第82話 荒しとモデレーター
「あの変質者とのコラボは、さすがに幻滅しました☆」
「ね~、僕もあれは無理だな~。」
「私も、あれは擁護できません。」
モンゴローたちの配信の裏。同じ時間帯に、パステル☆ナイツたちが雑談配信をしていた。
「ピューマンたちとの仲良しごっこの次は、犯罪者とのコラボって☆ あーあ、推し公言したのがすっごく恥ずかしいよ☆」
「だから言ったじゃ~ん。僕は反対してたでしょ~?」
「まぁまぁ、ソウくん。あまりヒナタくんを責めないでください。でも、ヒナタくん? ここはしっかり、あの発言を訂正しておいた方が、いいのではないですか?」
冷徹な笑みを浮かべるミナト。それを見たヒナタとソウもまた、ニヤリ、と笑みを浮かべた。コメント欄が加速していく。この配信は、メンバーシップ限定配信。
一定額以上の課金を行った者しか視聴することができない、限定配信だった。メンバーシップ加入者には、“騎士団員”の称号が与えられ、ネームIDの横に特殊な紋章が表示される。
「そうだね☆ 僕、神宮寺ヒナタは、モンゴロー推し発言を撤回しまーす☆ あんなめちゃくちゃな人だとは思わなかったんだ☆」
:それがいいよー!
:よかった!
:変態マジで無理
:マジできもい
:おかしいよあれ
:今も配信してるみたいだよ?
「でもでも、僕たちも騙されたみたいなところ、あるよね~?」
「そうですね。まさかこんなことになるなんて、予見は出来なかったでしょう。」
「はぁ~、なんだか嫌な気分だなぁ…☆」
目配せをする、三人。意味深ににやりと、笑みを浮かべた。
「あーあ☆ 彼らの配信に何かが起きて、配信できなくなっちゃえばいいのに☆」
:まかせて!
:騎士団出動!
:パステル☆ナイツに栄光あれ!
:罰与えてやる!
:あいつら許さない
:変態犯罪者だし!
騎士団が、動き出した。
○
「な、なんだこれ…。すごい数の荒らしコメントが…!」
『ガルゥ?(どうしたのだ?)』
「なんじゃなんじゃ、荒らされておるのか?」
僕の配信に、とんでもない数の荒しコメントがあふれかえっていた。普通のコメントがすべて流されてしまい、拾うことが出来ない。イヤホンから無限に流れてくる、「パステル☆ナイツ」の文字。
くっそ、あいつらがまた何かしたのか…! どうやら厄介な信者たちに目をつけられてしまったようで、何か特殊なツールを用いてコメントを連投しまくっているらしい。
ど、どうしたらいいんだ…! これじゃあとても配信を続けられない。
「のぉ、モンゴロー君。モデレーターを雇ったらどうじゃ?」
「モデレーター、ですか?」
モデレーターとは、配信主から一部権限を委譲された者のことで、迷惑視聴者のキックや通報、注意喚起ポップアップの設定などを行うことができる者のことだ。
確かに、僕はモデレーターを雇っていない。これまでの配信では視聴者も多くなかったため、モデレーターの必要性を感じていなかった。しかしここ数日、視聴者が爆発的に増えたことで、若干無法地帯となっていたことがあった。
「まずはモデレーターになれそうな者を募集すると良い。1万人以上も視聴者がいるなら、一人くらいは絶対おると思うぞよ。」
「分かりました! えー視聴者の皆さん! 現在コメント欄が荒らされてしまっています。緊急ではございますが、モデレーターの採用を行いたいと思いますので、僕のツピッターにDMください!」
すると、ぽこぽことツピッターの通知が飛んできた。ちょこちょこ荒しDMも混ざっているが、ふと一人のアカウントが目に留まった。
「ん? このアイコン…。ヌンチャク?」
かつて僕が、シーフカイトの巣で返して貰ったヌンチャクの写真。アカウント名は…。
「え、うそ! ヌンチャクニキ!?」
ヌ:モンゴロー、俺や。ヌンチャクニキや! 実は本業がプログラマーだから、モデレーター業務もばっちりできると思うで!
まさかのヌンチャクニキ、プログラマー。え、プログラマーやりながら新宿ダンジョン後半層に潜ってるの? 普通にすごくない…?
モ:ヌンチャクニキ、ありがとう! 心強いです! 取り急ぎモデレーター権限付与させてもらうから、ID教えて!
ヌンチャクニキ、モデレーターとして採用!
ヌ:よっしゃ、任せとけ!
ヌンチャクニキ就任直後、徐々に荒しコメントが減少していく。だがそれでも、まだまだ人手が足りなさそうだ。他にも何人かDMが飛んできているが、即戦力とは言えない。くそ、今日の配信は諦めるべきか…?
「ふむ、一人では捌ききれんか。おい、PCレベリングニキ。おるか?」
P:ハッ、ここに。
「え、誰!?」
「PCレベリングニキはな、オイラの配信古参勢での。オイラのモデレーターもしているんじゃが、めちゃくちゃ優秀だから貸し出してやるでの。やれるか? PCレベリングニキよ。」
P:お任せあれ。
「え、えぇ…。ちなみに、PCレベリングっていうのは…?」
「ああ、ダンジョンは様々な経験によってレベルが上がるじゃろ? こいつはダンジョンの中でPCをいじくり回すことで、レベル上げしておるんじゃ。」
いや、どういうこと??? どうしたらそんな発想が生まれるの…? よく分からないけど、ぱんじーさんから紹介されたPCレベリングニキ、通称PCニキとヌンチャクニキのおかげで、コメント欄は浄化されていった。
:すげえ
:全部キックしたのか?
ヌ:おうよ、ついでに通報もしておいた
P:だいぶスッキリしましたね
:お前ら何者だよ
:二人が有能すぎる
:今度ニゲテル☆ナイツの配信も荒らしてやるか
ヌ:やめとけ、同類になるぞ
「ヌンチャクニキ、PCニキ、ありがとう! 後でモデレーターとしてのお給料とか相談させてください! ぱんじーさんもありがとう! まさかこんな形で助けられるとは。」
「ひょひょひょ! 気にするな。あ、お礼はピューマンたちの前で全裸で踊る権利をくれれば」
「はい台無し。殺さないでおいてあげるから、それでチャラね!」
「ひ、ひどい…。」
『ガルウゥ…。(一体我には何が起きているのか、さっぱり…。)
:クーガー氏、完全に空気だったな
:ぽかんとしててかわいかった
:途中毛繕いしてただろ
:恐ろしく早い毛繕い。俺でなきゃ見逃しちゃうね
:そのシーンはキャプチャーしておきました。ありがたく使わせていただきます
:劣化ネキさぁ
:何に使うんだよ
:あーもうめちゃくちゃだよ
「よーし、みなさんのおかげで配信続行できそうです! このまま次のターゲット、探していきたいと思います!」
視聴者数:9,964人
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




