第66話 薬
「今回のゲスト、パステル☆ナイツの皆さんは、今ハマってるものがあるって聞きましたけど?」
「はい、そうなんです☆ 実は僕たち全員、とあるダンジョン配信者にハマっておりまして☆」
とあるバラエティ番組、パステル☆ナイツの面々がゲストとして登場していた。芸能人や有名人のハマっているものを紹介する、というコンセプトの番組のようだ。
「配信者が配信者にハマることもあるんですね! ではどんな配信者なのか紹介してもらってもいいですか?」
「はい☆ 僕たち、パステル☆ナイツがハマっているものは…。」
「「「モンスター解説系配信者の、モンゴローさんです!」」」
映像が切り替わり、モンゴローの配信切り抜きVTRが流れる。
『こんごろー! モンスター解説系配信者の、モンゴローです!』
「えーっと、モンスター解説系配信者っていうのは、どういうものなんですか?」
「彼は特殊なスキルを持っていて~、モンスターに近づいたりすることができるんです~。」
「そのスキルを活用して、モンスターの詳細な生態なんかを間近で解説したりしているのです。実に興味深い。」
ざわつくスタジオ。
「へぇ~、例えばどんな感じで解説してんの!?」
「例えば、酸性のスライムに指を突っ込んだり、マージクロウと風魔法で遊んだりとかですかね☆」
「「「えぇーーーっ!」」」
実際に紹介映像として、該当シーンが流れると、スタジオからは悲鳴と困惑の声が上がった。
「ブハハハハハ! モンスターを倒せモンスターを!」
それから十分以上、パステル☆ナイツによるモンゴローの「布教活動」は続いた。
○
「守野様、お待たせいたしました。こちらが注文の品です。中身の方、御確認ください。」
発注から一週間、ついに疥癬症の薬が届いた。ギルドのカウンターにて、大量の段ボールを受け取り、すべてアイテムボックスへと収納していく。
「確認しました、ありがとうございます!」
かなり痛い出費になったが、仕方ない。それに、僕が想像していたよりも富士ダンジョンで採れる素材は高額で取引されているようで、ワイルドホーンの抜け落ちた角や、スプリントモニターの抜け殻、剥がれた鱗は、それぞれ五点ずつで50万円ほどになった。
また、鼻エノキに関しては、マニアの方に30万円で買い取ってもらえた。僕が思っていたより、鼻エノキ界隈は広くて深いらしい…。
「よし、早速ピューマンたちの元に向かおう。」
僕は更衣室へと早足で向かった。
○
草原を走る。ピューマンたちの集落の場所は覚えている。もちろん、誰にも言っていない。まぁ、何人かの探索者は知ってそうだけど。まさか病気が蔓延しているとは思っていないのだろう。
「もう少しで、見えて来るはず」
『おい、止まれニンゲン!』
お、ちょうど良いことに見張りか哨戒中のピューマンが僕を見つけてくれたようだ。あ、このピューマン、ブチじゃん!
「やぁ、ブチ! 薬、手に入ったから持ってきたよ! っていうかこの前、僕のこと無視したでしょ!?」
『いや無視するでしょ!? なんか一人でブツブツ言ってたし! ってかそんなことより、薬が手に入ったのね!? ちょっとここで待ってて! 隊長呼んでくるから!』
そう言うとブチは、集落の方へと走っていた。元気そうに見えたが、毛が抜け落ちた範囲が広がっていた。おそらく、かなり無理をしているのだろう。
『モンゴロー! 薬が手に入ったのか!?』
「あっ! クーガー!」
クーガーとブチ、それに複数人のピューマンたちがやってきた。クーガー隊の人たちと、看護を担当してくれていた人たちだ。
「薬、手に入ったよ。どうする? 集落の人たちにもう投与しちゃう?」
『いや、待ってくれ。悪いがここにいる者たちで効果を確かめさせてくれないか? モンゴローのことを信用していない訳じゃ無いんだが、特殊な副作用があったりするかもしれない。』
なるほど、確かに。この薬はピューマンに投与することを考慮して作られたわけじゃない。予期していない副作用が発生する可能性もあるか。
「わかった。じゃあ、誰から行く? 飲み薬と塗り薬の二つがあるんだけど。」
ピューマンたちが顔を見合わせる。少し、不安そうだ。
『…我から頼む。』
「え、クーガーから?」
クーガーはぱっと見、疥癬症に感染していなさそうだけど…。
クーガーが、深緑色の皮鎧を外し、服を脱いだ。鍛え上げられた上半身が露わになる。広範囲に渡って血が滲み、毛が抜け落ちた痛々しい姿が。
『た、隊長ッ!?』
『そ、そんな…ッ!?』
『すまない、いらぬ心配をかけたくなくてな。だが、好都合だ。俺自身が治験者になれるのだからな。』
クーガー、なんという男だ。
かっこいい、と。素直に思った。
「よし、まずはこの錠剤を飲んで。」
コップを取り出し、水魔法で水を入れる。ピューマンは人間と似た体格であるため、容量は人間と同じで試す。クーガーが錠剤を飲んでいる間に、僕はニトリルグローブを装着し、塗り薬を準備した。
「じゃあ、塗っていくからね。」
『ああ、頼む。』
スミスリンローションを塗り広げていく。改めて見ると、クーガー自身も十分重症と言えた。これまで、相当辛い思いをしていたことだろう。
「さて、と。クーガーはこれで大丈夫。他のみんなはどうする?」
『…次はアタシ。』
『オ、オレもだ!』
『わ、私もお願いしますっ!』
こうして、数十分ほどかけて、その場にいた全員に薬を投与した。効果が現れるには最短でも数日かかる。一週間分ほどの薬を分け与えて、三日後にオアシスで落ち合うことになった。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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