第57話 配信!【モンゴローから重要なお知らせ】
引っ越しを決意してから二週間。家、見つかりました。
ペット可の1LDK、富士ダンジョン直通のギルドまで徒歩20分。内見も済ませて、契約手続きを進めております。
今日は都内の家で、初の配信。新宿ダンジョン攻略と、富士ダンジョンへの挑戦を報告する配信だ。なんやかんや一ヶ月以上配信を行えていないので、近況報告も兼ねている。
久しぶりの配信で、なんだか緊張するな…。
「よし、やるか!」
ドローンを専用の三脚に固定して、いざ、配信スタート!
○
【配信開始】
「こんごろ~、お久しぶりです! モンスター解説系配信者のモンゴローです!」
:モンゴロー、生きとったんかワレェ!!
:こんごろーーー!!!
:うおおおお久しぶり!!!
:待ってたぞ!!!
:通知来て飛んできたぞ!
「みなさんお久しぶりです~~!! 今回はダンジョンでは無く、自宅からお送りしております。タイトルの通り、実は皆さんにご報告がございまして…。」
:ご報告…?
:自宅!? 初めてのことじゃないか?
:まさか、ダンジョンに住むつもりか…?
:いや、もう住んでる可能性すらある
:自宅の可能性あるな
「ちょ、マジで僕のことなんだと思ってるんですか! ダンジョンにはまだ住んでません、ちゃんと家です家!」
:まだ
:“まだ”
:まだ、で草
「ってことでですね、私モンゴロー、この度、富士ダンジョン探索資格を取得しました~~~! 次回からは富士ダンジョンでの配信になります!」
:!??
:ファッ!?
:マジ!?
:うっそだろオイ!!
:攻略勢の仲間入りじゃん!!
:なんか、俺まで嬉しくなってヌンチャク振り回してしまった
:ヌンチャクニキ…
「そうなりますね~、試験の勉強したり報告書書いたり、なんだかんだしてたら一ヶ月ほど配信できておりませんでした。いや~申し訳ないです。」
:ええんやで
:気にすんな
:おい待て、ってことは新宿ダンジョン踏破したの、モンゴローってマジ?
:え、あれガチだったの?
「あ、それガチです。一昨日くらいにギルドHPに正式掲載されたはず?」
:マジだ
:踏破者 モンゴローで草
:配信リンクまで載せてくれるんやね
:すげえな…
:この前まで初心者とか言ってなかったか…?
「いや~、なんか踏破しちゃいましたね~。自分でもびっくりです。しばらくは引っ越し準備なんかでばたばたしそうです。本格的な配信再開は二週間後くらいかなぁ。」
『■■■■■■ッ!!』
:なんの鳴き声?
:ネコ?
:犬?
:恐竜みたいな声したぞ
:牛?
「あ、紹介します。僕のペットのもふげでーす。ちょっとでかすぎて、頭の一部しか写らないな。」
:でっけえネコ!?
:は!? ひよこ!?
:犬…?
:何その角…羊?
:毛玉?
:でっかい鳥だな
:なんかコメント欄ばらばらすぎない?
「どこからどう見ても、もふげは犬ですよ! ってことで今回は新宿ダンジョン踏破と、富士ダンジョン資格取得のご報告でした! 今後の配信予告については適宜ツピッターでツピートしていく予定なので、フォローの方よろしくお願いしまーす。」
:…犬?
:羽…
:フォローしたぞ
:フォローしたやで
「ありがとうございます! では、本日の配信はこのあたりで終わりたいと思います。モンゴローがお送りいたしました、ばいばーい!」
:ばいばーい
:乙~
:おつ~
視聴者:2,346人
○
『では、本日の配信はこのあたりで終わりたいと思います。モンゴローがお送りいたしました、ばいばーい!』
「ふふ、元気そうでなによりだよ。モンゴロー君。」
探索者ギルド東京本部、岩崎はモンゴローの配信をしっかりとチェックしていた。桜井から逐一報告を受けていたが、実際にこの目で元気そうな姿を見ることができて、安心していた。
「さて、と。」
思考を切り替える。手元には、とある報告書。
その内容は、探索者ギルドの一責任者として、到底看過できるものではなかった。
とある“有力国会議員”が、探索者及びギルドに圧力をかけるような法案を提出しようとしているらしい、という内容の報告であった。
「さて、どうしたものか…。」
頭を悩ませる岩崎。
コンコンッ
思考の渦から、強制的に引きずり戻される。
「すまない、取り込み中だ。」
「そ、それが、至急会いたいというお客様が、って、きゃあっ!」
驚いたような女性職員の声。
「よう、岩崎。久しぶりじゃ無いか。」
「…何しに来た、倉田。」
恰幅が良く、薄くなった頭髪。脂ぎった皮膚は、てらてらと日光を反射している。
倉田ドウアン。探索者ギルド神奈川統括本部長。俺のかつての、同期。そして。
東京統括本部長の座を狙い、俺を目の敵にしている男。
「ずいぶんな言いようじゃないか、えぇ?」
我が物顔で近づいてくる、倉田。ニヤニヤと下卑た笑顔を向けて。
「俺たちもずいぶん偉くなったもんだ。お互い本部長にまで出世した。だが、俺はこんなところで満足はしていない。必ず。必ずだ。もっと上に行ってみせる。」
倉田の目が、デスクの上に残る報告書を捉えた。
「ふっ、その件か。手に余るようなら、俺がどうにかしてやってもいいぞ?」
「余計なお世話だ。」
倉田は肩をすくめた。
「ところで岩崎、お前。」
倉田がなれなれしく肩を組んできた。濃すぎる香水の匂いと、加齢臭が混じった匂いが鼻孔を突き、思わず眉根を寄せる。
「お前、とある探索者に肩入れしているらしいじゃないか。一体、何を隠している…?」
「…なんのことだ。さっさと離れてくれないか?」
倉田はじぃっと、何かを探るように目を見つめる。
「フッ、まぁいい。いいか、いずれ俺がその椅子に座ってやる。それだけじゃない、その椅子すらも踏み台にして、俺はさらに上に行く。お前は俺のケツでも拝んでおけ。」
倉田は満足したのか、肩で風を切って部屋を出て行った。
「…やれやれ。全く、面倒なことだ。」
しばらくは、忙しくなりそうだ。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




