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モンスター系ダンジョン配信者  作者: おしり炒飯


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第31話 シーフカイト

さーて、そろそろこの変な球体の見た目にも見慣れてきました。そう、新宿ギルド&ダンジョンです。


 今日から後半層となる第6層以降の探索を始める。事前情報によると、前半層とは若干環境が変わるらしく、景色も非常に美しいそうだ。いやぁ、楽しみだなぁ!


 「さてと、参りますか。」


 装備を確認し、ゲートへ進む。第6層入り口に転移したい、ということを念じながらゲートを潜る。視界がぐにゃり、と歪み、一歩進むと。


 光が目を焼いた。まぶしさに思わず目を閉じてしまったが、ゆっくりと、再び目を開く。まぶしかったのは、陽光を反射した水面だった。


 「お、おぉ…!」


 新宿ダンジョン、第6層。倒壊した廃墟群は植物に飲み込まれ、地下鉄の駅だったと思わしき場所は、澄んだ水で満たされている。


 大きく陥没し、その全容を陽の下にさらしている地下エリアは大きな湖のようになっており、ときどき魚が跳ねていた。


 前半層の時代から、さらに100年ほど経過したような世界。退廃的な雰囲気と自然の美しさ、そして残酷さが内在した世界。それが、新宿ダンジョン後半層の世界だった。


 「空気がとても澄んでる。前半層と同じ世界、なのかな。世界が滅んで数百年、って感じだ。」


 かつて、ゲームや映画で見たことがある。世界が滅んだ後、自然に飲み込まれたかつての都市。ここはまさにそういった環境で、人々の営みは完全になく、すべては自然に還りつつあった。


 「ワ、ワクワクしてきたぁ!」


 みんな、こういう環境大好きだよね!! 僕ももちろん、例に漏れず大好きだ。僕は走り出して、目の前に広がる湖のような場所に近づいた。


 「水がめちゃくちゃ綺麗だ。うわ、地底湖みたいになってる!」


 水中には、かつての地下街や地下鉄駅の遺構が沈んでおり、水の透明度の高さから、その全容がはっきりと見て取れた。大きめの魚なんかが優雅に泳いでおり、海洋恐怖症の人が見れば卒倒しそうな光景だ。


 僕はニッコニコで周囲の散策を開始した。水辺では小動物なんかもちらちら観察でき、マージクロウやゴブリンなど、前半層でも見られたモンスターたちも生息しているようだ。


 「前半層のモンスターたちの多くは、ここに定着したんだな。どんなモンスターが生息しているのか、事前情報として知ってはいるけど、早く実物を見てみたいな。」


 そんなことをつぶやきながら歩いていると。


 『ピヒャロロロロロロロ!』


 「この鳴き声はっ!」


 空を見上げる。マージクロウよりも、さらに上空。はるか高空に、二羽の巨大な鳥の影が見えた。尾羽は三角形。ゆっくりと旋回している。


 「シーフカイトだ!」


 別名、盗人トンビ。翼開長5mにもなる、巨大な怪鳥だ。なんと言ってもその特徴は、名前にもあるとおり盗みを働くのだ。それも、特殊なスキルである「スティール」を使った盗み攻撃。


 スティールというスキルは、半径3m以内の対象から、ランダムな持ち物を一つ盗み出す、というスキルだ。高空から獲物を探し、急降下。スティールの射程距離内に入った瞬間発動し、そのまま高空まで逃げる、という厄介極まりないモンスターだった。


 故に、探索者達からは非常に忌み嫌われている。ポーションや装備品を盗まれたら致命的だ。そう、お財布的にも。


 「うーん、降りてきてくれないなぁ。」


 まぁ、僕にとってはどうでもいいんだけど。さしものスティールも、アイテムボックス内の物までは盗めない。僕は貴重品はすべてアイテムボックスに入れていて、ほぼ手ぶらだ。盗まれて困るのは、今纏っているローブマントくらい。


 「あ、でも、ズボンとかパンツ盗まれるのは嫌だな…。」


 変質者になってしまう。

 そんなくだらないことを考えながら上空のシーフカイトを眺めていたが、方向転換して去っていきそうだ。せっかく見つけた大型の猛禽類型モンスター。逃がす手はない!


 と、いうことで彼らを追ってみることにした。



 ○



 「ふぅ、上を見ながら走るのって危険なんだな…。」


 数十分後。僕はようやく、シーフカイトの巣らしき場所を突き止めた。道中、彼らの姿を見失わないように空を見上げながら走ったのだが、普通に何度か転倒した。小学生の頃、蝶を追いかけて夢中で走り回り、何度も転んだのを鮮明に思い出した…。


 「あの木の上の方に営巣してるみたいだな。」


 地下鉄湖(仮称)から流れ出た川沿い、針葉樹っぽい高い木が密集しているエリアに、僕が追っていた二羽のシーフカイトは降り立った。どうやら、二羽は番いだったようだ。


 「うーん、このあたりに降りたはずなんだけど。」


 ちょっとした針葉樹林を歩きながら、巣らしきものを探す。超音波スキルの存在を完全に忘れていたため、使用してみようと思ったその瞬間。


 『ピヒャロロロッ!』


 「うわぁっ!?」


 突如後方からシーフカイトが現れ、すぐ頭上をすり抜けていった。そのままシーフカイトは目の前の枝に留まって、こちらを見下ろしていた。


 「びっくりしたなぁ、もう。あれ? なんか君…。」


 そのシーフカイトは、頭のてっぺんがふわふわしていた。ぽわ毛が微風でぱやぱやと揺れている。


 「もしかして、幼鳥?」


 そう、どうやら幼鳥らしかった。そういえばスティールも使っていなかったし、まだ巣立つ前、もしくは巣立った直後なのかもしれない。


 『『『ピヒャロロロロロロロ!』』』


 幼鳥シーフカイト君と見つめ合っていると、複数の鳴き声が聞こえてきた。目の前の同じ枝に、ぽわ毛のシーフカイトが追加で二羽。少し離れた枝に、凜々しい顔つきの成鳥が二羽、降り立った。


 「わぁ、家族か!」


 どうやらこの五羽は、家族みたいだ。


 『ニンゲンサン! ニンゲンサン!』


 『『アソンデ! アソンデ!』』


 どうやら幼鳥三兄弟は遊んで欲しいらしい。親鳥二羽は、じーっと見ているだけだ。あ、もしかして。


 「この子達に、遊びながらスティールの練習をさせたいのかな?」


 親鳥二羽に聞いてみると、二羽は揃って首をブンブンと前後に振った。


 「よーし、それなら競争だ! 僕がこの林の中を逃げ回るから、最初にこの石をスティールで盗めた子が勝ち! よーい、スタート!」


 僕は両腕を不定型にして伸ばし、木々の間をぶらんぶらんとぶら下がりながら逃げ始めた。


 『『『ピヒャーッ!』』』


 三羽のシーフカイト兄弟達が、楽しげに鳴いた。



 ○



 「さ、さすがに疲れた…。」


 競争を終えて、僕はシーフカイト一家の巨大な巣の中で休憩させてもらっていた。木や衣類らしきもので編み込むようにして作られた、巨大な鳥の巣だ。


 30分ほど続いた鬼ごっこは、長男君の勝利に終わった。最初はスティールがうまく発動しなかったが、終盤は発動できるようになり、最後はランダムで盗まれまくってパンツ一丁で逃げ回る形になっていた。最後の最後で石ではなく、パンツを盗まれていたら、非常にまずいことになっていた…。


 「まぁ、パンイチでターザンごっこしてる絵面も相当やばいけど…。」


 三兄弟のぽわ毛頭を撫でさせて貰ったりしていると、シーフカイト両親が巣の一角を嘴で指した。そこにはこれまで盗まれた様々な物がため込まれていた。ポーションや短剣、財布に防具まで。


 「こ、これをくれるの!?」


 『オレイ。ツカエナイ、アゲル。』


 「あ、ありがとう!!」


 とんでもない額の臨時収入だ! シーフカイトはスティールで盗んだ物資で営巣したり、それが食べ物であれば食料として消費する。


 頭が良いモンスターなので、使い道が無い物は貯蔵しておき、何か問題が起きたときにそれらを漁って、解決策を模索するのだ。


 そんな貯蔵物をお礼として分けてくれるらしい。僕はホクホク顔で、使えそうな物を片っ端からアイテムボックスに収納して行った。


 『スキル獲得:シーフカイト』



 ―――――

 スキル:シーフカイト

 ①スティール 

 3m以内に存在する対象から、持ち物を一つランダムで奪う。アイテムボックス内の物は奪えない。魔力を消費して発動する。

作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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