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【第一章完結】モンスター系ダンジョン配信者  作者: おしり炒飯


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第44話 悪意(マリス)

 『サムイ、サムイ…。』


 ここは、どこだ。

 私は、誰だっけ。


 『イヤダ、イヤダ…。』


 どうして、どうして、こんなことに。

 私は悪くない、悪いのは、全部あいつ。


 あいつ、あいつ?

 あいつって、誰だっけ。


 『…力が、欲しいか?』


 ちから…? 誰…?


 『復讐、したいのだろう? ヤツに、“モンゴロー”という青年に。』


 『ア、アァ、アァァァアアアアアアアアアアッ!!!』


 そうだ、そうだ、そうだッ!

 全部あいつが、クソゴローが悪いんだ!

 憎い憎い憎い憎い憎いッ!

 殺す殺す殺す殺す殺すッ!


 『ふふふふ、なんとも憐れで醜い女よ。モンスターに堕ちようとも、やはり“ニンゲン”は愚かで、醜くて、度し難い。やはり、滅ぼして正解だった。』


 ぶくぶくと、影のなれ果ての体表が泡立つ。ベチャァアッ、と音を立てて、黒い体液が噴き出した。その内部から、黒紫色の腕が。頭が。体が、飛び出した。


 『殺してやる、クソゴローも、人間共も。あいつの大切なものすべて奪って、壊して、殺してやるッ!』


 鼻も口もない顔。しかし、目だけが開かれた。赤い、赤い、眼球だけが、むき出しでそこにあった。


 かつて霧崎リオと呼ばれたソレは、純粋な悪意の塊として再誕した。


 悪意マリス


 ダンジョンにおいてごくまれに発生する、“人間から生まれるモンスター”。マリスはどくどくと脈動する血管が浮かび上がった細い腕をゆっくりとかかげた。すると、地面に無数の闇が口を開けた。


 その内部から、悪意の眷属達が姿を現す。大盾を持った眷属、槍を構える眷属、ふらふらとした細身の眷属達、筋骨隆々で、腕にメリケンサックのようなものを装備している眷属。


 剣を持ち、指先で紫電を遊ばせる眷属。


 悪意の軍勢が、進軍を開始した。目に入る人間すべてを手にかけながら。目指すは地上。すべての人類の根絶。そして、復讐。



 『さぁ行け、愚かな元ニンゲン。その醜悪で、吐き気を催す逆恨みから生じた悪意をもって、外の世界のニンゲンたちをも滅ぼしてしまうといい。』



 ○



 「ふぁ~あ、よく寝た…。」


 『わふわふんっ!』


 「おはよ、もふげ~。」


 僕がヒーローと戦ってから、すでに一週間が経過していた。はじめて本気で戦ったこともあって疲労困憊となってしまった僕は、しばらく家でごろごろしていた。


 そして昨日、ひさしぶりに新宿ダンジョンで配信を行った。シーフカイトの解説配信だ。


 巣の紹介をしたところ、コメント欄で「俺の盗品がある!」というコメントが相次いだため、いくつかだけ回収して、ギルド経由で持ち主に返却してもらうことになった。


 ヌンチャクとかあったけど、誰が使うんだろうか…。戦えるの…? 謝礼としてまぁまぁな額をもらえるようなので、ホクホクだ。


 テレビをつけて朝食の用意をする。もふげはコーヒーを淹れてくれているようだ。テレビではダンジョン産食材を使った料理番組が流れている。うわ、コカトリスの卵焼き? コカトリスの卵なんて一体いくらするんだ…。え、一個100万円!?


 『えー、番組の途中ですが速報です。新宿ダンジョンにて、避難宣言が発令されました。新宿ダンジョンで、避難宣言です。現在新宿ダンジョンに潜行している方、ギルド内にいらっしゃる一般の方は、ただちに避難してください。繰り返します。』


 「え、えぇ? 新宿ダンジョンで避難宣言?」


 『わふ?』


 一体なにが…? 避難宣言とは、ダンジョンにおいてなんらかの異常事態が発生し、ダンジョン外にまで危険が及ぶ可能性が発生した際に発令される警報の一種だ。


 ギルド職員や、調査依頼、討伐依頼、原因究明及び解決依頼を受諾している探索者以外は避難しなければならない。


 『今、情報が入って参りました。新宿ダンジョンで“マリス”の発生が確認されたようです。映像が流れます。これから流れる映像は、非常にショッキングな内容を含みます。心臓の弱い方、気分が悪くなりやすい方は、ご視聴をお控えください。』


 「マリスだって…!?」


 マリス。悪意の具現化。発生のメカニズムは解明されていないが、死んだ人間がモンスターとして蘇生する現象とされている。


 アンデッドの一種であるとされており、強い未練や悪意を持った人間がダンジョン内で死亡した場合、対象の人格をある程度模倣した上で現れる。


 非常に危険な存在で、生前の身体能力やスキルが強化された状態で発生する。行動パターンなどは千差万別、対処が非常に難しい。


 映像が始まった。配信の切り抜きだ。中級探索者パーティがマリスと遭遇し、交戦した映像。探索者達は次々と殺されていった。それも、わざと苦痛が増すような殺され方で。四肢を削がれ、皮膚を焼かれ、何分間にもわたって遊び、いたぶるように殺されていく。


 僕は、目が離せなかった。


 なぜなら、マリスたちの姿。そのすべてに見覚えがあったからだ。


 「…まさか。マリスは、霧崎?」


 黒い炎を操るマリスは霧崎。大盾を持つ眷属は飯湿、槍は鳥巻。骨掴みのゲンと、その手下達。そして、剣を振るい紫電を放つ、カツヤ。



 ガシャン。コップを取り落として。

 僕はそのまま、家を飛び出した。


作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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