第53話 富士ダンジョン都市
[まもなく、“富士ダンジョン都市”。お出口は、右側です。]
特徴的な音楽で眠りから覚めた僕は、ハッとして急ぎ荷物をまとめる。
桜井さんから富士ダンジョン講習の打診を受けてから二週間。いよいよ明日が、講習本番だ。配信も休んでひたすら勉強する日々。高校受験を思い出したよ…。
それにしても、リニアモーターカーってすごいな。初めて乗ったけど、全く揺れを感じなかった。東京からここまで、一度も起きずに爆睡かましてしまった。
ぞろぞろと大勢の人間が降車していく。人の流れに身を任せて、五分後。
僕はついに、富士ダンジョン都市の土を踏んだ。いや、土じゃ無くてコンクリートなんだけど。
東京駅に匹敵するほど巨大な駅は、どこも人で埋め尽くされていた。ただの駅だというのに、全体の6-7割ほどが探索者っぽい。布でくるんだ棒状の武器を持っていたり、明らかに纏う雰囲気が戦う者のそれであったり。
「さすが富士ダンジョン都市。ぱっと見ただけで、中級レベルの探索者たちがごろごろいる…。」
そして、明らかに空気が違う。少し、ダンジョンに近いというか。そうだ、魔力! たぶん他の場所より、魔力が濃いんだと思う。
外に出ると、秋の空気が体を撫でた。ここからギルドまではバスでの移動になる。バス停を探し出して、“日本探索者ギルド総本部”行きのバスへと飛び乗った。
○
「デカすぎんだろ…。」
総本部を見た、率直な感想である。いや、え、マジででかいな。バスで最初の入り口らしき門を潜ってから、さらに15分くらいかかったぞ??
それに、超広大な敷地と数々の建物。もはや本部の敷地内だけで、一つの街として完結してるんじゃないかな…。
散歩がてら、ぽてぽてと歩きながら目的地へと向かう。ところどころに全体マップがあり、それによると、どうやらこのギルド総本部敷地内は5平方キロメートルほどの広さで、思いつく大体の施設は揃っているらしい。いや、本当に街として完結してるんかい。
「やっと見えてきたな。」
周辺を少し見て回りたくて手前のバス停で降りてみたんだけど、それでも20分ほどかかった。目的地は教練棟、と呼ばれている施設群だ。
「このエリアだけで新宿ギルドを余裕で超えてない…?」
どの建物もすべてが最新鋭で、当たり前のようにダンジョン素材を用いて建造されている。黒く輝く建物の数々は威圧的でもあるが、同時に“いざというとき”の防御性能も併せ持っているのだ。
教練棟の中でも一際大きいメイン棟に入ると、正面に受付が見えた。雰囲気としては、大きめの大学構内とジム、市民用総合運動場が合体したような雰囲気だ。
訓練のためか、木製の武器を持っている人も目に入る。
「すみません、明日の講習に参加させていただく守野と申します。」
「守野様、ですね。少々お待ちください。」
情報を確認してもらい、滞在手続きなんかを済ませた。僕が宿泊する備え付けのホテルの場所なんかを教えて貰ったり、教練棟の使い方なんかも。
「こちらが一時立入許可証になります。こちらのカードが無ければジムや道場、体育館などの施設が利用できなくなってしまいますので、常に首から提げておくことをおすすめいたします。」
この教練棟の一部設備は、許可を得ている探索者でないと使えないらしい。と、いうのも、モンスターを模したロボットとの模擬戦や、魔法技術の講習など、他国に技術が漏れると不味い代物が大量にあるからだそうだ。
「最後に何か、ご質問などはありますか?」
「あー、この辺でおすすめのご飯屋さんとかあったりしますか?」
「うーん、そうですねぇ…。」
受付のお姉さんは少し考え込む。
「この教練棟、実はフードコートも入っているんですが、その中の“犬のおしり亭”っていうお店がおすすめです!」
「い、犬のおしり亭…?」
どういうネーミングセンス??
○
「いや~、めちゃくちゃ美味かったな、犬のおしり亭。」
諸々の手続きを終えた僕は、早速犬のおしり亭に行ってみた。他にも有名チェーン店なんかもたくさん入っていて、多くの学生や主婦層で盛り上がっていた。フードコートは誰でも利用可能みたいだ。
肝心の犬のおしり亭はラーメン屋さんだったのだが、なんとオークの骨と油を使う豚骨ラーメン屋だったのだ。最新技術によって豚骨ラーメン屋特有の匂いも生じておらず、味も絶品。オークの甘い油とキレのあるスープに、脳が焼け付くようだった…。
「腹ごなしの散歩にちょうど良いな。お、これがホテル、って、やっぱりデカいなぁ。」
教練棟から歩いて10分ほど。僕がお世話になるホテルについた。うん、デカいしめちゃくちゃ綺麗。受付の人に教練棟で貰ったカードを見せると、すんなりチェックインすることができた。
「うわー、部屋広っ! 和室まであるじゃん! やったーーー!!」
年甲斐もなくはしゃぎ回ってしまった。旅行とかでホテルの部屋に初めて入ったとき、めちゃくちゃテンション上がるよね! とりあえずお風呂とかトイレとか確認して、全部の収納開けてみるよね! ね!!
「ふぅ、さてと。明日は講習、しっかり復習しておかなきゃ。」
明日はいよいよ本番。旅行気分を無理矢理沈めて、僕は備え付けの机に向かった。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
皆様のおかげで、本作、注目度ランニング6位に入ることができました。
本当にありがとうございます!
当初はカクヨムにて第二章完結まで投稿してから、こちらに投稿しようと思っておりましたが、
ランクインを記念しまして、なろう様でも一話ずつ、第二章を投稿していこうと思います。
面白ければぜひ、リアクションと評価いただけると嬉しいです。
また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




