第21話 配信!【ゴブリン上位種の喧嘩観戦】
『わふわふっ!』
「うわっぷ!?」
突如、顔中がもふもふの毛で覆われた。もふげが僕の顔に顎を乗せていた。
「う~ん、おはよう、もふげ。もふげは今日ももっふもふだなぁ。」
『ヘッ、ヘッ!』
新宿ダンジョンでの事前調査から二日が経過し、僕は家でのんびりとしていた。影の件から若干夢見が悪いが、特に変わったことは無い。しっかり休息できたので、今日からいよいよ、泊まりがけ配信だ。
「もふげにはまた、寂しい思いをさせちゃうね。よーし、今日は朝からお散歩しようか!」
『あおーんっ!』
○
「あら、デカ猫ちゃん。今日は朝からお散歩させてもらって良かったわね~!」
「おう、タヌキチ! 今日は一段とふっさふさだなぁ!」
「ママ見て! おっきくてふわふわなヒヨコさんがいる!」
「何言ってるの、おっきいもこもこの羊さんでしょ!」
もふげの散歩中。なぜかみんな、もふげのことを違う名前で呼ぶんだよね…。でも、どこからどう見てもでっかいもふもふの犬だ。もふもふしすぎて、なんの動物かちょっと判別つかない感じはするけど。
いつもの散歩コースを一時間ほどかけて周り、思い出の洞窟がある公園を軽く走って帰宅した。
今日、明日と家を留守にするが、もふげは自分で水道から水を飲んだり、冷蔵庫の中に作り置きしてあるご飯を取り出して食べたりできるので、問題無い。犬ってすごい賢いよね。
「行ってきまーす!」
『わふわふっ!』
ひとしきりもふげの頭をなで回してから、僕は駅へと向かった。
○
【配信開始】
「こんごろ~、モンスター解説系配信者のモンゴローです。今日はここ、新宿ダンジョン第一層から配信しておりま~す!」
:こんごろー
:こんごろ
:あれ? 立川Dは?
:新宿D!? 中規模Dやんけ
「立川ダンジョンのモンスターはすべて解説し終わりましたし、ボスの幻影剣士も倒したので、今日からは新宿ダンジョン編になります!」
:ちょっと待てぃ!
:モンゴローお前、探索者デビューしてから一ヶ月経って無くない?
:wow wow
:デビュー一ヶ月で小規模Dクリアってマ?
「経ってないですね、いやぁ~幻影剣士はめちゃくちゃかっこよかったです。かっこよすぎて、最初変な挨拶しちゃいましたよ。良い夜ですね~って。そしたら突然斬りかかられて、戦うことになっちゃいました。」
:草
:気さくな挨拶
:そこは「こんごろー」で行けよ
:幻影剣士君、困惑してそう
:そんな調子でよう勝てたな
ビュォオオオオオオオオ
「ちょっと移動しながら話しますね。幻影剣士って、何か暗い過去があると思うんですよね。戦ってて思ったんですけど、なんというか、死にきれず、成仏もできない、戦場跡で永遠の後悔に苛まれながら、自らの死を渇望してる、みたいな。そんな感じだと思うんです。分かります? 特に幻影剣士と戦ったことある視聴者の方とか。」
:A.わかりません。
:戦ったことあるけど、感じたこと無い
:ちょっと何を言ってるかわからない
:草
:探索者ニキたちも困惑で草
:ギルドHPに掲載されてる幻影剣士の情報に、そんな感じの情報一切無くて草
「えぇ~? そうかぁ~、何かこう、ドラマの匂いを感じたんだけどなぁ。あ、最後は一刀両断して勝ちました! さて、今日の一発目はゴブリンメイジ! 先日知り合ったゴブリンメイジ君がいるので、彼に会いに行こうと思います。」
:待てって
:俺たちを置いていくな
:幻影剣士を一刀両断? 普通にえぐくね?
:現役探索者ですが、幻影剣士は基本チクチク本体部分にダメージ与えて戦うのがセオリーです()
:セオリー全無視で横転
:先日知り合ったゴブリンメイジ←?
:ツッコミが渋滞してる
「あっ! すみません、目当てのメイジ君いたので急停止します!」
ズガガガガガガガッ
「ふぅ、危ない危ない。うーん、なんかゴブリン同士で喧嘩してるっぽいな。ちょっと隠れて観察してみましょうか!」
:すごい音
:アスファルト粉々で草
:えぇ…
:どんなスピードで走ってたんや…
:飛行機が着陸したときみたいな音してたぞ
「この茂みからこっそり観察しましょう、あー、ゴブソル君とメイジ君で何やら言い争ってますね。彼、ゴブリンにしては珍しく、ゴブソル君と共同で群れを率いてるみたいなんですが、すぐ喧嘩するんですよ。この前も喧嘩して、廃ビルの一部屋を火魔法で破壊してましたし。」
:草
:ギャグ漫画かな?
:その火魔法がこっちに向けて放たれたら笑えないんだが
:周りのゴブリンたち、おろおろしててかわいそう
『グギャグギャッ!』
『ギギィイイイイイイッ』
「あーこれキレちゃったな、喧嘩始まるわこれ。ゴブリン上位種同士の喧嘩って、けっこう貴重映像じゃないですか? あ、ほらやってるやってる。けっこうガチで殺しに行ってない…?」
:あーあ
:ゴブソル、思ったより凶悪やな
:メイジもよく躱すな、後衛だから動けないもんだと思ったわ
ボフンッ!
「出ましたね、火魔法。こう見るとけっこう火力あるなぁ。でもゴブソル君はうまいこと立ち回って、直撃を免れてますね。あーあー、周囲のゴブリン君たちが吹っ飛ばされてますね…。」
:かわいそう
:もうめちゃくちゃ
:割と迫力あるな
:モンスター同士でも、こんな喧嘩するんだなぁ
『ガギャギャァアアアアッ!』
ボウッ
「うわっ! あぶねっ!?」
バシュウッ!
「びっくりしたぁ~、急にこっちに魔法が飛んでくるなんて思いませんでしたよ。よかった~、咄嗟にはたき落とすことが出来て。心臓に悪いなぁ、もう。」
:は?
:は?
:え?
:素手?
:素手で火魔法はたき落とさなかった?
「ちょっと危ないので、離れましょうか。また火魔法が飛んできて、ドローンにでも当たって壊れちゃったら最悪ですからね。んじゃ、移動しまーす!」
:命より大事なドローン
:なんなのこの人
:魔法を素手ではたき落とすなんて、攻略勢でも出来ないんじゃ…
視聴者:243人
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




