表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二章完結】モンスター系ダンジョン配信者〜ニンゲン嫌いの僕は、モンスターを布教しながら最強となる〜  作者: おしり炒飯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/104

第67話 再訪と——

 三日後。今日はピューマンたちの経過確認の日だ。今日の経過次第によっては、すぐにでもピューマンの集落で大規模な薬投与を実施する予定でいる。


 ギルドに向かって足早に歩く。今日は休日ということもあって、いつもより人が多いなぁ。


 「ねぇ、あの人ってさ…。」


 「あ、この前テレビでやってた?」


 う、うーん。なんか最近、やたらと見られている気がする。なんだろう、思い当たる節がない。大人気配信者って訳でもないし…?


 「ん? あ、おいお前!」


 「はい?」


 振り向くとそこにいたのは。


 「お久しぶり? ですの。」


 試験ぶりに遭遇した、高松兄妹であった。うわっ、手つないでるし。すごいなぁ、色々…。


 「お、お久しぶりです。覚えてくれていたんですね、僕のこと…。」


 「ああ、悪い! 最近まで完全に忘れてたんだが、“あの番組”見て思い出してよ! そんでたまたま見かけたもんだから、声かけちまった。」


 「ほぼ空気だったあなたが、ここまで話題になるなんて思っていませんでしたの。パステル☆ナイツには感謝した方が良いの。」


 え、なに? ど、どういうこと??


 「ねぇ、あそこにいるのって高松兄妹じゃない!?」


 「え、話してるのって、“パステル☆ナイツの推し”の人じゃん!」


 な、なんだ!? 何が起きてるんだ!?


 「ははは! お前もすっかり有名人じゃねえか! ま、注目される者同士がんばろうや、バンゴロー!」


 「まぁ、お兄様と私には遠く及ばないとは思いますけれど。頑張るといいの、ドンゴロー。」


 そう言うと高松兄妹はいちゃいちゃとしながら去って行った。マジで何が起きてるんだ…? パステル☆ナイツの推し? 


 周囲の注目が大きくなり、ざわざわとし始める。ここにいたらまずい、と思い、僕はギルドの更衣室へと小走りで逃げた。



 ○



 「くっそ~、どういうつもりだよあいつら。勝手に僕を紹介して…。」


 平原を駆け抜けるが、その足取りは若干重い。と、いうより、余計な情報が思考を邪魔してしまっているのだ。


 更衣室で調べたところ、どうやらパステル☆ナイツがバラエティ番組で、僕を「推し」として紹介したらしい。もちろん、僕には無許可で。僕が推し? そんなわけない。絶対何か、裏がある。


 番組側からも一切許可取りはされていない。完全に無断使用された形だ。法律的にどうなの? それって。


 怒りのあまり問い合わせフォームから抗議文を送ったが、どうせ取り合ってもらえないだろう。まぁ仕方ない。次の配信の時にでも、チクチクッと刺しておくかぁ。


 「はぁ、大事なときに限ってこういう嫌なことが起きるんだよなぁ。」


 パチンッ! 頬を両手で叩き、強制的に思考を切り替える。今はピューマンたちのことが一番大事だ。こんなくだらないことに、ニンゲン如きに思考を割いている場合ではない。


 もうじき、オアシスが見えてくるはずだ。



 ○



 『来た! おーい、モンゴローッ!』


 オアシス到着早々、元気にジャンプするブチの姿が見えた。他にも、治験を行ったピューマンたちが揃っている。こちらに気づいたみんなは、大きく手を振ってくれている。


 「みんな、お待たせ! 病状はどう!?」


 『モンゴロー、ありがとう! 我ら全員、症状がとても緩和されている! 見てくれ、体毛も復活し始めたのだ!』


 クーガーが嬉しげに、上半身を見せてくれた。出血は収まり、たしかに黒々とした美しい体毛が生え始めていた。他のみんなも同様に症状が改善され、肉体的にも精神的にも元気になっていた。


 『モンゴロー! あんたのおかげだ! 今のあたしなら、隊長の最高速度にだってついて行ける自信があるよ!』


 『ふふふ、バカめ。我もまた、完全復活しつつあるのだ。その速度は、音速をも超える…ッ!』


 うん。ちょっとテンションがおかしくなっているな? 特にクーガー。バカめ、じゃないのよ。まぁ、集落が助かるというのも相まって、めちゃくちゃ嬉しいんだろうけどね。


 「よし、それじゃあ集落のみんなにも薬を使おう! 僕のアイテムボックスには、まだまだ大量の薬が残ってる! これ以上重傷者を増やさないために、死人を出さないために、急ごう!」


 『『『おうっ!!!』』』



 ○



 『う、あ、あぁ…。』

 

 「もう大丈夫ですよ、ほら、これを飲んでください。」


 ここはピューマンの集落、重傷者が集められているテント。前回訪れてから、衣類や寝具などの消毒と個別管理を徹底してくれていたおかげで、感染拡大は止められていた。


 『こっちの列、錠剤の服用終わりました!』


 『よし、全員の服用が完了したら、塗り薬を塗っていくぞ! モンゴロー、外の塗り薬を運んできてくれ!』


 「オッケー!」


 テントの物陰に大量に置かれた段ボール。塗り薬が入った箱を持ち上げようとした瞬間。



 『ふむ、どうやら自殺志願者だったようだな? ニンゲン。』


 「ッ!?」


 濃密な死の気配。反射的に上半身を反らせてそのまま飛び上がり、広場の中央へと着地した。


 視界の先には、腕を振り抜いた姿勢の、隻眼のピューマンがいた。


 「…村長。」


 『ワシは言ったはずだ。二度と、この集落に足を踏み入れるなと。』


 鋭い眼光が僕を射貫く。有無は言わせぬ、という意思。


 「…薬を手に入れました。ピューマンの皆さんを救うことが出来る薬です。適切な処置をしなければ、この病気を根絶することはできない。故に僕は、ここにいます。」


 『フン、誰がそのようなことを頼んだ。ワシは、次は殺すとそう言ったはずだ。ピューマンの男に二言はない。』


 ゴウッ


 黒い巨体、赤い隻眼が残像を残して、風と共に迫り来る。


 ガシィンッ


 『おやめください、父上ッ!』


 もう一つの黒い体が、割って入る。


 『この者は我らを救うために来てくれたのです! 殺されるかもしれないと知りながらも、我らのために薬まで用意してくれたッ! そのような勇敢な男を、何故殺そうとするのですかッ!』


 『黙れ、クーガーッ! 愚かな我が息子よ。村長はワシだ。ニンゲンなどに心を許すとは、この軟弱者めがッ! ピューマンの風上にも置けぬ男よ、貴様も死にたいかァッ!』


 それは、絶望だった。すべてを諦めてしまった男の、感情の嵐だった。愛する者を失い、集落を守れず。戦いではなく、病にむしばまれて死んでいく。


 竜巻のごとき風が、“黒い風”が渦巻いて、クーガーの全身を斬り裂いた。


 『ぐぁああああああっ!』


 風が爆発するように炸裂し、クーガーがぼろ切れのように吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


 『ガフッ! ち、父上…ッ。』


 クーガーは、優しすぎた。己の肉親を打ち倒すことなど、出来なかった。しかし、その男は違った。彼はすべてに、絶望していた。


 『“ガズル“、よすのじゃ! この人間、オババの予言によれば』


 『黙れェェッ!! 貴様も殺すぞォッ!』


 びくり、村長を止めようとしたオババが硬直する。


 『ガズル、お主。それほどまでに…。』


 いつの間にか、周囲には集落中のピューマンたちが集まっていた。オババが村長を見つめる。その瞳には複雑な感情が込められていた。


 『ガルルフフヒューッ! さぁ、待たせたな、ニンゲンンーッ!』



 失うものは、もう何も無かった。



 『このワシ、“黒い疾風”ガズルが、貴様の命の灯火を吹き消してくれるッ!』


 

 黒い風が、啼いていた。


作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。


面白ければぜひ、リアクションと評価いただけると嬉しいです。


また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おぉーちゃんと効くんですね人界の薬。 幕間でパステルが敵視してた割に、本編で推しとか言ってるから??でしたが、何を企んでいるのか気になりますね。 こうやって見ると隣人としてやっていけそうに見えますけど…
ところがどっこいモンゴロー君は決して弱くはない訳で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ