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星焔 - Genesis -  作者:
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2/4

第0話 星焔の悪魔


 宇宙船が激しく揺れた。


 けたたましい警報が船内に鳴り響く。


「侵入者だ!!」


「どこから入ってきた!?」


「監視カメラが全部やられてる!」


 武装した男たちが一斉に通路へ駆け出す。


 その瞬間――


 ドォォン!!


 隔壁が爆音と共に吹き飛んだ。


 立ち込める煙。


 その奥から、一人の青年がゆっくりと歩いてくる。


 赤いコート。


 炎を纏い腰には一本の刀。


 男の一人が顔を青ざめさせた。


「まさか……」


「『星焔の悪魔』か……!?」


 青年は困ったように頭をかく。


「その呼び方やめろって。」


「嫌いなんだよなその通り名。」


 その後ろから、銀髪の少年が姿を現した。


 肩には黒い如意棒。


「有名人も大変だね。」


 笑うと口から覗く牙が印象的だ。


「茶化すな。」


「タイガ!来るよ。」


 男たちが一斉に引き金を引いた。


 無数の光弾。


 タイガは刀を静かに抜く。


 炎が刃を包み込んだ。


 一閃。


 轟音。


 通路が炎に染まり、男たちは武器ごと吹き飛ばされる。


「ぐあぁぁ!!」


 銀髪の少年――ライキも敵陣へ飛び込む。


「邪魔。」


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 男たちは次々と床へ沈んでいく。


「タイガ! 後ろ!」


「分かってる!」


 タイガは身をひねり、背後の男を蹴り飛ばした。


「危なかった。」


「危なかったで済ますな!」


 二人は笑う。


 最後の男が震える手で銃を構えた。


「く、来るな!!」


 引き金を引こうとした瞬間。


 刀の刃が男の首に軽く当たる。

 

 一瞬だった。


「はい、おしまい。」


 男は気を失い、その場へ崩れ落ちた。



「……終わりましたかぁ?」


 赤いコートの胸元がもぞもぞと動く。


 次の瞬間、小さな妖精がひょこっと顔を出した。


 ふわりと宙へ飛び上がり、きょろきょろと辺りを見回す。


「もう敵いません?」


「いないよ。」


 タイガが笑って答える。


「よかったぁ……。」


 ルナは胸をなで下ろしながら、ほっと息をついた。


「毎回現場に来る時はそこに隠れるよね。」


 ライキが呆れたように笑う。


「だ、だって怖いんですもん!」


「戦えないんだから仕方ないじゃないですか!」


 頬を膨らませるルナを見て、タイガとライキは思わず笑った。


 タイガは左手首のライセンスへ軽く触れた。


 ピッ。


 銀色のホログラムが静かに展開される。


『依頼完了を確認しました。』


『依頼主である宇宙警察へ連絡します。』


『その場でお待ちください。』


「便利だよね。」


 ライキがホログラムを見上げる。


「昔は賞金首を自分たちでセンターに連れて帰ってたらしいぞ。」


「途中で逃げられたり、他のハンターに横取りされたり、大変だったみたいです!」


 ルナが補足する。


「へぇ。」


 ライキは少し考え込む。


「それなら俺、センターの前で待ってる。」


 一瞬、静まり返る。


 ルナが勢いよく雷鬼を指差した。


「それはハンターじゃなくて盗賊です!!」


「え?」


「効率いいと思っただけ。」


 ライキは首をかしげる。


 タイガは思わず吹き出した。


「だから今の制度になったんだよ。」


 三人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。


 三人が笑っていると、宇宙警察の小型シップが到着した。


 降りてきたのは数人の警察官。


「対象を確認します。」


 隊員たちは賞金首を拘束し、船内の状況を確認していく。


 一人がタイガへ敬礼した。


「引き渡しありがとうございます。」


 拘束具が次々と男たちへ取り付けられていく。


 リーダー格と思われる男が、苦笑しながらタイガを見上げた。


「……これで俺たちも終わりか。」


 太嘉はしゃがみ込み、男の目を真っすぐ見つめる。


「何言ってんだよ。」


 男は顔を上げる。


 太嘉は笑った。


「生きてりゃ、なんとかなる。」


「……。」


「罪はちゃんと償え。」


「その後どう生きるかは、お前が決めろ。」


 男は何も言えず、ゆっくりとうつむいた。


「報酬額確定まで少々お時間をいただきます。」


「最寄りのバウンティセンターでお待ちください。」


「了解。」



 3人の乗った宇宙船が巨大なリング状の人工ステーションへ近付く。


無数のスペースシップが発着する巨大施設。


銀河中のハンターが集まる、


バウンティセンター。


 大勢のハンターが行き交い、巨大な依頼掲示ホログラムには無数の依頼が流れていた。


 入口でライセンスをかざす。


 ピッ。


 銀色のホログラムが展開される。


『登録パーティを確認しました。』


『パーティ名 プロミネンス』


『パーティランク A級』


『メンバー』


『A級ハンター タイガ様』


『B級ハンター ライキ様』


『サポート登録 ルナ様』


『ようこそ、バウンティセンターへ。』


『おかえりなさい。』


「ただいま。」


 タイガは笑う。


「誰も待ってません。」


 ルナが即座にツッコミを入れる。


「だっておかえりって言うから。」


 ライキが肩をすくめた。


「報酬確認してきます!」


 ルナはそう言って受付の奥へ飛んでいった。



「よう。」


 聞き慣れた声がした。


 振り向くと、宇宙警察の制服姿の男がコーヒーを片手に立っていた。


「ロイド隊長。」


「賞金首の依頼か?」


「あぁ!今回も余裕だったよ。」


「その顔を見ると嫌な予感しかしないな。」


 二人は笑う。



「た、タイガ様ぁぁぁ!!」


 ルナが端末を抱えて戻ってきた。


 少し涙目だ。


「今回の報酬ですが……。」


 タイガはニヤリと笑う。


「結構いっただろ?」


「諸経費を差し引いた結果……」


 ルナは小さく息を吸う。


「マイナスです。」


「…………え?」


「マイナスです。」


「いやいや待て待て。」


「盗賊捕まえただろ!?」


「何てことしてくれたんですかぁぁー!!」


 ルナが端末を振り上げる。


「あのシップは盗難船です!」


「依頼内容には犯人確保だけじゃなく!」


「現状維持での引き渡しも含まれてたんです!!」


「えー……。」


「入る時にドアちょっと壊したくらいじゃん。」


「読み上げます!」


 ルナが端末を操作する。


「隔壁一枚!」


「壁三枚!」


「通路一本!」


「非常扉六枚!」


「監視システム全損!」


「消火設備損傷!」


「内部配線破断!」


「その他多数!」


 タイガはライキを見る。


「俺そんな壊した?」


「壊した。」


「お前も壊しただろ。」


「俺は必要最低限。」


「嘘つけ!」


 ロイドが吹き出した。


「だから始末書が減らないんだ。」


「笑い事じゃないですよ!」


 ルナは頭を抱える。



 ロイドはコーヒーを飲み終えると、静かに口を開いた。


「タイガ。」


「少し時間あるか。」


「あるけど。」


「俺の船で話そう。」



 宇宙警察の巡視艇。


 ロイドは一枚の端末を机へ置いた。


 軽く触れる。


 青白い光が宙へ広がり、一人の男の立体映像が浮かび上がる。


 横には赤い文字。


《最重要参考人》


 機械音声が静かに流れ始める。


『対象者、違法闇オークション運営責任者。』


『依頼内容――違法取引の証拠集め。』


『その上での身柄確保。』


 タイガの表情が変わる。


「……闇オークション。」


「最近、不審な取引が急激に増えている。」


 ロイドは腕を組む。


「だが証拠がない。」


「令状も取れん。」


「本来ならS級案件だ。」


「センターでも、お前には回ってこない。」


 一拍置いて、ロイドはタイガをまっすぐ見た。


「だから直接頼みに来た。」


 タイガはロイドを見る。


 ロイドは少し笑った。


「俺はライセンスの色より、お前の腕を信じてる。」


 船内が静かになる。


 ライキが口角を上げた。


「断る理由ないね。」


 タイガは立ち上がる。


「よし!受けよう。」


 ロイドも立ち上がった。


「それと一つ。」


「今回は――」


 タイガとライキが顔を見合わせる。


 ロイドはため息をついた。


「なるべく壊すな。」


 一瞬の沈黙。


「努力します。」


「努力だけか。」


 ライキが吹き出し、ルナは頭を抱えた。


「また始末書が増えますぅ……。」


「始末書が減らないから昇格審査に通らないんだよ。」


「実力は充分なんだがな。」


 ロイドが呆れた表情で呟いた。


「まぁコーヒーでも飲んで少しゆっくりしていけ。」



ロイドはコーヒーを飲み終えると、小さく息を吐いた。


「あぁ、忘れるところだった。」


「タイガ。」


「……なんだ?」


「お前が探してる海賊の件だが。」


タイガの表情が変わる。


「何かわかったのか!?」


ロイドは静かに首を振る。


「いや。」


「何かわかったってレベルではないんだが——」


端末を操作する。


青い惑星がホログラムに映し出される。


「最近、この惑星に滞在していた形跡が見つかった。」


「本当か!?」


タイガは思わず画面へ身を乗り出した。


「一応調査隊は派遣したんだが、これといった手掛かりはなかったらしい。」


「だが、お前なら何か掴めるかもしれん。」


ロイドはデータを送信する。


ピッ。


ライセンスが小さく震えた。


『調査資料を受信しました。』


タイガは静かにライセンスを握る。


「ありがとう。」


その表情は、どこか嬉しそうだった。


ロイドは少しだけ笑う。


「焦るな。」


「探し続ければ、いつか見つかるさ。」


タイガは頷いた。


「あぁ。」


「生きてりゃ、なんとかなる。」


ロイドは苦笑する。


「その前向きさだけは昔から変わらんな。」


「だがその前に!」


ロイドはもう一枚のデータを表示した。


『違法闇オークション』


タイガの視線が切り替わる。


「まずはこっちだ。」


ライキがニヤリと笑う。


「その先に、海賊がいるかもしれないしね。」


ルナも元気よく羽を広げた。


「準備しましょう!」


タイガはライセンスを閉じる。


「行こう。」


「母さんを見つけるためにも。」



宇宙警察の巡視艇をあとにした三人は、スペースポートのドックへ向かった。


そこには、一隻の黒いスペースシップが静かに停泊していた——。


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