第13話 回り出す歯車
【ダンジョン配信者について語るスレ パート560】
231:やべえ新人配信者いて草(http://dtube/mongoro/...)
232:なんやこいつ
233:誰
234:スライムに指突っ込んでみた、で草
235:初心者…初心者?
236:ファッ!? 再生持ちかよ
237:モンスターの生態解説してるんか、おもろそうやな
238:動きが明らかにベテランのそれなんですが
239:この若さでこの動き? すごくね?
240:普通にモンスターと会話してるの、なんなの
241:モンスター側の手先だろコイツ
242:お、モンゴローやんけ。ついにスレでも話題が出るようになったか
243:こいつ、ナチュラルにゴブリンと会話したり、モンスター食ったりするからおもろいぞ。今までの配信者にいなかったタイプ。
244:そんなスキル、存在してたっけ?
245:まさかの新種スキル?
246:テイマーとかじゃないの?
247:テイマースキルもモンスターと意思を通わせられるが、その辺にいるようなモンスターとこのレベルで会話はできないぞ。
248:ゴブリンテイムしたやつなんて聞いたことないし
249:このゴブソル、吉祥寺Dと新宿Dで討伐依頼出てたな
250:マ? 報奨金は?
251:10万とかだったはず
252:ゴブソルにしては高いな、受けようかな
253:このモンゴローとか言うヤツ、絶対強いだろ。走る速度とか、ベテラン探索者レベルだぞ。
254:本人曰く、戦いは無理、らしい
255:ピーキーなスキル構成なんかな?
256:そうなんじゃね、知らんけど
257:こいつ見覚えあると思ったら、立川Dでニヤニヤしながらエッジラビットのうんこ観察してた変態やんけ
258:草
259:草
260:配信外でもその調子なのかよ
261:次の配信から見てみるわ
262:オレモー
○
「彼、面白いですよね~。」
「ギルドとしては、あんまり危険なことして欲しくないですけどね…。ゴブソルの出現報告したのも、このモンゴロー君なんですよね?」
探索者ギルド立川支部。職員たちが昼休みに、モンゴローの配信アーカイブを視聴していた。ギルド職員は公務員扱いのため、就職業界においては人気の部類なのである。
「そうそう。なんか、すごい嬉しそうに報告してきたから面食らったけど。ってかこの子、昨日幻影剣士の魔石を買取依頼してきたよ。」
「え、マジですか? 彼、探索者登録してから一月も経ってないですよね?」
「あ、その子私が登録手続きしたので覚えてます。すごいキラキラした顔してたから、初々しくてかわいかったです。」
そんな話をしていると、特別会議室の扉が開き、スーツを着た男たちがぞろぞろと出てきた。
「岩崎さん、こちらが立川支部の居室です。今は昼休憩中ですので、みんな自由に過ごしてもらってます。」
テカテカの額をハンカチで拭きながら、立川支部長の男が岩崎と呼ばれた壮年の男を案内する。白髪交じりの髪をオールバックに固め、背筋がピン、と伸びている。一見、厳しそうに見えるが、その目には優しい光が点っていた。
「立川支部は雰囲気がやわらかくて、いいですね。職員同士の仲も、良好なようだ。本部はこう、みんなギラギラしていて、気疲れしてしまうから。」
「ははは、確かに。でもそこがいいんじゃないですか、上を目指すぞ、っていう気概に溢れていて。」
「まぁね~。うん? なんだ、面白そうなものを見ているじゃないか。」
「お、お疲れ様です、岩崎本部長! 彼はうちの支部で活動している、新人探索者でして。」
岩崎がモンゴローの配信を見始めた。
『グギィ、ガギョギョ』
「なるほど、受け継がれてきた棍棒、ですか。先祖代々、受け継いでいるみたいです。」
配信内では、茶色がかった天然パーマの青年が、楽しそうにゴブリンと並んでいた。
「彼、モンスターと会話しているように見えるが?」
「え、えぇ。本当に会話しているかは不明なのですが、そういうスキルを持っているようでして。」
(そんなスキル、聞いたことがない。それに、テイム可能な動物型のモンスターではなく、あの悪辣なゴブリンと会話? あり得ない。)
「彼の名前は?」
「モンゴロー、という名前で活動している探索者です。」
「モンゴロー君、か。」
(新種のスキル、か? それに、彼の纏うローブマント。どこかで、見た覚えがあるような…。)
「ありがとう、立川支部の諸君。休憩中に悪かったね。」
岩崎はその場を後にする。ギルドを出てタクシーに乗り込むと、すぐさま電話をかけた。
「もしもし、私だ。至急、調べて欲しい探索者がいる。」
○
おかしい。いつもなら一時間もせず返ってくるはずの連絡が、返ってこない。電話も通じず、メッセージ履歴には鬼電のあとが残っている。
霧崎リオは、これまで感じたことのない、得体の知れない不安を感じていた。
「カスミちゃ~ん、指名入ったよー!」
「あ、はーい♡」
まさか、クソゴローにやられた? いや、そんなはずない。カツヤが、負けるはずない。あんな変態痴漢野郎なんかに。
「ぎゃははははは!」
酔った成金たちの笑い声が聞こえる。
ここは歌舞伎町。夜の街。
鏡で手早く身だしなみを確認する。大丈夫、大丈夫。カツヤならきっと、大丈夫。
自分に言い聞かせるように何度も頷いて、ギラギラとした夜の世界へと身を投げた。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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