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【第一章完結】モンスター系ダンジョン配信者  作者: おしり炒飯


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第20話 彷徨う影

皆さんは、怖い話や都市伝説などが、好きだろうか。


 と、言うのも、次の目的のモンスターは、動物や昆虫、両生類は虫類といったような感じでは無く、幻影剣士のようなかっちょいいアンデッドでもない。


 どちらかと言うと、「ガチのやつやん」って感じのモンスターが、ターゲットだからだ。僕自身、オカルトや都市伝説の類いもイケるクチだし、小学校低学年の頃は妖怪を探して歩き回っていたくらいなので、むしろウェルカムだ。


 「この辺で目撃情報があったはず。確か、都市の中心地区、深夜帯にわらわらと湧いてくるって書いてあったんだけど…。」


 スマホで時刻を確認すると、ちょうど深夜2時前。もう出てきていてもおかしくない。


 「うーん、暗視があるとは言え暗いし、モンスター自体も“影”みたいな見た目だから、余計分からないなぁ。仕方ない、歩き回って探すか。」


 彷徨う影。それが、今回のターゲット。深夜にしか出現しない、ある意味少しレアなモンスターだ。先述のように、影のような見た目をしており、深夜まで探索をしていると、突然、目の前に現れるようにして出現するため、非常に心臓に悪い。


 「光源がドローンしかないから、なかなか見つからないなぁ。あ、そうだ。超音波で見つけられないかな。」


 超音波に魔力を乗せて、魔力感知を行う。ソナーのように広がっていく。すると、前方に人の姿形をした何かの反応を掴んだ。


 近づいていく。とてもゆっくり、前に進んでいる。すぐに追いつくことが出来た。ドローンのライトが、それを照らし出す。


 「本当に、真っ黒な影だ…。」


 かつて、似たような何かを見た気がする。あれは、確か、そう。広島の原爆資料館で見た、人型の影。


 「おばあちゃん、なのかな?」


 腰の曲がったその影は、ゆっくり、ゆっくりと歩いている。不意に、その影がこちらを振り返った。すると、両手を差し出しながら、こちらに近づいてくる。


 『オ、ア、イノチ、イノチ、アタタカナ、イノチ…。』


 「い、命!? ごめんねおばあちゃん、命はあげられないんだ。」


 うーん、どうしよう。代わりになにをあげれば…。あ、そうだ!

 彷徨う影は、物理的な攻撃も、魔法による攻撃もしない。ただ、こちらに触れようとしてくるのだ。


 影に触れられた瞬間、全身に悪寒が走り、まるでむき出しの心臓を撫でられるかのように感じるという。いわゆる、精神攻撃の一種だ。SAN値が確定で2くらい減る、といったところか。


 この、触れる行為によって、何かを吸収しているのでは? 精神力、生命力? わからない。わからないが、もしかしたら、魔力を吸収しているのでは?


 「おばあちゃん、これならどうかな?」


 僕は手のひらに、魔力を滲ませて、おばあちゃん影の両手を優しく包んだ。


『ア、アァ、アタタカイ、アリガトウ、アリガトウネェ…。』

 

 そう言うと、おばあちゃん影はぺこぺこと頭を下げて、ゆっくりと去って行った。

 

 『ア、ア、モウシワケ、ゴザイマセン…。』


『ア、キャンペーン、ティッシュ、オクバリシテマス。』

 

 『アー、チコク、チコク。』


 『アー、ドウカ、キヨキ、イッピョウヲ。』


 「うわっ!? い、いつの間にこんなにたくさん…!?」


 気がつくと、周囲は彷徨う影であふれかえっていた。虚空に向かってペコペコと謝罪を繰り返す影や、まるでティッシュ配りをしているかのように、同じ動作を繰り返す影。駅の廃墟と思わしき場所に駆け込んでいく影や、瓦礫の上に立ち、何かを訴えかけている影。


 「まるで、この廃墟の街に住んでいる人たちみたいだ。」


 ただ、同じ行動や動作を繰り返し続けている。まるで、死した後も、同じ時間に閉じ込められているかのように。そして、どの影も僕が近づくと、ゆっくりとこちらに近づいてきた。


 『ア、ティッシュ、イノチ、コウカン。』

 

 「命はダメだけど、魔力ならいっぱいあるからね。」


 『アー、ソノイッピョウ、アタタカナ、イッピョウヲ、ワタシニ…。』


 「投票はしてあげられないけど、魔力はあげるね。」


 僕は魔力を滲ませた手で、周囲の影達と握手を交わしていった。そうすると、みな一様にぺこぺこと頭を下げて、どこかへ去って行く、もしくは、徐々に薄れて消えていった。


 「この影達は、何者なんだろう。アンデッドってことは、やっぱり死んじゃってるんだよね。もしかして、元々はみんな、人間だったりしたのかな…。」


 いや、あり得ない。なにせここはダンジョン。探索者が寝泊まりすることはあれど、ダンジョンの中で生活を営み続けるなんて話は聞いたことが無い。ここは、人を模した彷徨う影というモンスターが現れる。


 ただ、そういうダンジョンなのだろう。



『スキル獲得:彷徨う影』



 様々な考えや予測が、頭の中をぐるぐると回っている。背筋を、暖かな粘ついた液体がゆっくりと滑り落ちていくような、気味の悪い感覚。


 今夜は夢見が悪そうだな…。そんなことを考えながら、僕は拠点へと戻った。



 ―――――

 スキル:彷徨う影

 ①さわる

 対象に触れることで、相手の魔力、精神力を消耗させる。

 ②魔力吸収

 ③霊体化



作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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