第17話 マージクロウ
ビルの外に出ると、すでに日が傾き始めていた。
「しまったな~、ついついピコピコ軍団と戯れすぎてしまった。」
手で目を覆いながら、西日を眺めていると。黒い影が飛翔していくのを発見した。
グガァー、グガァー
「ラッキー! お目当てのマージクロウだ! ねぐら入りの時間だから、追って行けば巣が見つかるかも…!」
マージクロウは、カラスに似た鳥形のモンスターだ。日が落ちてくると、巣に帰っていく。
「初速、全開ッ!」
さっそくゲットしたスキルを使ってみると、これまでとは比べものにならない速度で走り出すことが出来た。ピコピコ君たちがいつの間にか現れたように見えたのも、このスキルのおかげだったのか。
所々ひび割れ、陥没しているとは言え、舗装されているアスファルトはとても走りやすい。スポーツカー並みの速度で、僕は滅びた都市を駆け抜けた。
○
見失わないように空を見上げながら走っていたら、何度か転びかけてしまった。身体能力の成長に、意識がついて行けていない感じがする。ランニングとかしようかなぁ。
そんなことを考えながら走ること、30分ほど。
「…東京タワー、ではないか。赤くないし、そこまで大きくもないし。」
100mほどの高さの鉄塔にたどり着いた。鉄塔の所々に、鳥の巣のような者が点在しており、下部分は様々なツタ植物に覆われている。マージクロウの巣で、間違いなさそうだ。ここだけ植物が異様に繁茂しているのは、マージクロウの糞に含まれる栄養で成長したからだろう。種が糞に混じっていた、とかもありそう。
「巣にいるってことは、繁殖期だったりするのかなぁ。そもそも、繁殖期とか存在するのかな…。一年中増えてそうだけど。」
繁殖期に刺激するのは申し訳ないし、あらかじめ許可取りしようかな。鉄塔に近づいていくと、偵察をしていたらしきマージクロウ2羽が、ゆっくりと降下してきた。手を振ると敵意が無いことが伝わったようで、バサバサと音を立てて目の前に着陸した。
『ニンゲンダナ』
『ダナ』
『ナニシニキタンダナ』
『ダナ』
「こんにちは、もしよかったら、君たちの家を見学させてもらえないかな? ご飯とかなら提供できるんだけど。」
そう言って僕は、いくつかの食べ物を取り出した。肉や野菜、チョコレートや缶詰まで。それらの前を、てちてちと歩きながらくちばしでツンツンしたりするマージクロウたち。彼らが選んだのは。
『コレ、ナンナンダナ!』
『ダナ!』
まさかの缶詰。どういうものなのか、興味があるみたいだ。マージクロウは鳥形のモンスターの中でも、特に知能が高い部類。さっきだって、巣の周囲の見回りをする部隊をわざわざ編成していたんだし。そんなモンスターだからか、未知のものに興味を示したのかもしれない。
「これ? これはね、缶詰って言うんだよ。」
目の前で開けてやる。タブがあるタイプなので、缶切りが無くても開けられる。
「こんな感じで開けると、中に食べ物が入ってるんだ。これは、スパムポークだね。お肉だよ、お肉。」
クロウ君たちを見ると、羽を広げて固まっていた。そして。
グァーッ! グァーッ!
『オモシロインダナ! オモシロインダナ!』
『ダナ! ダナ!』
目をキラキラさせながら、僕の頭上をくるくると飛び回り始めた。やっぱりすごく賢いんだなぁ、パズルみたいで面白いって感じてるのかも。中から食べ物が出てくるっていうのも、ポイントなのかもしれない。
缶詰をいくつか渡してみると、二羽がかりで格闘しはじめた。なんだなんだ、と言ったような感じで、周囲には次々にマージクロウたちが集まってくる。気づいたら僕の頭とか肩にも留まってるし。
グァーッ! グァーッ!
「頑張れ! 頑張れ!」
一羽が脚で押さえ、もう一羽が嘴でプルタブを起こす。周囲のクロウたちが、鳴き声を上げて応援する。僕も一緒になって、応援した。そしてついに。
『アイタンダナ! アイタンダナ!』
『『『ダナ! ダナ!』』』
グァーッ! グァーッ!
「グァーッ! グァーッ! …はっ!?」
しまった、マージクロウに囲まれていたせいで、いつの間にか僕もガーガー言ってしまっていた…。
その後はお祭り騒ぎのようになった。マージクロウは風魔法を使うことができる。風を起こして、周囲の落ち葉や彼らの羽を踊らせたり、小さな竜巻を起こして、その中でぐるぐると回ったり。彼らは遊ぶことが大好きみたいだ。
いろんな種類の缶詰をあげると、クロウたちそれぞれが巣に持ち帰った。僕自身も、お礼として巣に案内されたので、ジャンプで鉄塔を登っていく。僕ってこんなに高く跳べたんだね。普通に一回のジャンプで20mくらい跳べることが判明した。
「わぁ、すごい光景。綺麗だ。」
滅びた都市。人がいなくなったビルの群れに、真っ赤な夕日が沈んでいく。人がいなくなっても、世界は変わらずそこに横たわっていて。様々な生き物の命は輝き続けていて。
マージクロウたちと夕日を眺めながら、僕は缶詰のスパムポークを口に運んだ。
『スキル獲得:マージクロウ』
――――――
スキル:マージクロウ
①風魔法
②連携
同族間での連携に補正がかかる。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




