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モンスター系ダンジョン配信者  作者: おしり炒飯


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第39話 襲撃

初めてのコラボ配信を終えた僕は、一人でダンジョンに残っていた。場所はオークの村中央。かがり火はすでに消えており、炭が淡い光を放っている。


 時刻は深夜。先日同様、今日も深夜に出現するモンスターを狙い、お泊まりの予定だ。ダンジョン、それもオークの村に一泊するって言ったら、プログレスの皆さんはめちゃくちゃドン引きしてたなぁ。


 ピピピ、とスマホのタイマーが鳴った。午前2時。あらかじめ設定しておいた時刻だ。


 「よし、行くか。」


 門番のオークに会釈して、僕は夜闇へ駆けだした。



 ○



 かつて都市だったその場所は崩壊し、かすかにその面影を遺すだけとなっていた。周囲にはホタルの一種と思われる、淡い光を放つ昆虫が飛翔し、その光は都市の残骸を照らし出している。


 昆虫、動物、モンスター、様々な鳴き声が響き渡っており、都市の喧噪とは違った騒がしさがその場を支配している。


 そんな幻想的な空間の中、過去にとらわれ続ける異形が、ゆっくり、ゆっくりと這いずり回り、蠢いていた。


 『イィノチィ、ノ、チィ…。』


 「…あれが、“影のなれ果て”。」


 新宿ダンジョンの前半層で出現する、彷徨う影。その、なれの果て。複数の個体が融合し、巨大な黒い塊となって這いずり回っているのだ。


 人間の手足と思われる部位が四方から突き出し、それらが蠢くことで、体を引きずりながら移動している。顔、と思われる部位や上半身と思われる部位もいくつか突き出しており、怨嗟の声や嘆きの声をあげている。


 「うーん、これはSAN値チェックだな!」


 うん、あかんねこれは。配信できないタイプのモンスターかもしれない。ちょっと見た目がショッキングすぎる。それに、これって意思疎通とかできるんだろうか…?


 「彷徨う影と同じなら、魔力でいけるか…?」


 試しに魔力を漂わせてみる。いくつかの腕がピクピクと反応したが、こちらに向かってくる様子はない。


 「仕方ない、近づいてみるか。こんばんは~!」


 気さくな挨拶をしながら近づいていくと、向こうもこちらに気づいたようだ。


『イ、ノチィ、ノチィ、アハァア…。』

 

 大量の黒い腕が伸びてきて、僕の体をぺたぺたと触っている。ひんやりしているが、特に何も感じない。これ、普通の人だと精神的なショックを与える攻撃らしい。まぁ僕には効かないんだけど。


 『アァ、チガ、ウ、チイガァアウ…。』


 「え、えぇ…僕も命だよ…?」


 なんでやねん、地味にショック。僕の命じゃダメなのか。魔力もダメだし、どうしよう…。シャドウ・ファイターに引き続き、二例目の詰みモンスターか…?



 「おいおい、本当にモンスターと“お話”してやがるぜぇ。」


 人の、声。


 『イィィイイイイィイイイイイァアアアアアアッ!』


 突如、目の前の影のなれ果てが叫び声を上げた。ベチャァッ、と音がしたと思えば、なれ果ての体が真っ二つに裂け、一人の男が現れた。金髪をオールバックにした、目つきの悪い男だ。どうやら素手で、なれ果てを真っ二つにしたらしい。


 「うーわ、マジえぐいてぇ!」


 「素手で影真っ二つとか、ゲンさんマジえぐいわ。」


 気づけば四方を囲まれていた。五人、いや、六人。パーティの気配を断つスキル持ちもいるらしい。姿を現した五人の男。全員が手練れだ。特に、この金髪オールバックの男は、これまで見た誰よりも強いと確信できる。


 「…なんですか、あなたたちは。僕になんの用ですか?」


 「俺たちじゃねぇよ、お前に用があるのは。こいつだろぉ? きもいオタクってのはよぉ。」


 最後の六人目が、ゆっくりと姿を現した。


 「お前、は…ッ!」


 「カスミちゃん、いや、リオちゃんよぉ。」


 霧崎リオ。カツヤたちと共に、僕をいじめていた女。その女が、なぜこんな場所に!?


 「久しぶり、クソゴロー。死ね。」


 霧崎リオが腕を振るった瞬間、僕の足下から炎が立ち上った。すんでのところで回避した僕だったが、その先にはすでに、細身の男が回り込んでいた。


 「ウェイヨォッ!」


 「ぐっ!」


 鋭い回し蹴り、腕の骨が折れた感覚。やはり、全員が手練れ。プログレスのメンバーよりも強そうだ。


 「いきなり、攻撃してくるとはッ! ダンジョンの中とは言え、探索者への攻撃は犯罪だぞッ!」


 「あんたでしょ、カツヤたちを殺したの。」


 思わず、動きを止めてしまった。なぜ、コイツがそれを知っている?


 「カツヤたちはあんたを“退治”しに行って、帰らなかった。遺体はなぜか、ゴブリンたちの巣にあった。そう、あんたが配信で仲良さそうにしていた、ゴブリンたちの巣にねッ!」


 そうか、そこを結びつけたのか。というか、なんだよ僕を退治しに行ったって。僕をなんだと思っているんだ、こいつらは。


 「卑屈で最低なあんたのことだから、ゴブリンたちにカツヤを襲わせたんだろうがッ! ありえない、最低ッ! どうしてこんなひどいことができるの? 死んじゃったんだよ? カツヤは、カツヤたちは、お前のせいで死んじゃったんだッ!」


 ああ、ゴブリンたちに殺させたと思っているのか。


 「ねぇ、霧崎さん。君たちが高校で僕にしたこと、覚えているでしょ? あれは、ひどいことだったって思わないの? 毎日僕をいじめて、僕が大切にしていた物を奪って、殺して。それは、ひどいことだと思わないの?」



キョトン、とした、表情。


 

「は? 何言ってんの? 一軍のあたしらが、“あんたで遊んでやってた”んでしょ?」



「…は?」


 意味が、分からない。


「せっかくあたしらが遊んでやってたのに、あんたはそれを、恩を仇で返したッ! 私たちのおかげで、注目の的になれてたのに! 家族もいないあんたに構ってやってたんだから、感謝しなさいよ! それなのに、カツヤを、カツヤたちを殺すなんてッ…!」


 理解、できない。理解、したくない。そうか、こいつらは本当に、邪悪だ。


 「だからお前も、あのキモい生き物たちと同じ目に遭わせてやるよッ! 死ね、クソゴローッ! 〈復讐の炎〉ッ!」


 炎が、立ち上がる。視界が赤一色になる。皮膚がジュージューと音を立てて、焼けただれていく。でも、そんなことは僕にとって、些細なことだった。それ以上に、僕の中で、怒りが、沸き起こっていたからだ。


 復讐の、炎だって?

 ああ、霧崎リオ。お前は、お前達は。




 生きていては、いけない存在だったんだね。


作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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