第37話 プログレス
「ご心配おかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでしたぁっ!」
「い、いえいえ、ご無事であればそれで…!」
ごめんなさい、同窓会には行けません。僕は今、土下座をしています。人食いワニの歯医者さんをしていたところ、襲われていると勘違いされてしまいました。
「それにしても、どうしてあのような…? と、いうか、どうして襲われてないんですか…?」
「まぁ、それが僕のスキルと言いますか、なんと言いますか…。」
彼らはプログレス、というパーティで活動している探索者らしい。聞いたところ、歳は僕の一個上。こんなに歳が近い人は、新宿ダンジョンで初めて遭遇した。
リーダーの天城ユウキさんはぱっちり二重の黒髪爽やかマッチョのイケメンで、タンクの沢村タケシさんは別のタケシを彷彿とさせる糸目で、身長が2m近くある大男、三浦ミカさんは髪が4色くらいに分かれている魔術師で、小林イツキさんは茶髪の関西弁が特徴的な女性だ。
:頭おかしいでしょ
:どういうスキル…?
:何がどうなったら人食いワニの口内に頭を突っ込むことがあるわけ?
:狂人
:心臓に悪すぎる
「コメント欄が、見たことないレベルで荒れてんで。ちょっとおもろいわ。」
「えー、プログレスチャンネルをご覧の皆様におかれましても、大変申し訳なく…。」
「俺たちは気にしていない、視聴者のみんなも分かってくれ。生きていてくれたんだ、良いことじゃないか。」
タケシさん…。トゥンク。
彼ら、どこかで見覚えがあると思ったら、ジャイアントラットに手を合わせていた探索者パーティだ。まさかこんな形で邂逅することになるとは…。
:んん? モンゴロー?
:こいつモンゴローやん
:?
:モンゴローって?
:誰?
:この人も配信してるの?
「ねぇ。コメント欄でモンゴローって名前がちらほら挙がってるけど、もしかして君のこと?」
「あ、はい。僕のことですね。実は僕も普段配信しておりまして、主にモンスターの生態を解説したりする動画を投稿しているんです。」
「なるほど、それで人食いワニの口に頭を突っ込んでいたのか。…いや、何がなるほどなんだ?」
:セルフノリツッコミ草
:ユウキ困惑で草
:モンゴローお前普段からこんなことを…
:野生のモンゴロー
「あのーお詫びになるか分からないのですが、こちら良ければ受け取ってください。」
僕はシーフカイトの巣で手に入れた魔力ポーションと、ヤリカワセミの羽を一枚差し出した。魔力ポーションは一本5万円くらいするし、謝罪の品としては十分だろう。
「えぇっ!? こんな貴重な物、受け取れませんよっ! ポーションもそうですけど、ヤリカワセミの羽なんて…!」
「すごい! うちヤリカワセミの羽、初めて見た! 実物はこんなに綺麗なんやなぁ。」
「うーむ、美しい。高値で取引されるわけだ。」
「ミカたちも探して歩いてはいるけど、見つけたことないよね。モンゴロー君、運が良いんだね…。」
まぁ、拾ったんじゃ無くて本人(本鳥?)から直接貰ったんだけど、そのことは黙っておこう…。
「うーん、ご迷惑をおかけしてしまったのは事実ですし、こういうのはちゃんと誠意をもってお返ししたいんです。」
「うーん、そこまで言うなら…。そうだ、モンゴローさん。俺たちとコラボ配信、しませんか?」
コラボ配信、とな…?
○
【配信開始】
「こんごろー、モンスター解説系配信者のモンゴローです。本日はなんと、初のコラボ配信ということで、プログレスのみなさんと一緒に配信していきます!」
「モンゴローチャンネルをご覧の皆さん、こ、こんごろー? プログレスの天城ユウキと申します。本日はどうぞ、よろしくおねがいします。」
:こんごろー
:まさかのコラボ配信
:おお、プログレスやん
:初の犠牲者が…
:あのコミュ障モンゴローがコラボ配信、母さん泣きそう
:よよよ…
:草
「はーい適当なこと言わないでくださいね~。プログレスの皆さんとはダンジョン内で偶然お会いしまして、僕が人食いワニの虫歯を治療していたところ、襲われていると思って助けに来てくれたんです。」
:お前さぁ
:お前ほんまに
:何を四天王?
:プログレスの皆さん申し訳ございません
:ほんまにすいません
:プログレスチャンネルの視聴者にも謝罪してくる
:モンゴローの兄です。弟のモンゴローがご迷惑をおかけしました
:モンゴローの父です。うちのモンゴローがご迷惑をおかけしました
「あはは、モンゴロー君ひどい言われようやな! おもろいわ。」
「モンゴロー君、普段どんな配信してるの…?」
「帰ったらプログレスみんなでアーカイブ鑑賞会でもしようか。」
:草
:公開処刑
:プログレスのみんな、早まるな
:ドン引き間違いなしやで
「あーもう是非ご覧ください! ってことで今日の配信なんですが、ユウキさん。ユウキさんは好きなモンスターとかいますか?」
「す、好きなモンスター!? う、うーん、なんだろう。強いて言うならやっぱり、ドラゴn」
「あ、ミカはカピバラさんが好き! ずっと探してるんだけど、まだ一度も会えてないんだよねー。カピバラさんって、大人しいモンスターなんでしょ? 一回見てみたいんだよな~。」
「ふふふ、ミカさん。実は僕、カピバラさんたちの巣を知っているんです。よければみんなで、そこに行ってみませんか? もしかしたら、カピバラさんと触れあえるかもしれません!」
「えぇっ!? 行ってみたいっ!」
「ユウキさん、いかがでしょうか?」
「良いと思います。案内はモンゴローさんにお任せしてもいいですか? 広範囲探査はうちの斥候のイツキが、前衛は俺とタケシが、後方援護はミカが担当します。」
「承知です! 一応僕も広範囲探査と魔法が使えるので、皆さんのサポートにまわりつつ案内しますね。」
:嫌な予感
:嫌な予感しかしない
:しれっと新情報公開すんな定期
:広範囲探査なんて超有用なスキル、いつ習得したんや…
:かわいそうなプログレス一行
:このとき、プログレス一行は思いも寄らなかった。まさか、あんなことになるなんて…
:不穏で草
―――――
スキル:人食いワニ
①デスロール
体全体、もしくは体の一部を高速回転する。
②咬合力強化
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




