第71話 お礼
ガズルさんとの戦いから、二日が経過した。この二日間は特に何もせず、だらだらとしていた。いや~、本気で戦うと精神的な疲労がでかくて、しばらく何もやる気が起きなくなっちゃうんだよねぇ。
体力、気力が完全復活した今日。いよいよピューマン達の様子を見に行く日だ。頼むからみんな、治っていてくれ…!
○
『おお! モンゴロー、我が友よ! 待っていたぞ!!』
『モンゴローだ!』
『ありがとう、あんたのおかげだ!!』
ピューマンの集落に活気が戻っていた。まだ痛々しい姿ではあるものの、多くのピューマンたちが笑顔で元気に歩いていた。
子供達が駆け回り、女性ピューマンたちが洗濯をしている。男性ピューマンたちは狩りの腕を取り戻そうと、必死に訓練を繰り返している。
ああ、良かった。本当に、よかった。
クーガーも笑顔だ。ブチも、他の皆も。すれ違う度に、感謝の言葉を投げかけられる。子供達からは花束まで貰ってしまった。
『みんなお前のおかげだ、モンゴロー。本当に感謝している。この景色は、皆の笑顔は、お前が取り戻してくれたんだ。』
僕が? そうか。僕が、この光景を取り戻したのか。
心が、暖かくなった。みんながまっすぐ、僕に感謝してくれている。種族を超えて、人間である僕に。
視界が、涙で潤んだ。
『ん? お、おいモンゴロー。泣いているのか?』
「い、いやぁ。なんだか嬉しくなっちゃって。みんな元気になって、本当に良かった。」
『優しいんだな、お前は。あ、そうだ。感動しているところ悪いが、父上に呼ばれているからこのまま連行させてもらうぞ~。』
涙ひっこんだわ。急に手汗がすごい。僕、殺されない?
こうして僕は、村長であるガズルさんのテントまでドナドナされるのであった。
○
『すまんかったぁあああああああああッッ!!!』
え、えぇ…。テント入った瞬間謝罪でさすがに困惑である。
「あ、頭をあげてください! こっちこそ勝手にすみませんでした。異種族の僕が訳の分からない薬を飲ませ歩いていたら、怒るのも当然です。」
『悪いのはワシだ。お主にボコボコにされてから、ようやく目が覚めた気分だ。ここ数年、妻のロロに先立たれてから、ワシはどうかしていた…。』
『父上…。』
そうか、愛する人を亡くしておかしくなってしまったのか。オババやクーガーたちの話によると、それ以前のガズルさんは快活で豪胆で、みんなの親父! って感じの人だったらしい。
『今日からは心機一転、村長としてまた頑張っていこうと思っている。まぁ、近いうちにクーガーへと跡目を譲ろうと思っておるがな。』
『父上!?』
世代交代か。ガズルさん、めちゃくちゃ強かったけどすでに結構なお歳らしい。全盛期は今の倍以上強かったとのこと。いや、強すぎでしょ…。
『もちろん、ただでは譲らん。我らピューマンの宿願でもあり、豊穣の祭り。“黒山羊様”の討伐を果たしたときにこそ、跡目を譲ろう。』
「黒山羊様、ですか?」
黒山羊様。おそらくギルド講習でも名前の挙がっていた“黒山羊”と同一の存在だろう。
『ああ。我らピューマンは黒山羊様を信仰していてな。かの存在を打ち倒して強さを認めて貰い、褒美として豊穣をもたらされることを至上の喜び、そして宿願としているのだ。』
なるほど、まさか黒山羊がピューマンたちの信仰対象だったとは。うーむ、めちゃくちゃ興味深い。
『そして、かつて黒山羊の討伐を成し遂げた唯一の英雄。それこそが、若き日のガズルなのじゃ。』
ガズルさんが髭を揺らして得意げだ。オババは歴代村長の補佐的なことをしており、当時のことも詳しいらしい。
「黒山羊様かぁ。気になるなぁ、どんな感じなんだろう。お話してみたいなぁ。」
『ガルフフフフフ! そんなことを申したのはお主が初めてだぞ、モンゴロー。』
『お話してみたいとは、面白いことを言うな。めっぽう強くて何人も犠牲者が出る。しかしその心根は優しいのだと、我は思う。』
犠牲者が出るのに、優しい?
『不思議そうな顔じゃな? それもそうか。そもそもオババらピューマンは、戦いの中で死ぬことを誉れだと思うておる。そして黒山羊様を打ち倒したときには、実際に豊穣がもたらされるのじゃ。ほれ、村近くにオアシスがあるじゃろう?』
「ああ、いつもクーガーたちと合流していたところか。」
『そのオアシスはな、ガズルが黒山羊様を打ち倒したときに生まれた場所なのじゃ。』
ほほーう。すごいな、実際に豊穣をもたらすとは。概念的では無い、本当の意味での神様、か。
『そんな訳で、我らは黒山羊様の再臨を待ち望んでいる。神は不滅、何度でも蘇る。かの神が復活したとき、我らはそれを感じ取ることができるのだ。』
数年に一度くらいのペースで不定期に復活して、暴れ回るらしい。クーガーたちも何度か挑んだが、返り討ちにあったそうだ。これに関してはギルドで学んだ情報と一致している。
『さて、と。話が脱線してしまったが、モンゴロー。お主をここに呼んだのは他でもない。ワシらピューマンを救ってくれた礼をしたいと思っていてな。まず、お主に限り、この集落の出入りを許可する。それと、この家の隣のテントを自由に使ってくれて構わない。』
「え、お礼なんてそんな! 家まで!?」
『モンゴロー、どうか受けてくれ。お前は我らを救った“英雄”なのだ。出入りの自由と家はただのついでだ。一つ、我らに出来ることはなんでも叶えてやろうと思っている。どうだ、何かないか…?』
君もいつか、誰かにとっての、“ヒーロー”になれる。
影の英雄の言葉が、蘇った。そうか、僕は。僕は彼らにとっての、ヒーローになれたんだ。
え、ってか今なんでもするって言った?? う、うーん。あ、そうだ!
「それなら、“現地ガイド”をお願いします!」
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
面白ければぜひ、リアクションと評価いただけると嬉しいです。
また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




