第12話 ボス:幻影剣士
「おい、ゴブリンソルジャーだってよ。」
「俺たちで倒せると思う?」
「ゴブリン数匹であっぷあっぷしてるんだから、厳しいだろ。」
「だよなぁ、ソルジャーが討伐されるまで、別のダンジョン行くかぁ。」
ギルド立川支部に来ると、僕が報告したゴブリンソルジャーについて注意喚起が発令されたようで、ざわざわとした喧噪が広がっていた。
「近々、中級ダンジョンがある支部に討伐依頼が出されるってさ。」
へぇ~、そうなんだ。あのゴブソル君も、倒されちゃうんだろうなぁ。この世は弱肉強食、致し方ない。せめて、最後の晩餐として、カツヤたちの肉を堪能してもらいたい。
さて、今日僕が立川ダンジョンにやってきたのは、ボスに挑むためだ。カツヤたちを相手にして、最低限戦えることも判明したので、最悪戦いになっても問題無いと判断した。
立川ダンジョンのボスモンスターは、「幻影剣士」。幻影を操る、アンデッドの幽霊剣士だ。図鑑、映像でしか見たことないが、見た目はかなりかっこいい。友達になれたらいいなぁ、ダメかなぁ。
ゲートをくぐり、草原を疾走する。ドローン君がいないため、全力疾走だ。冷静に考えると、鋼鉄の盾を真っ二つにできる脚力って、結構すごいのでは?
30分もかからずに、第四層にそびえ立つゲートに到着した。これまでのゲートとは違い、赤い。多くのダンジョンで、ボス前のゲートは色が赤くなっているらしい。
「ふぅ、緊張する。一応、体ほぐしておこうかな。」
ダンジョンに入る前に軽くストレッチは済ませてあるが、念のためここでもストレッチ。
「さて、行くか。」
覚悟を決めて、ボスゲートを潜った。
○
「あれ、夜? それにここは…。」
ゲートを抜けると、そこは草原だった。しかし、四層までと異なる点が二つ。
一つは時間帯。このエリアは、夜固定らしい。そしてもう一つ。周囲に、石造りの建物の残骸が散見されることだ。
「うーん、城、いや、砦跡かな…。」
ゆっくりと、ひときわ大きな残骸へ歩みを進めていく。
まぶしいほどの月光が、その残骸を照らし出している。
一陣の風が吹いた。思わず目を覆う。
目を開けると、それはいた。
血のように赤いマントがはためいている。腰には、鈍い光を反射する、ロングソード。
本体は人型の闇。しかし、頭があるはずの場所には、何もない。
幻影剣士。それがゆっくりと、こちらを向いた。
僕は、それを見て。
「か、かっこいいいいいいーーーーーーーーーっっ!!!」
大興奮してしまった!
いや、かっこよすぎる! あかん、あかんですよこいつは! 月光を背に立つその姿、あまりにも絵になりすぎる!
「こ、こんばんは~! い、いい夜ですね~!」
いかん、テンションが上がりすぎて、変な挨拶をしてしまった。ど、どうしよう。とりあえずゆっくり近づいて、それからいつもみたいに――。
『…くれ。』
「えっ?」
声が聞こえた。
『…してくれ。』
ひどく悲しげな、男の声が。
『私を、殺してくれッ!』
ざわり。鳥肌が立った。
鈍く光る刃が、迫り来る。
「ッ!?」
ガィイイイインッ!
幻影剣士の剣と、僕の刃化した右腕が交差する。
あ、危ないところだった! なんとか反応して、受け止めることが出来た!
「ま、待ってくださいっ! ぼ、僕は戦いに来たつもりじゃっ」
『ぉぉぉおおおおおおおおおおおッ!』
幻影剣士の剣は、ひどくゆっくりとしたものに見えた。しかし、一撃が重い。真正面から受けるのは、得策ではない。
「話を聞いてくれませんかっ!」
幻影剣士の攻撃を躱していく。ブォン、ブォン、と、風を斬る音が鼓膜を揺らす。
言葉は通じない。徐々に剣速が上がっていく。
ザンッ!
「えっ。」
胸に、熱を感じた。迷彩柄のジャージが斬り裂かれ、血が流れている。
斬られたっ!? 馬鹿な、確かに躱したはず!
幻影剣士を、改めて注視する。剣が、揺らいでいる。刀身がぶれ、二本、三本に見える。
そうか、これが。
「幻影、魔法…!」
幻影剣士は、幻影魔法を用いる。その攻撃は非常に厄介で、油断すれば一撃で致命傷を与えられてしまう。
幻影剣士の体が二重、三重にぶれて見える。どうやら本気で、殺しに来るようだ。
言葉は、通じない。
「再生。」
僕は胸の傷を再生させ。
「――お相手します。」
両腕を、刃に変えた。
「ハァッ!」
ドゴン、と音を立てて大きく踏み込んだ。僕の方が圧倒的に早いが、経験は浅い。
直線的な動きを読まれ、幻影剣士は半身でこれを受け流す。返す刃で斬りかかるが、マントを浅く斬り裂いただけに終わった。しかも、斬り裂かれたマントは即座に再生したように見えた。
「これならどうだッ!」
両腕を不定形に変化させ、鞭のようにしならせ連撃を放つ。
ガインガイン、と武器がぶつかり合う音が響く。幻影剣士は必死に連撃を捌こうとするが捌ききれず、本体の闇に切り傷が増えていく。傷からは魔力だろうか、黒いモヤのようなものがじわり、じわりと漏れ出している。
そうか、本体部分にしかダメージ判定がないのか!
「ダメ押しだぁあああああっっ!」
全身に黒いまだら模様が現れ、攻撃力が上昇する。凶悪な連撃は、音速を超えた。そして。
ズパァアアンッ!
幻影剣士を、真っ二つに斬り裂いた。
『オ、おぉ…。』
幻影剣士が、ゆっくりと闇夜に溶けていく。
『…ありがとう、戦友よ。』
安らかな声でそう言い残すと、幻影剣士は魔石を残して消えていった。
『スキル獲得:幻影剣士』
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スキル:幻影剣士
①幻影魔法
②剣術
③霊体化
数秒の間霊体となり、物理攻撃を無効化する。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




