第86話 ピューマン殲滅配信
「ふぁ~あ、よく寝た…。」
『わふわふーん!』
「うーん、おはようもふげ…。」
前回の配信から一週間。僕はダンジョンにももぐらず、例の如くだらだらとした生活を送っていた。一応ギルドには顔を出していて、素材の買取なんかもお願いしている。お昼はもちろん、犬のおしり亭だ。
「うわ、パステル☆ナイツまだ叩かれてるよ。ざまーみろ!」
スマホでぽちぽちとツピッターを触っていると、パステル☆ナイツについてのニュース記事が流れてきた。
そう、彼らは僕の配信で行われた大規模な荒し行為について、公式に謝罪文を投稿したのだ。トドメとなったのは、メンバーシップ限定配信にてパステル☆ナイツが騎士団と呼ばれる信者達をけしかけるような発言をしている音声を、PCニキたちが独自のルートで入手し、公開したことだ。
その結果大炎上し、謝罪に追い込まれたという訳。いやぁ、バカだねぇ。騎士の爵位を返上しろよ、まったく。
『おいモンゴロー。何をニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべておる。はようメシを寄越さぬか!』
「おいもちゃんうるさいなぁ、って、もう9時か!」
おいもちゃんは順調にすくすく成長中で、すでに水槽に収まりきらない大きさになっている。そのためもふげ同様、お部屋の中を自由行動できるようにしてあげた。
「はい、どうぞっと。もふげもご飯できてるからねー!」
『わふわおーんっ!』
『うめ! うめ! あ、そうじゃモンゴロー。お主、家でだらだらしててよいのかの?』
「え、なんで?」
『多分じゃが、ダンジョンに黒山羊が出現しておるぞよ。』
え、そうなの!? ってか、なんで分かるの…?
『なんとなーく、気配で分かるのじゃ。あの粘ついた独特の雰囲気を感じ取ってしまう…。』
なにそれ、粘ついた雰囲気…? え、知り合いとかなの?
ツピピーッ! ツピピーッ!
スマホから通知音が鳴り響いた。ツピッターの通知だ。なんだなんだ、通知が鳴り止まないぞ?
ヌ:おいモンゴロー! パステル☆ナイツと高松兄妹のコラボ配信見てくれ!
ヌンチャクニキからのDM。その他、僕の視聴者から大量にメッセージが届いていた。ってか、え? パステル☆ナイツと高松兄妹のコラボ配信!?
P:どうやら奴ら、これからピューマンの集落を襲撃するようです。
「なんだって!?」
急いでDチューブを確認すると。
「このあと12時から、僕たちパステル☆ナイツと高松兄妹によるピューマン殲滅配信を開始しまーす☆」
クソッ! ふざけたマネを…!
そもそもピューマンは平原のバランサー。積極的な討伐はするなと講習でも習ったじゃないか! 個人的な恨みと、力の誇示。それだけの理由で、ニンゲンはここまで傲慢になれるのか。
「…。」
『む、モンゴロー。どこへ行くのじゃ?』
「…ニンゲン共を止めに、ダンジョンへ。」
○
やれやれ、まさかこんな形でコラボすることになるとはな。
「ってことで、よろしく頼むよ☆ 高松タイヨウくん☆」
「チッ、わぁってるよ。」
「おい、馴れ馴れしくお兄様に触るんじゃないですの。」
「うわ~、怖い怖い~!」
チッ、舐めやがって。場所は富士ダンジョン入り口ゲート。パステル☆ナイツと俺たち高松兄妹による、「ピューマン殲滅作戦」の最終打ち合わせの最中だ。
本当ならこんなやつらとコラボなんてしたくなかったんだが、ピューマンの数は非常に多い上に、一匹一匹の戦闘能力が高い。それもそのはず、奴らは俺たちと同じレベルの知能を持っている。当然のように連携してくるし、罠も張る。
今回の作戦、俺たち兄妹とパステル☆ナイツで集落を挟み撃ちにして、黒い疾風を誘い出す作戦となっている。どちらが黒い疾風を討伐するかは早い者勝ち。協力は必要最低限だ。
「はぁ、あいつらとコラボなんて、最悪ですの。バカみたいな理由で炎上してるし、こっちにまで延焼しそうですの。」
「仕方ないだろ、ルナ。ピューマンは油断ならねえ獲物だ。だからこそ、狩り甲斐がある。俺たちの力の証明にもなる。」
「お兄様…。そうなの。強くなるためなら、強さを証明するためなら、どんなことだってしてみせるの。例え、いけ好かないナヨナヨアイドルとだって手を組むの。」
ルナの頭を撫でてやる。そう、俺たちは証明しなければならない。俺たちの強さを。あの日、あのスタンピードの日。俺たちに力があれば。力さえあれば、あんなことにはならなかったんだ。
『ちくしょう…ちくしょうッ! 何が“英雄”だよ! 俺たちの、俺たちの家族を守れなかったくせにッ! ふざけんな、ふざけんなぁあああーーーーッ!!!』
拳を強く握りしめる。
俺たち兄妹は、血が繋がっていない。俺たちは元々施設で育った。施設では常に、暴力を振るわれ続けていた。年上の奴らから、施設の職員から。
力さえあれば。
俺よりも年下の女の子。3歳になったばかりのルナが暴力を振るわれるのは、耐えられなかった。ルナをかばいながら、振るわれ続ける暴力に耐える日々。
そんな中。俺たちを引き取って救い出してくれたのが、母さんだった。もちろん、血は繋がっていない。でも、母さんは本物の愛情を注いでくれた。幸せだった。
その幸せも長くは続かなかった。スタンピードだ。濁流のように押し寄せるモンスターたちによって、俺たちが住んでいたエリアは壊滅した。
生き残ったのは、奇跡だった。当時“英雄”と呼ばれていた探索者が、竜の王と相打ちになり。“聖女”と呼ばれた探索者が、結界を張って群れを食い止めた。
でも。
遅えよ。遅えんだよ。なんでもっと早く、竜の王を殺さなかった。なんでもっと早く、結界を張らなかったんだ。
何が英雄だ。何が聖女だ。クソ、クソ、クソ無能が。
俺に、俺たちに。
もっと、力があれば。
「母さん、見てて。俺が、俺たちが――。」
「「力を証明して、最強になってみせる(の)。」」
作者のおしり炒飯と申します。
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続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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