表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/112

最終話「私達の愛は永遠です!」

 ――はい?


 私の脳内が真っ白に埋め尽くされた。


「今なんて言ったの?」

「だからそんな年上は好きじゃないって」


 キールはひんやりした口調で答えた。


「え?」


 私は茫然となってキールを見つめる。心臓の音が耳の奥へと直接聞こえてくるように脈打つ。そんな私をキールは突き放すように、冷めた表情で見つめ返していた。


「な、なんだよ、それ! ちょっと年が上なだけだろ! ルイジアナちゃんだって年上だったじゃん!」

「アイツとは五歳差だった。八は違い過ぎる」

「キールの愛は年が関係するのかよ! そんなちんけなものか!」


 焦りが徐々に怒りへと変わっていき、私は食い付くようにキールに楯突いた。


「なんとでも言え。好みじゃないもんは好みじゃない」


 キールは面倒くさそうに、私から視線を逸らして言い放った。


 ――ひ、酷い、そんな嫌そうな顔して。


 あまりのショックに涙が滲み出てきた。まさかキールが年ぐらいで、冷めてしまうような軽薄な人だったなんて! 見損なったよ!


「フ、フンだ! こっちだってね、八歳も年下の子供を本気にするわけないでしょ!」


 私は悔しさで胸がいっぱいになって、乱暴な言葉をキールに叩きつけていた。


「ちょ、ちょっと好きだって言ったぐらいで本気にしちゃってさ! 私はね、年上が好きなんだからぁ! 年下なんて頼まれたって願い下げだ! フ――――ンだ!!」


 私は息を荒々しくして言い放ってやった! そんな私の姿をジーッとキールは見つめ、


「冗談だよ」

「……え?」


 少し決まりが悪そうに苦笑して言った。私は唖然とする。


「悪かったよ。年上が好みじゃないと言ったのは嘘だ」

「え?……う、嘘だと! 今の嘘はイケナイ嘘だったぞ!」


 私はこの上ない憤りや嘘で良かったという安心感やら、色々な思いが()い交ぜ、ボロボロと涙が流れ落ちていた。キールは私を優しく抱き寄せる。


「悪かったよ」

「は、離せ! 嘘つきに触られたくない!」


 私はキールの躯を押し退けようとする。今の嘘は酷い嘘だ! 暫く反省してもらわないと気が治まらない!


「少し落ち着けって」

「フンだ!」


 尚も抗いを見せる私にキールは無理やり抱き寄せて、優しく私の頭を撫で始めた。まるで親が子供を宥めるような仕草だ。


「正直驚いたよ。ずっと年下だと思っていたオマエが実は八も上なんてさ」

「フンだ」

「見た目もだけど、中身も違和感を覚えなかったし」

「どうせ私は子供っぽいですよ!」


 私はキールの胸元をバシッバシッと叩いて抵抗を見せた。


「でもオマエ、たまにハッとするような言葉を言う時があったもんな。それでなるほどって納得したよ」

「え?」

「大人じゃないと、助言出来ない言葉だったもんな」

「フ、フーンだ」


 急に褒めたって許してあげませんから! こんな乙女を傷つけた罪は重いんだからね!


「どうしたら許してくれる?」


 フッとキールの顔を近づけられて、私はたじろぐ。彼の表情が本当に切なさそうで、思わず気持ちが許そうとグラついた……けど、許さないんだから!


「フンだ!」


 私はプイッと横に顔を背けた。キールは本当に困ったという表情でいる。フンだ、暫くそのまま反省していればいいんだ。


「千景、実は渡したいモノがあって、ここに来てもらったんだ」


 私の気を引こうとしているのか! そう言って上手く許してもらおう作戦は私には効きませんから! キールはスッと私の胸元へ握り拳にした右手を差し出してきた。


「な、なぁに?」


 なにかを渡そうとしている雰囲気に、私は手の平を差し出した。すると? パッとキールの拳が開いて、私の手の中にある物が落とされた。


「これは?」


 ――指輪?


 翡翠石のラインが輝くシルバー色のリングだった。


 ――これって?


 私がリングを魅入っていると、キールはその指輪を取って私の左手を握る。そして、ゆっくりとリングを左の薬指に嵌めてくれた。


「キール?」


 ――これってまるで?


「エンゲージリング?」

「そう」

「でもこの国にはそういうしきたりがないって」

「ん、シャルトから聞いて作ったんだよ。世界でたった一つしかないリングだ。気に入ってもらえるといいんだけど」


 キールの表情に少しばかり不安が入り混じっている。私はあまりに驚いて言葉を失ってしまっていた。だってまさかエンゲージリングを用意してくれていたなんて思わないもの!


「とっても気に入ったよ! ずっとずっと欲しかった指輪だもん! 大切にするよ、有難う!」


 私は陽光に照らされた水面のように瞳をキラキラとさせて答えた。さっきまで怒っていた気分はどこかに吹き飛んでしまったよ。ずっとずーっと憧れていたエンゲージリング! キールの瞳と同じ色のラインが入った世界でたった私だけの指輪だ。嬉しくないわけがない!


「そっか、良かった」


 キールからキュン死にさせる笑みが零れて、胸がトキメキでいっぱいになる。それから指輪をじっと眺めていたら、その手を取られた。


「?」

「……千景」


 気が付けばキールは真顔でいた。私が年齢を打ち明ける前にも、こんな表情をしていたんだよね? 話って……?


「もうそのリングで気付いているとは思うけど……」

「うん?」


 さっぱわからんが?


「これからもずっとオレの傍にいて欲しいんだ」

「キール?」

「オレの傍で笑顔でいてもらいたいんだ。ずっと笑っていられるように幸せにするから」

「そ、それって?」


 私は興奮して開いた口が塞がらなかった。これは本当に本当のプロポーズじゃないですかぁああ!? 私は感極まって瞳をウルウル&キラキラと輝かせる!


「あぁ、一生涯を共にする契りの言葉を伝えて……」

「するするするするよ! 今すぐにでもキールのお嫁さんになるよ! いつでも結婚式をあげてもよろしくてよ!」


 私はキールが言い終わらない内に返事をしてしまう。躯中から溢れ出る愛を言葉にせずにはいられなかったのだ。結婚(ウェディング)カモーン! ウエルカムだよぉお! 晴れてキールのお嫁さんになってしまうんだな、ブハッ!


 鼻血が出てしまうがな! 私の頭の中は既にキールとの結婚式の映像が流れ出していた。民衆から「おめでとぉー!!」と、祝福されるウエディング・ベル。そんなマイ・ドリームが広がっている最中(さなか)、キールからサラリと告げられる。


「千景? もしかして、この国の結婚出来る年齢を知らなかったりする?」

「ふぇ?」


 急に現実に引き戻された私は声にならない声を零した。


「知らないよ!」


 変に自信満々で答える。


「やっぱり? この国は二十歳の成人を迎えないと、結婚は出来ないんだよ。だから、あと三年は待ってもらわんと」

「はい?」


 私は目が点になる。二十歳ですと? 確かキールの年齢は……十七歳?


 ――ひょぇええええ!!


 私はムンクの叫び声の表情になる! な、なんという事だ! せっかくキールから晴れてプロポーズを受け、今すぐにでも結婚出来るのかと思っていたのに、そんな落ちがあったのかぁああ!!


 一瞬にして結婚式の映像が消失し……た……。しかし、法律は法律。守る為にある法律。私は()ぜる感情を無理に抑え……そう、あと三年という長~い月日を心待ちする事にした。私とキールなら、なにがあっても大丈夫だよね! 絶対に離れたりしない。


 これからもずーっとずーっと永遠に愛し合っていくだろう(とっとと三年過ぎてくれ、切なる思い!)。私は陽射しの下でキラキラ光るエンゲージリングを見つめ、温かく幸せな未来を描いたのだった……。 


完結しましたぁ!!☆*゜*(*°▽^)ノ☆ (^▽^*)ノ*゜*☆

無事にラストまで至れましたのも、ここまでお読み下さいました皆様のおかげでございます!!


この作品は大概の方が三人の王から愛されるヒロインの物語だと思われて、でも実際には全く違うと期待外れに思われた方も多かったかと思います。こういった話にしたのは、ベタなストーリーから打破&少しでも斬新なものをと、あくまでも作者の自己満のストーリーでした(苦笑)


また独占の王、破壊の王の結末に関してもなにもと思われた方もいらっしゃったかと思います。あのような形にしたのは至福の国バーントシェンナだけではなく、すべての国が「至福」となるよう古の書物を託した神の願いを叶える為=それがこの作品の趣旨でもありました。


そしてもう一つ、ルイジアナの事です。彼女はキールとバーントシェンナを捨て、ヒヤシンス国へと嫁いだ事柄はとても批判的だったかと思います。でも彼女がビア王を愛し、嫁いだ事によって、キールはマキシムズ王から手掛けられず、バーントシェンナも敗戦を免れたのです。色々と複雑な思いはおありかと思いますが、どうかご理解を頂ければ幸いです。


そんな中、最後までお読み頂きました皆様には言葉では表せられない感謝の気持ちでいっぱいです!本当に有難うございました!!「禍の姫 救いの女神」は完結となりましたが、ムーンライトノベルで番外編を掲載しています☆実はこの話、ムーンからの15R版にしていました。なのであちらではムフフ❤なシーンもガッツリですw


そして暫くはムーンの方で活動をする予定です!只今「異世界で王妃の代わりに王妃を生みます!」の連載をしています。そちらも合わせて宜しくお願いします☆ご年齢が達している方は是非、ご覧になって下さいませませ☆


それではまたなろうの方でもお会い出来る日を楽しみに待っております!本当に有難うございました!o(●´ω`●)ノ♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ