表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章完結】モンスター系ダンジョン配信者  作者: おしり炒飯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/53

第43話 父の聖剣

 目の前に、それが着地した。


 黒い機械装甲。両足からは、灰色の炎が噴き上がっている。どうやら、空を飛べたらしい。そして、手に持っているのは。光を放つ、機械仕掛けの“ロングソード”。


 「まさか、合体させたの…?」


 二振りのショートソードは、一振りのロングソードへと合体していた。カシャカシャと音を立てて、刃が一つになっていく。



 ヴヴヴ、キィィイイイイイーーーンッ



 駆動音が激しくなっていく。剣の放つ輝きが増していき、中心で回転している球状の何かがバチバチと音を立てて、回転数を上げていく。


 ヒーローが上段に、剣を構えた。まるで、これがトドメだと言わんばかりに。



「はははっ、参ったね、これは。」



 純粋な火力不足。あの一撃、受ければ死ぬと直感が囁いていた。まったく、あの忍者め。あいつはどうやって、こんなバケモノを倒したんだ? いや、倒したとは一言も言ってなかったな。くっそ~あいつめ…!


 僕のローブマントが、風を受けてバタバタとはためいている。母さんが遺した、ローブマント。どんな斬撃も、どんな魔法も軽減してくれる。どんなときでも僕を守ってくれる、大切なマントだ。


 僕はそこで、ハッと気づいた。


 思い出したのだ。ずっとアイテムボックスにしまったままだった、“父さんの剣”を。


 久しぶりに、それを取り出した。紫がかった、青い鞘。シンプルな意匠の、ロングソード。父さん以外に、引き抜けた者はいない。


 でも、今なら。


 この瞬間なら。抜ける気がした。



「父さん、力を貸して。」



 鞘を指でなぞる。すると、不自然な凹凸があることに気づいた。おかしい、今まで何度もこの剣を抜こうとして、隅々まで調べたのに。こんな凹凸、無かったはず。


 「そっか、これが君の名前なんだね。」


 それは、文字だった。どの国の文字なのかは、分からない。それでも何故か、僕にはそれが読めた。



 剣を、腰だめに構えた。僕には分かる。今の僕なら、この剣が抜ける。



 「力を貸してくれ。――聖剣、アロンディート。」



 まばゆい光が迸った。ゆっくりと、刀身が鞘から引き抜かれる。濃密な魔力が噴き出し、ごうごうと風が巻き上がった。


 そして。


 青い、蒼い、刀身が露わになった。両刃のロングソード。銘は、アロンディート。主の純粋な思いに答える、その聖剣は。


 かつて父が振るった剣。

 人々を守るため、龍の王を討った剣。



 「さぁ、これで終わりにしよう。影の、英雄。」



 『―――〈リボール・ソード〉。』


 「―――〈アロンディート・オーバードライヴ〉。」



 剣と剣。光と光が、ぶつかり合った。

 轟音。

 

 すべてが白と青に、塗りつぶされていく。

 何も、見えなくなっていく。


 光の中、視線と視線が交差する。


 『アア、そうか、君は――。』



 ○



 ビルの上層部は、戦闘の余波でほとんどが吹き飛んでいた。奇跡的なバランスで倒壊を免れているが、いつ崩壊してもおかしくない。


 立ち上る煙の中、二つの影が立っていた。


 一人は、僕。上半身を大きく斬り裂かれ、血が滴り落ちている。口元からもあふれ出た血は、地面に赤黒いシミを残していた。


 もう一人は、影の英雄。黒い機械装甲は斬り裂かれ、影のような霧が、シュウシュウと音を立てて空へと溶けていた。


 「僕の勝ちだ。ヒーロー。」


 『…。』


 僕の傷は塞がりつつある。そう、再生スキルだ。でももし、僕に再生スキルが無かったら。負けていたのは、僕だったかもしれない。


 聖剣を鞘に収め、彼に近づく。彼にも、僕にも、敵意は無かった。


 『…よくぞ、本気の私を倒した。すまない。君は、怪人などではなかった。』


 「あはは、怪人みたいなものですよ。見たでしょ? 僕の戦う姿を。」


 『ああ、見たとも。それでも君はただ、純粋で、まっすぐで、少し好奇心が強すぎるだけの青年だ。』


 ヒーローもまた、ゆっくりと僕に歩み寄る。


 『君に、頼みがある。』


 「頼み、ですか?」


 『この世界。いや、ダンジョンと言うべきか。このダンジョンの最奥。私たちの世界を滅ぼした元凶がいる。やつを、“彼”を、倒して欲しい。』


 彼。それは、仇敵に対する呼び方では無かった。彼、と呼んだヒーローの声音には、複雑な感情が乗せられていた。


 「…確約は、できません。」


 『それでもいい。ただ、引き受けてくれるだけでいい。私を倒した君に、その聖剣に選ばれた君に。そして、君の中に宿る“英雄”に、懸けたいんだ。頼む。どうか、この手を取ってくれないか。』


 ヒーローが、右手を差し伸べている。彼の体は、すでに半分以上が空に溶けていた。もう、数分も保たないだろう。


 父さんなら、迷うこと無くこの手を取ったんだろうな。


 僕の左手、聖剣がかすかに、震えた気がした。


 「分かりました。僕が、新宿ダンジョンを攻略します。」


 僕はヒーローの手を、握り返した。



 『ありがとう。』



 彼の手は、力強くて。



 『君もきっと、誰かにとっての“ヒーロー”になれる。』



 『スキル獲得:シャドウ・ヒーロー』



 影の英雄は消えていく。風に、空に、溶けていく。


 彼はモンスターだ。あくまで、ダンジョンによって生み出された存在に過ぎない。


 それでも。


 最後の瞬間、確かに彼は笑っていたんだ。例え倒されるたびに、新たに生み出されるだけの存在でも。


 魂なんて持たない、抜け殻でも。確かに彼は、そこに存在した。


 「ダンジョンって、モンスターって、なんなんだろう。」



 僕の手には、確かに感触が残っていた。

 彼の力強い、手の感触が。



 ――――――

 スキル:シャドウ・ヒーロー

  ① 変身

 変身する。すべての能力が上昇する。変身した姿は、“その者の内面や感情を表す”。

  ② かばう

    近くの存在のダメージを肩代わりする。

  ③ 英雄の剣技

    剣技に大幅な補正。


作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ