第76話 歓迎の宴
『これより、我らを救った人間、モンゴロー歓迎の宴を始めるッ!』
『『『ガルルルルルルルルゥーーーーッ!!!』』』
「わぁ…!」
集落に帰り着くと、すでに宴の準備が進められていた。集落中央の広場には巨大なたき火が用意されており、多くの料理が作られている。
ガズルさんの音頭を皮切りに、太鼓の音と、独特な音色の弦楽器が奏でられはじめる。また、音楽に合わせてピューマン達が口笛を吹いて歌っている。
『あの太鼓はババブの木とワイルドホーンの革で、あの弦楽器はグロムスロトの革をネックウィッパーと呼ばれるモンスターの骨に貼り付けて作ったものだ!』
「へぇ~!」
ピューマンたちは、狩った獲物のすべてを有効活用する。すごい、まさか楽器まで作っているとは!
『モンゴロー! 料理いっぱい持ってきてやったぜ! わざわざあたしが持ってきたんだ、全部食えよ~?』
「ブチ、ありがとう!」
目の前に、大量に並べられた皿。すごい、見たこと無いものばかりだが、どれも美味しそうなにおいがする。めちゃくちゃお腹がすいていたので、次から次ヘと平らげていく。うん、どれもうまい!
『良い食べっぷりではないか、モンゴロー。』
ガズルさんが、何かの角でできたコップを片手にやってきた。気分よさげだから、お酒を飲んでいるのかもしれない。
「どれもめちゃくちゃ美味しいです! 僕のために宴を用意してくれて、ありがとうございます!」
『よいよい、モンゴローには迷惑をかけてしまったからな。それに、これは皆の快気祝いでもある。助からなかった命もあるがそれでも、これだけのピューマンたちが救われたのだ。妻も喜んでいることだろう。』
「ええ、きっと喜んでいると思います。お優しい方だったと、お聞きしています。」
『ああ。ロロは、妻は、本当に優しかった。』
ガズルが優しげに、懐かしむように微笑んだ。その目はどこか遠くを見つめているようだ。
『母上は優しかったが、怒ると父上よりも恐ろしかったんだ。』
クーガーの言葉を聞いたガズル。優しげだった表情が、何故か恐怖の色に染まった。え、えぇ…。どんだけ怖かったの…?
『我がまだ幼かった頃、父上はとある人間の強者と何度も戦っていたらしい。あまりにもその人間を倒すことに躍起になるものだから、怒った母上は父上の尻の毛を』
『あーーーーーーーーッ!!! そうだモンゴロー!! その人間について、お主に話しておきたかったのだ!!!』
誤魔化したな。大きい声を出して。尻の毛を一体どうしたんだろう…。
『お主の青い鎧姿。あの姿がな、その人間と瓜二つだったのだ。』
「えっ?」
『ワシの終生の好敵手。名も知らぬ青き戦士。あれは、お主の父だったのではないか?』
父さんが、ガズルさんのライバル…? ああ、そうか。思い出した。かつて父さんが僕に話してくれたことがあったっけ。
『ゴロウ、父さんにはな、モンスターのライバルがいるんだ! 強いんだぞ~? ダンジョンで会う度に戦っているんだが、いつも決着がつかないんだ。』
『もう、あなた。あのピューマンにこだわるの、やめてほしいんだけど。いつも回復させられる私の身にもなってほしいわね? また、電撃魔法で全身脱毛させられたいのかしら。』
『あ、あれだけは…、あれだけは、勘弁してくれぇ…!』
うん、父さんも脱毛させられていたんだった。あはは、なんだか面白いな。父さんとガズルさん、そっくりじゃないか。
「うん。ガズルさんの好敵手、守野ヒデオは僕の父です。この剣にも、見覚えがありませんか?」
僕は聖剣アロンディートを、ガズルさんに手渡した。
『ヒデオ。そうか、ヤツの名はヒデオ、と言うのか。懐かしいな、この剣も。何度斬られたかわからないぞ。』
そう言うとガズルさんは、懐かしむように、そして戦い前のように、不敵な笑みを浮かべながらアロンディートを撫でた。
『ヤツは、ヒデオは、もういないのか。』
「はい。父は、スタンピードで命を落としました。多くの人々を守るために戦って。母と共にドラゴンロードと戦って、相打ちに。母も、そのときに。」
『…そうか。あのときに、死んだのか。あの日のことは鮮明に覚えている。この平原すべてがドラゴンロードにおびえて、恐慌状態に陥っていた。』
語られた、モンスター側視点のスタンピード。怒り狂ったドラゴンによって、知恵無きモンスターたちは濁流となってこの平原を駆けた。ピューマンたちは当時の集落を放棄して、ひたすらに逃げ続けたそうだ。
『それにしてもヒデオめ。まさか、あのドラゴンロードと相打っていたとは。ヤツらしい死に様だ。妻を亡くしてしまったこと、モンゴローを置いていってしまったことは、後悔しているだろうがな。』
「あはは、きっと天国でも、二人でダンジョンに潜っていますよ! それに、僕は感謝しています。父さんたちが僕や、おじいちゃんおばあちゃん、多くの人たちを守ってくれたおかげで、こうしてガズルさんやクーガーたちにも会えたんですから!」
ガズルさんが目を細めた。クーガーは、どこか気恥ずかしそうに、尻尾を揺らしている。
『ガルフフフ、そうだな。』
そう言うとガズルさんはわしゃわしゃと、僕の頭を撫でた。その手はもふもふしていて、大きくて、肉球がぷにぷにしていて。
そしてとても、暖かかった。
『スキル獲得:ピューマン』
―――――
スキル:ピューマン
①口笛
口笛の音色で意思疎通を行える。
②俊足
③潜伏
④連携
⑤爪術
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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