第88話 ライブの始まり
「さぁ、パステル☆ナイツの進軍だ☆」
「ピューマンなんて、僕たちの歌と踊りでこてんぱんにしてやる~!」
「私たちの華麗なステップで、一撃も食らわずに倒して見せましょう。」
「「「パステル☆ナイツに栄光あれ!!!」」」
13時。配信開始と共に、俺たちは進軍を開始した。今回の攻略は特に気合いが入っている。先日の炎上、その汚名返上が懸かっているからな。
空撮ドローン3台。紙吹雪や照明用ドローンが2台もスタンバイしている。今日のライブで、確実に黒い疾風を討伐しなければならない。最低でも、この集落を壊滅させる程度には活躍しないと…!
:がんばれー!!
:パステル☆ナイツに栄光あれ!!
:今日もマケテル☆ナイス予想
:逃げんなよ?
:パステル☆ナイツに栄光あれ!
チッ、クソが。アンチ共も湧いてやがる。ザコモブ如きがいい気になりやがって。
だが、まぁいい。今日のライブさえ乗り切れば再び人気も上昇して、話題性も獲得できる。配信だけじゃなく、地上波のテレビにだって、また…!
「ん? なんでしょうか、あれは。」
ミナトの怪訝な声。彼は指で輪を作り、水魔法でレンズを作り出した。望遠鏡のようにして遠くを見ることが出来る、ミナトのオリジナル魔法だ。フン、魔法の才能だけは認めてやっても良い。
「ピューマンたちでも、待ち構えているのかい?☆」
「…いえ。何か黒い、“木のようなもの”が。」
ホウ、ホウ、ホウ。
なんだ? なんの、音だ?
:今の音なに?
:ノイズ?
:変な音した
:風じゃない?
ホウ、ホウ、ホウ。
「な、なんですか、あれは…!」
「え、なになに~?」
ミナトが見つめる先に、目を凝らす。確かに黒い木のようなものが見える。しかし、様子がおかしい。
「木が、動いている…?」
黒い枝。いや、枝のようなものが動いているのだ。ゆらゆらと不自然に揺れるそれをじっと見つめていると、ひどく不安な気持ちになってくる。
太陽が陰った。雲だ。雲が、日の光を遮ったのだ。この平原が雲に覆われることは非常に珍しい。雨期と呼ばれる時期でもないのに…。
ホウ、ホウ、ホウ。
再び聞こえた、不気味な音。それは確かに“黒い木”の方から聞こえていて…。
フワッ、と。花が開くように。
突如、黒い木の幹が四つに開いた。細かな黒い枝が触手のようにせわしなく動いていて。
ソレは突如、むくりと、立ち上がり。確かに、こちらを向いた。
太い幹に、無数の口が現れる。
ニタァ、っと。笑みを浮かべた瞬間。
『メェエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーッッッ!!!』
ズシンズシンズシンズシンズシン。
地響きと共に、こちらへ向かって駆けだした。
○
「ひっ…! な、なんなんですか、アレはッ!」
:なんだよあれ!?
:いやあああああ
:むりむりむり
:ああああああああああ
:こわこわこわい
「黒山羊、黒山羊だッ! 黒山羊が現れたんだ!!!」
狂乱するコメント欄。顔を引きつらせているソウとミナト。クソ、何を呆けていやがるんだ! これだから、ただの引き立て役は使えねえ!
これは、チャンスだ!
天が俺に与えた、絶好のチャンス! 逃す手は、無いッ!
「みんな、怖がらないで☆ あれは黒山羊、黒い疾風と同じエリアボスだ☆ 今から僕たちパステル☆ナイツが、あの化け物を倒してみせる☆」
「ヒ、ヒナタ!?」
「し、正気ですか!?」
「は?」
おい。おいおいおいおい。何、怖じ気づいてんだ?
まさか、逃げるつもりだったのか?
また、ニゲテル☆ナイツと呼ばれたいのか?
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁあああああああああッッ!!!!!
「「ッ!!」」
ふん、ようやく覚悟が決まったようだな。ここからが本番。ここからが、正念場。
俺は逃げない。俺たちは、逃げない。
ここであの、黒山羊を倒す。
黒山羊を倒して、再び返り咲く。そしてすべての配信者のトップに、頂点に君臨してみせるッ!!!
「さぁみんな! どうか目をそらさないで☆」
「想定外の緊急ライブだ~!」
「ふふふ、面白くなってきました。さぁ、行きますよ?」
「「「ライブの始まり、夢の始まり!」」」
ライブが、始まる。
「「「パステル☆ナイツに~~~~~?」」」
狂気と、様々な欲が交差する、混沌のライブが。
「「「栄光あれ~~~~~~~~~~ッッ!!!」」」
:栄光あれーーーーーー!
:栄光あれーーーーっ
:きゃはあはははははははははは
:あははははははははははははははははは
:栄光えいこうえいこおおおおおおおおおおおお
命を懸けた、運命のライブが。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
面白ければぜひ、リアクションと評価いただけると嬉しいです。
また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




