第14話 東京都探索者ギルド本部
〈ダンジョン速報〉
昨日未明、立川Dに出現したゴブリンソルジャーの討伐が確認されました。当該モンスターは立川D第3層に集落を築いており、ゴブリン7匹を従えておりました。集落跡からは、成人男性三人のものと思われる遺体が発見されており、その場にあった探索者証から、宮原カツヤさん(18)、鳥巻シンジさん(18)、飯湿ダイさん(18)のものと思われます。
「あー、ゴブソル君、討伐されちゃったか。」
電車に揺られながらスマホをいじっていると、ゴブソル君が討伐されたというニュースが目に入った。また、愚かなニンゲン三人衆の名前も。
今となっては感謝してるよ。あいつらのおかげでスキルも手に入ったし、僕自身戦えることが分かったし。ゴブソル君は最後の晩餐を楽しんで、僕はストレス発散にもなった。こう考えるとすごいな、あいつらが死んで一石四鳥? あ、カブヨシたちの仇を討ったことも考えると、五鳥かな。
「次は、新宿、新宿。お出口は、左側です。」
もう新宿か。人の濁流に揉まれながら、僕は這い出るようにして電車を降りた。
新宿駅の西口から徒歩10分。人混みの間を縫うようにして、目的地に到着した。
「これが、東京都探索者ギルド本部…。」
そう、ここは都内のギルド支部を統括する、東京都探索者ギルド本部だ。特殊な合金で建築されたこの異様な建造物は、初夏の日差しを受けてギラギラと輝いて見える。
探索者ギルドはダンジョンごとに支部があり、それらの支部を統括する統括本部が各県に存在する。そして、各県の本部をさらに統括する、日本探索者ギルド総本部が、富士山の麓に存在しているのだ。
この東京都探索者ギルド本部。他のギルド支部同様、内部にはダンジョンの入り口が存在する。その名も、新宿ダンジョン。中規模のダンジョンで、全十階層。未だ攻略者は現れていない、中規模の中でも難易度が高いことで有名なダンジョンだ。
「うわー、立川と雰囲気が全然違うなぁ。」
床は一面大理石。広大なロビーには多くの人々がいる。半分がスーツ姿のギルド職員や、ギルド関係者。もう半分が、鎧やローブを纏った探索者たちだ。
立川にはジャージ姿に武器だけ、みたいな探索者も多かったけど、本部の探索者たちはみんなフル装備だ。
どうしよ、ジャージだといかにも「初心者でござい!」って感じで、目立つよなぁ。幻影剣士の魔石とゴブソル君の情報提供料も入ったし、最低限のちゃんとした装備は買おうかな。
ちなみに、魔石は2万円、情報提供料は5万円だった。ゴブリンの村に放置されていた、大量の噛みつきイナゴの魔石や、ポーションの素材として使える数種類の薬草なんかを売却した雑費もあわせたら、10万円ちょい。
そんなことを考えながら、この広大な本部内を散策していく。10階建てのギルド本部は、4階より上は職員のエリアになっているため、訪れることはなさそうだ。
地下1階から地上3階が探索者が利用するメインエリア。地下1階には、新宿ダンジョンの入り口があり、地上1~3階にはレストランや装備品、ポーションを扱うショップ、更衣室、温浴施設、ジムやプールなんかが揃っている。
「ひ、広いしめちゃくちゃ楽しそう…! でも、ショップはちょっと割高だったし、スルーかな。オンラインで買った方が安く済みそう。」
でもこういうのはね、見るだけでも楽しいんですよ。特に武器や防具、魔法道具なんかが!
スキルが付与されている魔剣や聖剣なんかは、目玉が飛び出るくらいの値段で売られていましたよ、ええ。僕のアイテムバッグに保存されている父さんの剣も、魔剣だか聖剣らしいんだけど、うーん。なぜか、“鞘から抜けない”んだよねぇ。
「うわぁ、レストランからめっちゃ良い匂いする。モンスターの素材を使った料理かぁ、おいしそうだなぁ。」
そう、モンスターは種類によって食べることが出来る。僕は噛みつきイナゴしか食べたこと無いけど…。一部はスーパーなんかでも普通に売ってるけど、豚肉や牛肉の5倍以上の値段だったりするから、なかなか手が出せない。
「もっと稼げるようになったら、食べにきたいな。」
いかんいかん、ついつい寄り道で時間を浪費してしまった。僕の目的は、あくまで新宿ダンジョン。スタスタと早歩きで更衣室に向かう。うわ、更衣室もおしゃれだなぁ、なんか良い匂いするし。迷彩柄のジャージは幻影剣士に切り裂かれてしまったので、今日は黒いジャージだ。さっさと着替えて、地下1階に降りると。
「うわ、大きいな。」
すぐに、視界にダンジョンゲートが目に入った。コンクリートのような質感の、巨大なゲートだ。縦に30m、横に15mはありそうだ。内部は青白い光が渦巻いており、某旅の扉のようになっている。
半個室のブースでは、何組かの探索者パーティが打ち合わせをしており、数分に一組のペースで、探索者たちがゲートを行き来している。
もっといっぱい人がいると思ったんだけど、やっぱりここはレベルが高いダンジョンらしい。ネットの情報によると、最低でも適応回数が20以上の人推奨、ってことだったけど、僕ってどれくらいのレベルなんだろうか?
「ま、いっか! ごーごー!」
これ以上は我慢できない! 逸る気持ちに身を任せ、僕はゲートを潜った。
○
ウソだ、ウソだ。
そのニュースを目にしたときの、衝撃。私は耐えられずに、仕事を放棄して帰宅した。指名? そんなの知らない。
「カツヤ…。」
カツヤが死んだ。それも、ゴブリンに殺されて。
いや、おかしい。カツヤは本当に、ゴブリンなんかに殺されたの…?
ふと、思い出したのは、モンゴローの配信。急いでアーカイブを確認する。
「あぁ、やっぱり、やっぱりぃいいい!」
モンゴローが、クソゴローが、ゴブリンと会話しているではないか!
「あいつが、殺したんだ…。あいつが、あの野郎がぁああああ!!」
身を焦がすような怒りがわき上がる。許せない、許せない、ユルセナイ。
「カツヤが何をしたって言うの!? “ちょっといじめただけ”で、殺すなんて…。ありえないんですけど!」
リオに、罪の意識などない。むしろ、遊んでやっていた、くらいの感覚だった。陰キャのキモオタクが、私たちみたいな存在に構ってもらえて、光栄でしょ?
「…殺す。」
殺意が、芽生えた。
「殺す。」
身勝手で、どこまでも醜い、ニンゲンの殺意が。
「殺してやるぅううううう!!!」
涙で黒く滲んだアイシャドウ。
赤く充血した目だけが、らんらんと光を放っていた。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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