内紛でも様々な活躍を果たした。そんな同志が次に興味を示したものとは?


 しかし疑問の合間にも臣下の声は大きくなり、彼は右手を上げると「テュリエール万歳!」の大合唱を堂々と受け止めた。


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