第70話 それぞれの思惑
あっっっぶねぇええ~~~~~~~~!!!
なんかもう、テンション上がってそのままの勢いで殺っちゃうところだった!! いやぁ~、マジで危なかった。強者との戦いは楽しいけど、我を忘れてしまうという危険性があるね。
クーガーが止めてくれなかったら、本当に危なかった。というか、クーガーしれっと僕の一撃止めてたけど、多分ハチャメチャに強いな??
戦いの後、変身解除した僕はクーガーとガズルさんにスライディング土下座で謝罪した。ガズルさんはなぜか優しい目をしていて、
『モンゴロー、だったな。お主の勝ちだ。好きにしろ。』
とのことで、この村での自由行動を許可された。気絶したガズルさんはピューマン達に搬送されていった。
強者こそ正義、みたいな価値観があるっぽいな。
『モンゴロー殿! こんな感じで塗ればよいじゃろうか!?』
「あ、うんっ! うわ、塗るのうまいですよ、オババ!」
『ひゃひゃひゃ! 簡単な薬くらいなら、オババでも作れるでの!』
オババとはめっちゃ意気投合した。と、いうのも。
「オババさん。薬の調合とかってお願いできる? それと人間の呪術とか興味あったりする? 協力してくれるならお礼として、写真付きの資料集とかでよかったら、持ってくるけど。」
『え、マジ?』
といったやりとりがあったのだ。日常的にモンスターや生き物の骨とか使った呪術を使うため、生きものに詳しく、薬草なんかを集めるのが好きだったようで盛り上がったのだ。
一方で謝罪もされた。ガズルの暴走を止められず、すまなかった、と。
硫黄軟膏の作り方を伝授したところ、硫黄の採集場所まで把握しており、完璧にマスターしてくれた。現地の薬草については、オババの方が詳しかったくらいだ。
『薬の投与、全員終わりました!』
『塗り薬も8割方終わったわよ!』
「おっけー! 僕も塗るの手伝うよ!」
10分後、ついに全員への治療が完了した。これから二日間様子を見ることになるが、おそらく大丈夫だろう。
二日後にまた来ることを伝えて、感謝されつつ僕は帰宅の途についた。
○
『ブモォーーーッ!!!』
土煙と共に、ワイルドホーンの巨体が迫る。魔力を纏ったその角の威力はとてつもない。正面からぶつかれば自動車ですら、ぺしゃんこになるだろう。
だが。
「ヘッ! 食らいやがれッ!」
振り抜かれた、巨大な“斧”。炎を噴き出しながら円を描き、ワイルドホーンと真正面から激突する。
轟音。いや、それはもはや爆発音であった。
ズシィー、ン。
土煙が晴れる。
地面に倒れ伏していたのは、ワイルドホーンであった。
「これで“群れのリーダー”か。こんなんじゃ、話にならねえぜ。」
「お兄様、こっちも終わりましたの。」
ふわり、と。白い鎧姿の青年の横に、美しい少女が着地した。ゴスロリ服が風でパタパタと揺れている。その手には、巨大な“鎌”が握られていた。
ぽたり、ぽたりと。鎌から血が滴っている。
:つっよ
:ルナちゃんマジ天使すぎる
:さすが高松兄妹
:ワイルドホーンのリーダーと正面から打ち合って勝つとか、化け者すぎる
:二人だけで群れを殲滅しやがった…
:化け物兄妹
「おいおい、俺を化け物扱いするのはいいが、ルナを化け物呼ばわりは許せねえな?」
「ルナは気にしませんの。お兄様が化け物なら、私も同じ化け物がいいの。」
「おいおい。照れるじゃねえか、ルナ。」
「お兄様…。」
:まーた始まったよ
:高松兄妹イチャイチャカウンター、94
:もうすぐ100いくやん
:尊い
:ちゅーしろちゅー!
「おっと、これ以上は見せられねえよってな。ワイルドホーンの群れは殲滅した。この程度じゃ俺たちは止められねえ。」
「お兄様と私は最強なの。やっぱり、“奴ら”くらいじゃないと話にならないの。」
:奴ら?
:おいまさか
:いや待て
:おいおいマジで狙うの?
「“黒い疾風”、そして“黒山羊”。」
「絶対に見つけ出してその首、刈り取ってやるの。」
周囲には、おびただしいほどの、ワイルドホーンの死体。
タイヨウの持つ戦斧が、その輝きを増した。
ルナの持つ鎌が、その輝きを妖しく反射していた。
○
「さぁ、みんな☆ 僕たちに力を貸してっ☆」
「お願い~、みんなの力が必要なんだ~!」
「君たちの願いが、私たちの力になる。今ですッ!」
:スパチャ:\10,000 受け取って~!
:スパチャ:\20,000 ヒナタ君、絶対勝ってねっ!
:スパチャ:\5,000 ミナト様―!!!
:スパチャ:\30,000 ソウきゅん負けないで!!!
『キシャァアーーーーーッ!!!』
巨大なヘビ型のモンスターが威嚇音を立てる。尻尾の先端をバチン、バチンと地面に叩きつけ、鎌首をもたげている。
「みんなありがとう☆ さぁ、ライブの始まりだっ☆」
巨大ヘビが踊りかかった。妖しげな黄色い液体を滴らせた牙が、パステル☆ナイツに襲いかかる。しかし、マイクを片手に歌いながら、華麗なステップでひらひらと躱していく。
汗が煌めき、ラメ入りのチークがドローンから照射される光を反射する。
「バキューンッ☆」
ヒナタの指先から光が迸り、巨大なヘビを貫いた。
「ばんば~んっ!」
ソウの指先から風の弾丸が解き放たれ、巨大なヘビの鱗を斬り裂いた。
「ズバンッ。」
ミナトの指先から、超高圧の水球が発射され、巨大なヘビの肉をえぐり取った。
『シャシャーーーーーッ!』
のたうち回る巨大ヘビ。鞭のように尾が振るわれるが、パステル☆ナイツには当たらない。
「さぁ、フィナーレだっ☆」
:来た来たっ
:待ってた!
:早く撃ち抜いてーっ!
:スパチャ:\30,000 ヘビ気持ち悪い! 早く殺しちゃって!
:スパチャ:\4,000 撃て撃てっ!
パステル☆ナイツが集結し、三人で指を合わせる。光、風、水が渦を巻いて融合し、唸りを上げる。
「みんな、いくよーっ☆ せーのっ☆」
「「「―――<パステル☆ナイツ☆ショット>――ッ!」」」
:パステル☆ナイツ☆ショットーーッ
:スパチャ:\5,000 パステル☆ナイツ☆ショットーーー!
:スパチャ:\25,000 ショットーーーーー
:スパチャ:\45,000 いけーーーーー!!!
:きゃーーーーーーーーー
その光線はヘビの頭を吹き飛ばした。高空を舞うドローンからはキラキラとメタリックな紙吹雪が舞い、ド派手な演出となっていた。
(ふっ、この程度の敵は倒せて当然。俺を際立たせるための雑魚二人も、まぁまぁ使えるようになった。)
光の中、ヒナタの口角がつり上がる。もちろん、カメラには写っていない。
(見とけよ? モンゴロー。俺は必ず、“黒い疾風”も“黒山羊”もぶっ殺して――)
光が、ほどけるようにして消えていく。
(必ずや、配信者のトップになってやるッ!)
光魔法に似合わぬ、黒い笑みだった。
○
「ち~んちちっち~おっぱぁ~い、ぼよんぼよ~ん♡」
変態だ。真っ赤なパンツのみを身に纏った老人が、ふらふらと踊りながら“平原”を歩いていた。
月明かりが照らし出すその裸体は、ローションのようなものでぬめついて、妖しい光を放っていた。
「およ? およよよ?」
髭をシコシコとしごきながら、老人は指わっかで遠方をじーっと見つめた。
「あれは、ピューマンの集落か! ほうほう、流行っていた病気も治っていると見える。」
ニッチャア。汚い笑み、ガミースマイル。
「次のターゲット、決定じゃあ~~~!!!」
赤いパンツ越しに、ナニカが、脈動していた。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




