第34話 情報提供依頼
「突然お声がけしてしまい、申し訳ございません。」
「い、いえ…。」
ギルド5階の会議室に通された僕は、桜井カレン、と名乗る職員から事情聴取?を受けることになった。
本来、新宿ギルド(東京ギルド本部)の4階以上は職員しか立ち入れないエリアとなっており、特殊な事情が無い限り、探索者も立ち入ることはできないのだ。
絶対、レストランの件だよな…。くっそぉ、幻影魔法でカメラには少し違った映像を見せていたんだけど、バレてしまったか…?
探索者の中には幻影魔法を見破れるようなスキルを持つ者もいるだろうし、職員の中には元探索者も多いと聞く。やばいなぁ、損害賠償とかどれくらいになるんだろう…。
まさか、あいつらを殺したことは、バレてないよな?
僕の自宅周辺に監視カメラの類いはないし、人の目もなかった。たまたま、高度な身を隠すようなスキルを持つ探索者がいた、とかでない限りバレていないはずだ。でももし、バレていたら…?
僕は、どうするべきだろうか。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いようですが。もし体調が芳しくないようでしたら、また別日に改めてお話をお伺いさせていただきますが。」
「い、いえ! 大丈夫です!」
嫌なことはさっさと終わらせてしまいたいし。それに、別日でもいいということは、ニンゲン数匹を殺したことはバレていなさそうだ。
「そうですか。では、改めまして。私は当ギルドにて本部長付秘書をしております、桜井カレン、と申します。」
桜井さんはそういうと、名刺を差し出してきた。新宿ギルドの本部長付秘書って、都内ギルドのトップの秘書じゃないか…。
「ちょ、頂戴します…。」
「早速ではございますが、本題に入らせていただきます。守野様の配信、拝見しました。その中で守野さんは、多くのモンスターと友好的に接しておられ、我々は大きな衝撃を受けました。我々は、あなたの持つこのスキル、非常に有用であると同時に多くの危険性を孕む、新種のスキルであると推定しております。」
桜井さんが、メガネを中指で押し上げた。
「以上のことから、守野様の持つ未知のスキルについて、情報提供をお願いしたいと考えております。もちろん、これは強制的なものではございません。スキルとはいわば、探索者の生命線。特殊なスキルについて、情報を秘匿する探索者の方もいらっしゃいます。あくまでこの依頼は、特殊なスキルを持っていると思われる方全員に依頼させていただいているものであることを申し添えさせていただきます。」
「申し訳ございませんが、お断りさせていただきます。」
僕は即答した。僕の持つ、この「モンスター」というスキル。あまりにも、特異すぎる。僕はギルドHPにて公開されているスキルについて、有名どころはすべて覚えていると自負している。
有用なものからゴミスキルと呼ばれる物、そして、チートスキルと呼ばれるような物まで。
モンスターと意思疎通が出来るスキルは、モンスタースキル以外にも存在する。例えば、テイマー。これは危険性が少ない一部のモンスターを、一定の条件を満たすことでテイムし、味方にすることが出来るスキルだ。テイムしたモンスターとは、ある程度の意思疎通を行うことが出来るらしい。
他にも召喚術なんかのスキルも挙げられる。しかし、ありとあらゆる野生のモンスターと、会話のような形で意思疎通できるスキルは存在しない。
モンスターというスキルのもう一つの特異性。モンスターから、スキルを獲得する。この特性について、類似スキルは存在しない。
強いて言えば、一時的に他者が持つスキルのうち、ランダムで一つを模倣できる、というスキルが存在するが、ランダム性が強すぎて使いどころが難しく、はずれ寄りのスキルとして扱われている。
一つのスキルの効果で、さらに複数のスキルを獲得するというのは、チート中のチートだ。まぁ、公開されていないだけで、秘匿されている同様スキルが存在する可能性は、大いにあり得るが。
「…守野様の持つスキルについて情報提供いただけた場合、一定額の謝礼をお支払いさせていただく準備もございます。情報提供料、といったところでしょうか。また、提供いただいたスキル情報の詳細については、HPに公開せず、非公開にすることもできます。公開させていただける場合は、謝礼金額に公開謝礼を上乗せして、お支払いさせていただきます。」
「それでも、僕は情報提供できません。先ほど桜井さんも仰いましたが、僕にとってこのスキルは生命線。誰であろうと、情報は渡せない。」
そう、僕は基本的に、“人間を信用していない”。
仮に非公開として情報提供したとしても、ギルド内の何人の人間がその情報を目にするだろうか。ギルドには、先日の佐伯のような人間もいるだろう。そんな輩に、僕のスキル情報を教えるわけにはいかない。
最近はリテラシーが欠如した若者が、社内秘の情報をSNSに投稿して炎上する、みたいな事件も多発しているし。まぁ、僕も若者ではあるんだけど…。
「…承知しました。もし気が変わったら、いつでもお声がけください。先ほどお渡しした名刺に連絡先が載っていますので。ああ、それから…。」
桜井さんは立ち上がると、鋭い眼光で僕を捉えた。その目には確かに、魔力が宿っていた。
「レストランの件については、不問とさせていただきます。佐伯、という職員については以前から問題行為が報告されていたため、解雇しました。防犯カメラの映像と音声記録から、おおよそ何があったかは把握しております。ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。」
そう言うと桜井さんは、頭を下げた。やばいやばい、やっぱりバレてた!! それに、桜井さんの目。魔力を感じる。もしかして、桜井さんが…?
「い、いえいえっ! 僕もつい、カッとなってしまって、すみませんでした…。あの、僕の幻影魔法は、桜井さんが見破ったんですか…?」
桜井さんはニヤリ、と笑い。
「スキルは私にとっても生命線。ナイショ、です。」
悪戯っぽくウインクすると、会議室を出て行った。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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