第60話 ワイルドホーン
三連休ということで、本日夜にもう1話投稿予定です。
なんか、こっちに向かって来てるな…?
周囲のスプリントモニターたちが、のそのそと起き上がり、岩を降り始めた。どうやら避難するらしい。
「ねぇねぇ、あれって何が迫ってきてるの、って、もういないッ!?」
足はっや!? スプリントモニターたちはすでに、脱兎のごとく逃げ出していた。もうね、すごい早さです。あ~、エリマキトカゲみたいに半分立ち上がったような状態で走ったりもするんだなぁ…。
ドドドドドドドドドドド
ん? なんか、やけに音が近いような…。
「うわああああああああああああああ!!!」
すぐそこまで来てるじゃん!!
慌てて走り出した僕を追うようにして、土煙が近づいてくる。スプリントモニターから取得した砂走のスキルが、早速大活躍していた。走りながら振り向くと、ようやくその正体が分かった。
「ワイルドホーンの群れだっ!」
ワイルドホーン。体長3mほどの、ヌーやバッファローに近い見た目のモンスターだ。強大な雄を中心とした群れを形成して生活しており、頭部を覆うように大きく発達した角が特徴だ。
すごい、完全にハクナでマタタな作品で見た光景だ! いや、ヌーよりも巨大なモンスターの群れだ。危険度は段違いだし、迫力も桁違い。こんな群れに落ちてしまったら、ゲームのカードはおろか、強靱な動物でも小さな肉片となってしまうだろう。
僕は走りながら横に逸れて、彼らと併走するような形で走り始めた。
「そんなに走ってどこへ向かってるの!?」
一番外側、目を血走らせて荒い息を吐きながら疾駆するワイルドホーンに声をかける。
『ブフーッ! ブフーッ! ニゲロ、ニゲロ! マモレ、マモレ!』
「に、逃げる!? 守れって、どういうこと!?」
改めて群れの様子を見てみる。後続のワイルドホーンは土煙でよく見えないが、まだまだかなりの数がいそうだ。もしかしたら数千頭はいるかもしれない。
これだけの数のワイルドホーンだ。足音は地響きのようであるし、土石流や雪崩と言った自然災害に近しい迫力と危険度だ。
「もしかして、何かを守りながら、何かから逃げている?」
後方は見えないため、何から逃げているかはわからない。しかし、何を守っているかはすぐに分かった。
「子供か!」
群れの内側、明らかに体格が小さいワイルドホーンたちが必死の形相で走っていた。また、その周囲には角が小さい雌たちが併走している。
外敵から、雄たちが壁となって、子供と雌を守っているんだ!!
しかし、子供たちは明らかに疲労困憊と言った様子で、徐々に群れ全体の速度が落ちてきている。後続は前のワイルドホーンに追突しかけており、大事故になってしまいそうだ。
「追い風よ、吹けッ!」
僕は子供達を中心に、強烈な追い風を吹かせた。
すると再び、群れの速度が上がっていく。
「このまましばらく併走するよ!」
『ブフーッ! タスカル! タスカル!』
一瞬。はるか後方、何頭かの雄が地面に倒れるのを見た。
しかし、群れは決して止まらなかった。
○
あれから20分ほど走り続けて、群れは徐々に走る勢いを落とし始めた。どうやら危機は去ったらしい。
『ブフーッ! ブフーッ! ブフーッ!』
『ブフーッ! ヘグッ! ブフーッ!』
ようやく立ち止まることができて、一安心。僕もかなり走った。久しぶりに持久走をした気分だ。
みんな、ものすごく息が荒い。体中の血管が浮き出ており、目は血走っている。分かる分かる、長距離走った後ってマジでしんどいからね…。
「よぉーし、ここに簡易的なオアシスでも作ろうか!」
辺りを見回すと、ちょうどよさげな窪地を見つけた。むき出しの岩が、うっすらとすり鉢状に削られているのだ。
「ア○アメンティ!」
ナニー・ポッター風に詠唱してみました。すると、ごぼごぼと音を立てて水が湧き出してくる。すぐに窪地は小さなオアシスと化した。
「ワイルドホーンのみんな~! 水飲み場作ったから、集まれー!」
『『『!?』』』
一斉にこちらを振り向き、のそのそとやってくるワイルドホーンたち。一心不乱に水をがぶ飲みしていく。うわ、すごい勢いで水が減っていく。もっと水を生み出さなきゃ…!
『ウメ、ウメ…!』
子供達も嬉しそうに水を飲んでいる。撫でてあげると、少しごわっとした毛並みの下に、分厚い筋肉の鎧を感じた。尻尾がぶんぶんと揺れている。
『スキル獲得:ワイルドホーン』
一時間ほど、僕は水を生み出し続けた。途中で、「影魔法で生み出した影人形から魔力を放出したら、僕離れても大丈夫じゃね?」と思いつき、試してみた。
僕の影から枝分かれするようにして実体化した影に命じると、彼は「任せろ!」とでも言うようにサムズアップして、水魔法の維持を始めた。
うーん、影魔法。めちゃくちゃ便利だな。今後はもっと活用していくことにしよう!
そんなことを考えながら、僕はワイルドホーンの群れから離れた。
○
「ふぅ~、久しぶりに良い運動になったなぁ。試験勉強ばっかりしてたから、ちょっとなまってるかもしれないな。」
周囲は岩場。僕は一人で歩いていた。
「…で、そろそろ姿を見せてくれてもいいんじゃない?」
いや、“一人では無かった”。
ヒューッ
不意に、笛のような、不思議な音が響いた。
直後。岩陰から飛び出す、複数の影。その動きは、あまりにも素早く。
一瞬のうちに、僕は四方を囲まれていた。
『…ニンゲン。貴様、何者だ。』
眼前。“黒豹のごとき容貌の男”が、語りかけた。
――――――
ワイルドホーン
①突進
突進攻撃に補正。威力が増加。
②魔力纏術
体の一部に魔力を纏わせる行動に補正。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
面白ければぜひ、リアクションと評価いただけると嬉しいです。
また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




