第62話 ピューマンの集落
ビュォオオオオオオオオオッ
『フン、ニンゲンの割に、よく着いてこられるでは無いか!!』
「そりゃどうも!!」
僕たちは今、ピューマンの集落に向かって走っていた。いや~、さすがピューマン。めちゃくちゃ足が速い!! 油断したら、僕でも置いていかれてしまいそうだ。
『オレが知ってるニンゲンと違う…。』
『アタシが知ってるニンゲンとも違うわよ…。今、ほとんど最高速度よ…?』
なんだろう、すごいジト目で見られている気がする…。僕、なんかした??
『面白いッ! では、この速度についてこられるかッ!?』
そう言うと、黒いピューマンは犬歯をむき出しにして笑みを浮かべ、さらに加速した。
「うおぉおおおおおっ!! 負けるかぁああああっっ!!!」
負けじと僕も加速する! 勝負だというなら、負けないぞ!
『あーーーーっ! 隊長の悪いところが出てるッ!!』
『アタシこれでも病人なんですけど!?』
『これだからスピード狂はッ!!』
『ってか、なんであのニンゲンは隊長の本気について行けてんの!?』
負けられない戦いが、そこにはある。
○
『ゼーッ! ゼーッ! や、やるでは、ないか、ニンゲン…!』
「コヒューッ! コヒューッ! そ、そっちこそ…!」
死にそう、死にそうです。初めてこんな長距離を、全力疾走し続けたわ…。どれだけ移動したのかわからない。
『や、やっと追いついた…。』
『カヒューッ! カヒューッ! も、もう無理…。』
『ア、アタシを殺す気か…!』
『こ、こいつら、混ぜたらキケンだ…。』
いつの間にか置いていかれた他のピューマン達が追いついてきて、そのまま地面にぶっ倒れた。死屍累々。ピューマンたちは革袋から、僕は魔法で水を生み出して、がぶ飲みしていた。
「ちょ、ちょっと、休憩してから、集落案内してもろて、ええですか…。」
『そ、そうだな、我も、そう思って、いたところだ…。』
集落手前の丘で、五人のピューマンと一人の人間が、ぶっ倒れていた…。
○
「ここが、ピューマンの集落…。」
広い。それに、規模がでかい。
簡単な作りの柵に覆われた広い敷地内には、ゲル、と呼ばれる遊牧民が作るテントのような形の住居がいくつも建ち並んでいた。
モンゴルの遊牧民に近い生活をしていると考えられる。革張りのテントはとても立派で、頑丈そうだ。おそらく、何かのモンスターの革が使われている。
集落の入り口、見張りをしていたピューマンに驚かれたが、黒いピューマンが説得して無事に入ることが出来た。
集落の雰囲気は暗い。かつて見たオークの集落と違って子供が走り回ったりもしていないし、出歩いているピューマンも少ない。
想像以上に、疥癬症が流行してしまっているようだ。
『ピューマンのほとんどが感染してしまっている。程度の違いはあれど、な。』
「なるほど。とりあえず、特に重症な方々の住居に案内してもらえますか?」
『分かった。こっちだ。』
黒いピューマンについて行くと、大きなゲルへとたどり着いた。中を覗くと、そこには無数のピューマンたちが体を横たえていた。
「…これは、想定以上にひどい状況ですね…。」
重症ということもあり、ほとんどの患者の毛が抜け落ちている。痒さから全身をかきむしり、血が滲んでおり、非常に痛々しい。
『…どうだ、彼らも救えるだろうか…?』
「…断言は、できません。でも、薬があればかなり楽になるはずです。詳細な状況確認がしたいので、彼らの面倒を見ているピューマンの方々を集めていただけますか?」
『わかった、少し待っていろ。』
○
数分後、三人のピューマンたちが連れられてきた。彼らもまた感染しており、所々毛が抜け落ちている。また、息も荒く、しんどそうだ。
彼らの話を聞いたところ、ここまで感染が拡大してしまった原因が分かった。まずはその原因行動をやめさせて、これ以上の感染拡大を止める必要があるな。
「まず、装備や衣類、寝具の共有利用はやめてください。干しただけでは不十分です。一度すべて煮沸消毒するか、火魔法と風魔法が使える者がいれば熱風を当てて原因となるダニを確実に死滅させてください。」
そう、彼らピューマンは鎧や衣類などの装備品、日用品のほとんどを共用利用していたのだ。一応水洗いしてから干すことで洗濯をしていたようだが、それだけでは不十分だ。
『ダニ、ですか?』
驚いたような表情をするピューマンたち。
「はい。この病気の原因は微細なダニです。そのため、これを完全に死滅させる必要があります。根本的な症状の治療に必要な薬は、僕がどうにかして集めますので、これ以上の感染拡大を防ぐための」
『――なぜ、ニンゲンがここにいる?』
底冷えするような声が、突如聞こえた。
振り返るとそこにいたのは、黒い毛並みを持つ、“隻眼の”ピューマン。その隣には、巨大な骨で作られた杖をつく、老女らしきピューマン。
『貴様の差し金か? “クーガー”よ。』
『…父上。』
僕の隣、集落まで案内してくれた黒いピューマンが、低い声で唸った。
作者のおしり炒飯と申します。
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