第63話 対立
すみません、昨日投稿忘れてました...
『この者は、我らの間で流行している不治の病を治療する手立てを持っているのです。』
『黙れ。ワシは貴様に、“狩りをせよ”と命じたはず。なぜそれが、敵であるニンゲンをこの村へと招くことになる? なぜ、ニンゲンなどの言うことを信用した? 病が流行るこの状況で、ニンゲンどもに襲撃でもされたらどうするつもりだ。』
『ぐっ…、しかし、このままでは我らは滅びてしまいますッ! 可能性があるのであれば、ニンゲンでもなんでも、使える物は使うべきですッ!』
あの~、僕は物じゃないんですけど…。
『クーガーお主、オババの呪術では不満と申すか!』
老女が吠える。オ、オババって言うのか…。
『そうだッ! オババの呪術は予知や妨害には使えるが、病気に対してはてんで効果が無いではないか!』
『ぐぎぎぎぃ~~! クーガーお主ィッ!』
「あ、あの~、喧嘩はそのへんでやめておいた方が…。」
『黙れ、ニンゲン。殺すぞ貴様。』
あ、はい、すんません。それにしても、ピューマンにも色々いるんだなぁ。見たところ、保守派の村長とオババ、革新派のクーガー達若手が対立している感じか。うーん、なんだか、
“人間みたい”だなぁ。
「あの、僕帰ります。村長さんもオババさんも、僕がここにいたら落ち着かないでしょうし。それに僕のせいでピューマンの皆さんが仲違いしてしまうのは、望むところではありません。」
『フン。このままワシが、貴様を生かして帰すと思うのか? ニンゲンどもに、我らが病気で動けぬことを吹聴するつもりであろうが。』
「僕にそんなつもりはありません。」
『ヒャヒャヒャ! ニンゲンの言など、信じられるわけないじゃろうが!』
「なら、これでどうですか?」
ベシャッ!
僕は、自らの左腕を斬り落とした。刃となった右腕は血に染まり、左腕からは鮮血がどぼどぼとしたたり落ちている。
『ニ、ニンゲンッ!? お前、なんということを…ッ!』
動揺するクーガー。
『…ほう。』
目を細める、村長とオババ。
「僕に、敵対の意思はありません。あなたたちのことも一切、口外しません。もし、人間達がすぐにこの集落を襲うようなことがあれば。僕がその人間達を皆殺しにします。そのあとは、煮るなり焼くなり好きにすると良い。」
斬り落とされた左腕が、徐々に再生していく。その様子を見て驚くピューマン達。だが、村長だけはその隻眼をらんらんと輝かせて、不敵に笑っていた。
『面白い。いいだろう、ニンゲンの世界へと帰るが良い。だが、次はない。この集落に足を踏み入れることは、まかりならぬ。去ね。』
そう言うと村長は、オババを引き連れて帰って行った。
○
『まったく、肝が冷えたぞ、ニンゲン…。』
集落の外、疲れ切った表情の黒いピューマン、クーガーが愚痴をこぼした。
「いや~、ああでもしないと帰してくれなさそうだったからさ。とりあえず、僕は薬を入手するから、さっき伝えたことは集落内でも徹底してもらっていいかな? 僕が直接的に関与している訳じゃないし、村長さんたちも強くは反対しないと思う。」
『そうか、分かった。すまないな、ニンゲン。父上も本当は、そこまで強情ではないのだ。もちろんオババもな。ただ、この病が流行り始めてから数年。母上が亡くなってから、どんどんおかしくなってしまって…。』
そうか、お母さんが亡くなってしまっていたのか。
「お母さんのこと、残念だったね。」
『ん? ああ、いいんだ。母上は元々体が弱くてな。仕方が無かった。』
「よーし、なおさら気合いいれなきゃね。どうにかして薬、手に入れてみせるよ。」
『…ニンゲン。お前、名前はなんと言うんだ?』
「僕? 僕はマモノ、ゴロウ。モンゴローって呼んで!」
『…モンゴロー、か。』
クーガーはそうつぶやくと、僕の目をまっすぐと見つめた。
『モンゴロー。薬のこと、どうか頼む。』
クーガーが深々と頭を下げた。
絶対に、薬を手に入れてみせる。
○
「イベルメクチンと、スミスリンローション、かぁ。」
帰宅後、僕は疥癬症の薬について調べていた。イベルメクチンが内服薬、スミスリンローションが塗り薬だ。ただ、どちらも普通は処方箋がないと入手できない代物だ。
「…あの制度、使えるかな。」
あの制度とは、富士ダンジョンに入場できる探索者のみに許された、特殊な薬品やポーション、毒物などについて購入申請書を提出することで、特別に購入することができるという制度のことである。
富士ダンジョンのほとんどは未開のエリアとなっており、未知のモンスターだけでなく、虫や菌、ウイルスが存在している可能性がある。様々な環境に適した薬やワクチン、血清、ポーションを入手できるようにするために整えられた制度だ。
「あ~、イベルメクチンは購入の前例があって、塗り薬については類似品の前例がある。これならなんとかなりそうだな。」
『わふ?』
もふげの頭をもふりながら、ギルドHPの公開情報をサーチしていく。もちろん、ツッピーも活用しつつ。
「アルコールは薬局で買えるな。あとは、ピューマンたちの技術力だけで作れる薬があればいいんだけど…。」
僕がいなくなったあとに、再び大流行されても困るからね。調べた感じ、硫黄を使った軟膏程度であれば作れそうだと言うことが判明した。アロエに似た薬草の一種が自生していることも確認済みであるため、なんとかなりそうだ。オババとか、そういうの好きそうだし。
「よし、申請書を作るか!」
ピューマンたちを救う手立てが出来た。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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