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モンスター系ダンジョン配信者  作者: おしり炒飯


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第8話 ゴブリン

『ニンゲンダッ! ニンゲンダッ!』


「うわぁ! な、何々!?」


 慌てて背後を振り返ると、棍棒を持った、100cmほどの緑色のモンスターがいた。耳は尖り、口からは黄ばんだ牙が覗いている。粗末な腰蓑のような物を履いて、僕を指さしている。


「ゴ、ゴブリンだぁ!!」


 僕は感極まって、ゴブリンに急接近。ゴブリンの周りをぐるぐるまわりながら、観察を開始した。だって、ゴブリンだよ? ゴブリン! いろんな物語で登場する、定番中の定番モンスター!


「嬉しいなぁ! ついに本物を見れた! 立川ダンジョンのメインターゲットは、君だったんだよ、ゴブリン君!」


『エ、エ、オマエ、ニンゲンカ…?』


「人間だよ! モンスター好きの人間!」


『エェ…、モンスター…? ドッチダ…?』


 ゴブリンは僕を見て首をかしげている。すごい、本当に緑の肌。それに、ちゃんと会話が成立している! 今までは漠然とした意思のようなものが流れ込んでくる感じだったけど、明確に会話が成立するのは初めてだ!


「ねぇ、この棍棒とか腰蓑って自分たちで作ってるの? それとも、ダンジョンに生み出された時から持ってる感じ? 初期装備みたいな感じ? 君たちはこのダンジョンの頂点捕食者だと思うけど、普段は何食べたりしてるの? 噛みつきイナゴ? 手軽に補給できるタンパク質源は噛みつきイナゴかなって思ってるんだけど! あ、それとも、そもそも食事は必要ない? そのあたり、まだ解明されて無くて気になるんだよねぇ。モンスターはダンジョンによって生み出される自然発生と、生殖によって生み出される繁殖発生があると思うんだけど、君は~」


『ハ、ハワワ…』


 ゴブリンが目を回している。し、しまった! ついついオタク特有の早口が出てしまった…!


 「ごめんごめん、急にべらべらしゃべっちゃって…!」


 『オレ、ワカラナイ~…。』


 ゴブリンは人間で言う3歳~5歳程度の知能があると言われている。故に、最低限の会話が成立していると思われる。


 『オマエ、タイチョー、アワセル。』


 「え、タイチョー? もしかして、隊長?」


 隊長…? ゴブリンに隊長なんているの?


 『オマエ、ツイテコイ。』


 そう言うと、ゴブリンはすたすたとどこかへ向かって歩き始めた。


 「え! ちょ、ちょっと待って!」


 僕は慌てて、彼(彼女?)の後を追った。



 ○



 ゴブリン君の後を、小走りでついていく。途中、ゴブリン君がぜーぜーし始めたので、適宜お水を渡してあげたりもした。後半はもう、完全にマラソンランナーを応援する人になっていた。

 

 一時間ほど走ると、草原の真ん中、開けた場所に藁小屋のようなものがいくつか見えてきた。


 『コ、ココダ。ゼーッ、ゼーッ…。オマエ、ココイロ…。』


 そう言うと、ゴブリン君は一番大きな小屋に入っていった。僕はこの、ゴブリン村が興味深すぎて、背伸びしたりしながらちらちらと周囲を見回していた。


 立川ダンジョンにおいてゴブリンは、ボスを除いて一番強い種族と言える。まぁ、単体危険度で言えばエッジラビットの方が上だが、ゴブリンは知能があり、また集団で現れることも少なくない。それに、ファンタジー作品よろしく、本来は人間を積極的に襲うモンスターだ。全国的にも、毎年数百人の犠牲者が出ている。


 「立川ダンジョンは小規模ダンジョンだし、ゴブリンの数自体はそこまで多くないんだろうな。噛みつきイナゴとかと比較して経験値も稼ぎやすく、一体あたりの魔石単価も高いから、若い探索者たちに積極的に狩られてしまう。あのゴブリン君も、自然発生で生まれたんだろうなぁ。」


 モンスターは自然発生と生殖発生、2種類の発生方法が判明している。自然発生とは、ダンジョンによって直接生み出されるパターン。


 ダンジョンにはモンスターの数なんかを一定に保つような機能があるらしく、規定の個体数に満たないときは何らかの方法で直接、生み出されるようだ。


 生殖発生はその名の通り、一般的な生き物と同じように生殖行為で増えるパターン。昆虫型のモンスターなんかは、こっちの方が一般的だ。なお、スライムなど、自己増殖する例外パターンも存在している。


 そんなことを考えていると、小屋から一回り大きなゴブリンが現れた。しかも、腰に剣を刷いており、簡易的な皮鎧まで装備している。


 「まさか、ゴブリンソルジャー!?」


 本来、立川ダンジョンには生息していないはずの、ゴブリンの上位個体。ダンジョンにおいてはこのように、ごくまれに「異常個体」や「特殊個体」と呼ばれる、上位のモンスターが出現することがある。


 『ニンゲン、オマエ、ナニシニキタ。』


 ゴブリンソルジャーの眼光は鋭い。しかし、明確に敵対している、という訳ではなさそうだ。ただ単純に、自らと、自らが率いるこの群れに危険が及ばないか、判断するために問うている、と言ったところか。でも、そんなことはどうでもいい!


 「まさか、立川ダンジョンでゴブリンソルジャーに会えるなんて…! うわぁ、他のゴブリンよりすごい筋肉質! 剣、剣持ってるし! 鉄製? うーん、どうやって手に入れたんだろう。というか、このダンジョンに潜る人で、ゴブリンソルジャーに勝てる人っているのかな? すごいなぁ、図鑑とか動画で見たより迫力を感じる…!」


 『ナ、ナンナンダ、オマエ…。』


 ゴブリンソルジャーは人間でいうところの、8~10歳児程度の知能があるため、普通のゴブリンよりも会話がスムーズに感じる。モンスターといえども、群れの長として責任感みたいな物を感じているようだし。


 「あ、ごめんごめん。僕はただの、モンスター好きな人間だよ。ただ、君たちのことが詳しく知りたいだけなんだ!」


 『オレタチヲ…?』


 「うん! あ、食べ物とか持ってるけど、いる? あげるけど、その代わりに君たちのことを教えて欲しい!」


 ゴブリンソルジャーは腕組みをして、考え込む。そして。


 『ナラ、■■■■ヲクレ。クレタラ、オシエテヤル。』


 「…え?」


 ゴブリンゾルジャーは、笑みを浮かべた。鋭い牙が連なっている。よだれが一筋流れ出た。その笑みは、凄絶なモノで。


 それは、“モンスター”の、笑みだった。


作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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