第16話 ダンジョンの『G』
「うわ、本当に火が出た…!」
メイジ君と別れた僕は、特にビル群が密集しているエリアを散策していた。せっかくなので、歩きながら魔法の検証を行おうと思い、試しに指先から火を出してみた。ライターのような火が、指先で頼りなさげに揺れている。
「配信者の人とかはかっこいい詠唱とかしてるけど、パッと良いのが思い浮かばないなぁ。」
ふと顔をあげると、良い感じの枯れ木が目に入った。元々は街路樹だったであろうそれに、火を放ってみることにした。
この距離だったら、火炎放射器のイメージがよさそうだな。手のひらから火炎放射するイメージで、火魔法を発動すると。
ゴォオオオオオオオオオッ!
「お、おお! すごい!」
まさに火炎放射。熱さは感じない。街路樹は一瞬で炭化してしまった。
「イメージさえ出来れば、詠唱はいらなさそうだね。まぁ、戦闘中はわざわざイメージするのが難しいから、詠唱することで反射的に使えるようにしてる、ってことなんだろうけど。」
やっぱり、詠唱でイメージ付けしたほうがいいのかなぁ。周囲に誰もいないことを確認。
「モ、モンゴローファイヤーッ!」
ボボボッボフッボォオオオオッ!
「威力落ちてるじゃん!!」
羞恥心が邪魔をして、逆に威力が落ちてしまった…。モンゴローファイヤーなんて、絶対視聴者にバカにされるし。うん、僕は無詠唱でいいや。技名とか考えるの面倒だし。
その後幻影魔法も検証したところ、幻影剣士が使っていたように、体をブレさせたり、何重にも重なって見せたり、分身みたいなこともできたりした。
「ふん、残像だ…。」
いつか戦闘中に言ってみたいよね、これ。反復横跳びしたりしてしばらく遊んでいると、ふとそれが目に入った。
「ん? これは…。抜け殻?」
廃墟の隅っこに、昆虫型モンスターのものと思われる抜け殻を発見。大きさは40cmほどで、平べったく、脚がトゲトゲしている。
「もしかしなくても、ジャイアントローチか!」
ジャイアントローチ。そう、巨大なゴキブリのことである!
「うわぁー絶対見たい、このあたりにいるっぽいな…。あ、そうだ!」
僕はアイテムボックスからタマネギを取り出した。タマネギの刺激臭は、ゴキブリを強く誘引する。ジャイアントローチ君も、例に漏れず好きなんじゃないかな?
「よーし、これをこの変に放置すれば出てきてくれるはず! って、え?」
ピコピコッ
僕の目の前に、三匹のジャイアントローチが待機していた。
触覚がピコピコとせわしなく動いている。
「は、早すぎない? どこから現れたの、君たち…。」
『スゴニオイ、スゴニオイ』
ピコピコがどんどん早くなっている。まずい、この子たち、我慢が出来ないのかも。
「あ、あげるから! あげるからちょっと待って!」
僕はアイテムボックスから、追加で二個タマネギを取り出した。
「ほ、ほら全員分あるから、って、え?」
ピコピコが、五匹に増えていた。
「ど、どうして…!」
結局、僕はアイテムボックス内のタマネギすべてを提供することになってしまった。どんどん数が増えて、最終的には20匹くらいになっており、タマネギを切って分配することになってしまった。
『ウマ、ウマ』
『スゴニオイ、スゴニオイ』
廃ビルの1階が、巨大ゴキブリの養殖場みたいになってしまった。一匹一匹が1m近い大きさなので、虫が嫌いな人が見たら卒倒しそうな光景だ。何匹か子供のピコピコが混じっており、彼らはダンゴムシみたいな見た目をしていた。
体表は油膜のようなものでテラテラとしており、体は平べったい。しかし、羽はあまり大きくなく。おしりが羽から飛び出している。飛べはするだろうが、あまり得意ではなさそうだ。
『ヨイショ、ヨイショ』
「ん?」
一匹だけゆっくりとこの部屋に入ってきた。動きが鈍く、心なしかしんどそうだ。
よく見てみると、何かを引きずって歩いている。
「もしかして、卵鞘!?」
近づいてみると、大きなカプセル型の卵鞘を引きずっている。この卵鞘には、たくさんの卵が格納されているのだ。
「重そうだし、取ってあげるね。」
ポコッ、とそれを取り外してみると、中身がぎっしり詰まっているようで、かなりの重量だ。
『アザス、アザス』
「タマネギはなくなっちゃったから、代わりにこれあげるね。」
お母さんピコピコにはキャベツを一玉あげた。
『ヤルヤン、ヤルヤン』
「なんかふてぶてしいな、君は。」
キャベツをもしゃもしゃと食べる姿を観察する。卵鞘は配信でも使えそうだし、隠しておくか。ぼろ布にくるんで、物陰に隠しておいた。
『スキル獲得:ジャイアントローチ』
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スキル:ジャイアントローチ
①初速全開
一歩目から最高速度で走り出せる。
②感覚鋭敏
③病毒耐性
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




